第35話 Magic Loaderの思い出

 翌日。


 ベルツェックルは再び、ガイトゾルフたちを広間に呼び寄せた。


「今日、いよいよテューナの神殿に出撃する!」


「テューナの神殿は、ルカンドマルアの北にある。おそらく、昨日襲ってきた連中もここからやってきたに違いない。ここを徹底的に叩くことで、昨日のような惨劇は食い止められるだろう!」

 サーイは、他のガイトゾルフとともに、出撃の準備をした。その途中、昨日の話の中で気になることを聞いてみた。

「ベルツェックル様、『思い出の地』って、どういうことですか?」


「あの神殿には、私とクペナ、そして、ウェルダとの大切な思い出があるんだ……」

「ウェルダ?」

 そこにクペナが来た。

「ベルツェックルの、かつての奥様よ」


「もう28年前になる。私とウェルダは、あの神殿で結婚式を挙げていた。……ところが、そこに魔物どもが急襲してきたのだ。私も必死に応戦したが、参列者の多くは殺された。そして……ウェルダもだ」

 ベルツェックルは続けた。

「魔物どもはそれ以来、神殿を占拠してしまった。私は、魔物どのへの復讐をするため、そして、ウェルダを弔うため、何度も神殿に足を運んでいた。そして、数か月前、神殿の奥の部屋で、ウェルダにそっくりな女性が捕まっていたんだ。それが……クペナだった」


「助けていただいた感謝の気持ちと、亡き奥様への愛に心を打たれ、私が新しい伴侶なることを望んだのです」クペナがベルツェックルに寄り添うようにして言った。そして続けた。

「あの神殿には、魔物たちが改造したと思われる牢屋がたくさんありました。あなたの大切な人も、そこに捕らえられているかもしれません」

「……おじいちゃんが?」

「そうです」

 それを聞いたサーイは、ふと尋ねた。

「お二人は、結婚式は挙げられたのですか?」

「まだだ……なぜそれを聞く?」

「それなら、テューナの神殿で挙げてください。私が、挙げられるようにします!」


「サーイ、なんと頼もしい……それでこそガイトゾルフだ!」



 テューナの神殿は、ルカンドマルアから歩いても昼前に着くことができた。


 昨日、町を襲った魔物たちがいたが、サーイを覚えていた連中は、恐ろしさのあまりすぐ逃げ出した。サーイを初めて見た連中も、ひとたびその強力な魔法を見るや否や、同様に逃げ出した。


 逃げ出す連中を、他のガイトゾルフたちが追い詰めていき、とどめを刺した。


 こうして、神殿の中に巣くっていた魔物らは、あとかたもなく倒された。まだ正午を少し過ぎた時のことだった。


「おじいちゃん、おじいちゃん!」


 だが、マージの姿はどこにも見当たらなかった。

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