第50話 へびの目にも涙

「おい、そのあたまで突き飛ばすなや!」

 俺がそう言うと、へびあたまは、こっちを石化しそうな顔で睨み付けてきた。

「だめだってば! それは言っちゃだめ!」


「なに言ってんだ。お前だってあそこに心当たりがあるって言ったじゃないか!」


「まだそおだと決まったわけじゃないじゃない……もしそんなことをサーイさんに言ったら、サーイさん、どお思うか、考えたことある!?」


「つまり、アレか……? 夢を壊すなってことか?」


「夢? どおゆうこと?」


「……女神に選ばれし者……魔物を倒す英雄……誇り高き女戦士、しばらくはそう思わせときたい、ってことか?」


「何いってんよ……こっちがへびあたまなら、あんたはやっぱ、ばかあたまじゃないの? ……サーイさんが、そんな絵空事を一瞬でも考えるとでも?」


「あんじゃね? あんなに祭り上げられちゃよ! 見てねぇだろが。ルカンドマルアでのあの熱狂ぶりときたら……」


「いいかげんにしいよ! ……あんたは、サーイさんがどんだけ辛かったか……今でもどんだけ辛い思いしてるか、なーもわかってないよ!」

 へびあたまの目には涙が浮かんでいた。

「あんたこそ見てないでしょ……サーイがマージさん……おじいちゃんを、どれだけ慕っていたのか……こんなどこともつかない世界に来た自分を、家族のよおに……家族以じょおに愛してくれた、おじいちゃんを……サーイさんは、奪われたんよ! ……そのために、地球に帰ることなんか忘れて、できることは何だってしよおって……それでガイトゾルフになってまで、おじいちゃんを探しているってのに」


「なんだよ、じゃあ今作ってるリークデバイスは無駄だってことか?」


「なんでそおゆう結論になるんよ! あんたののおみそは魔物以下だよ!」


「んだとぉ? じゃあいいや、俺は結局役立たずの、ばかあたまの、デクノボーだったことで。俺がこんな魔物だらけのところにいるのが間違いだったんだ」


「いい! あたしが出てくから! あんたはここにいて、ずっと機械いじりしてりゃいーじゃん!」


 そう言い残して、メディは外へ駆け出して行った。

 このまもラボの建物は、誰かが出入りするときだけ水上に出て、終わるとまた水没する仕組みになっている。

 ……なんでこんな状況のときにこの説明が? そうでもしないと平静を保てないくらいだったのかもしれん。

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