第40話 歓迎しないMagic Loader

 いーーーーーーっやっはーーーー!


 ついほーだ、ついほーだ、たーのしーなー♪


 あの牢獄のような(牢獄にもいたし)ルカンドマルアを抜け出して、再び家出ライフだぜ、最高ーー!


 と張り切って飛び出したら、早速青い影が舞い降りてきた。


「ose- yo! 」


 トゴリーティスにそう書かれていた。ああ、わが盟友バウザス、ほんとに待っていたんだな、ごめんよー!

 ああ、このウロコの感触、懐かしー、さあ、行くぞバウザス!



 ……ってどこへ?


 そうだった、俺はマジック・ローダーの面々から見捨てられて、もう行くところなんかないんだった。


 うーん、そろそろあいつら、頭冷えてないかなー


 そう思って、「第6章 歓迎するMagic Loader」と同じルートで向かった先は、アシジーモのいるエギトゥヤム。

 町の入り口までくると、あ、いたいた、子供たちが。おーい、君らの大好きなドラゴンがまた来……あれ、あれ?

 みんな蜘蛛の子散らすように逃げていって、家に閉じこもってしまう始末だ。


 静まり返った町に、一人の男が現れた。

「……何しに来た」

「おお、わが友アシジーモよ、この前は悪かっ……」

「協力できないと言っただろう、帰れ!」


 うわぁ、けんもほろろとはこういう事なのか、というお手本のような待遇を受けた。俺はがっくりしてエギトゥヤムを出て、もと来たほうに向かった。



 その時、向こうの浮島から虹みたいなのを発射しながら、ぴょーんぴょーんと跳ねてくる奴がいた。俺を追放してくれ……しやがったあの女。


「あら、すごい楽しそうに出てったって聞いたけど、何そんなにうなだれてんのよ」

「ああ、俺の行くとこなんてないんだ……」

 そういったら、こっちをキッと睨んで、

「あなたの弱音なんか聞きたくないの! 私がなんであなたを釈放したかわかってんの!?」

「しゃくほーじゃくてついほー……」

「屁理屈はいいから! あなたはあなたで、おじいちゃんを探さなきゃいけないのに、何捕まってんのよ! そんなことしてたら時間の無駄だから、裁判でもそう言ってやったわよ!」

「俺は俺で、っていわれてもなー」

「魔物たちよ!」

 まもの?

「私、見たのよ、あなたがあの変てこな塔から飛び出て来たの。そこにメディもいたでしょ!?」

 ニレーゼの塔な。

「あー、見てたんか、わりぃー全然気づかなかった」

「気づいてくれなくてけっこう。とにかく、メディたちなら何か知ってそうじゃない。私は……もうだめなのよ、誓っちゃったから」

「誓ったって、何をだ」

「……ここはまずいわ」

 そう言うと、サーイは急に辺りを気にして、鬱蒼とした森のほうへ俺を連れていった。


―――――†―――――


 『汝は、魔法の力を信じ、魔物の力を斥けるか?』

 『汝は、人間を愛し、魔物を憎むか?』

 『汝は、今から与えられる力でエグゼルアを守り、エグゼルアのために生涯を捧げるか?』


「ほぉ……この3つな。これってさ、全部前半はイエスで、後半はノーじゃねぇの? お前、あれだろ? どっか異世界から来たとかいってたし、あとへびあたまとマブダチじゃねぇか」

「だからって、そのとき『前半はイエスで、後半はノーです』って言えると思う!?」

「ああ、あの手の儀式って、『はい』って言わんと先進まねぇもんな」

「そうよ……んもぉ、この話もう何話前だと思ってんのよ、あなたのパートだったら秒でツッコんだんでしょうに!」

 あーあ、ついにヒロインにまでそんなこと言わせちゃって。


「あ、そうそう、聞いてよ!」

 え、なんだい。

「そんでもってさ、あの夫婦ときたら、昨日だってさ、作戦地図にさ、結婚記念だっていって式場んとこにハートマークなんかつけちゃってさ、そんでデレデレしてんのよ。ったくいい年して……」


 おお、なるほど、これは鬱蒼とした森で話さないと危ないな、って女神レベルだったら聞いてそうじゃね? とか思ったが、なんかいろいろ言いたげだったのでそのままにしといた。


「んー、わかったわかった、要は、へびあたまとはコンタクト取りずらいから、俺が行ってこい、そういうことだな?」

「……そうよ、はぁ……私何やってんのかしら、こんな男に頼み事して……愚痴まで言っちゃって。ガイトゾルフってこんなお仕事なのかしら……」

「何ぶつぶつ言ってんだ。で、お前は今からどちらへ?」

「なんかあるらしいのよ、このへんに、魔物の住んでいる、氷の洞窟が」


 ああ、ベルツェックルのお使いか、ご苦労さん、とにかく、俺らは森の外へ出ることにした。


―――――†―――――


「……さも、ありなんだわ」

「何を見ている?」

「ああ、あの反逆者よ……森の中で彷徨ってる……哀れだわ」

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