第18話 味方するMagic Loader

 なんでだー!

 アシジーモ、こいつは俺の友達だ、っていったじゃんか!

 イサキス、俺はお前の優秀な助手じゃなかったんか!

 カルザーナ、俺も男だから、優しくされたときに少しよからぬことを考えたかもしれん……だが、やっぱりおそるべき女だった。


 彼らは俺の前を過ぎ去り、一人テュブに取り残された。ああ、優しいのはこの、まもの1/2のじいさんだけか?


「おまいさん、ひどく恨まれたものよのお」

 他人事のように話しかける。けど、実際アノルグは悪くない。俺が、トゴリーティスとスライタスが使えたばっかりに、だ。

 俺は、その2つを手にとり、アノルグに訊いた。

「これと、これが、『滅びの魔法』……?」

「ああ、それはな、違うんじゃが……まあ、わしとて、彼らの仲間には違いないからのう、これ以上いったら、コロサレルかもしれんしの」

 そこはちゃんとするんだ。

「アノルグさんのお師匠さんって、あの6人目のマジック・ローダーのことですか?」

「そうじゃ、彼はいま、追放されて奈落の底におる……どうじゃ、行ってみたらどうじゃ?」

「俺が……奈落の底へ、ですか?」

「おまいさんはただの魔法が使えないデクノボーじゃなさそうじゃて、こうなりゃ、そいつに会ってみるしかないじゃろ!」


 奈落の底……とはいっても、あの浮島群を渡ったとき、多重スクロールの遅いほうには、確かに緑色の地面が見えた。漆黒の宇宙空間とか、赤くたぎる溶岩とか、はたまた紫色の液体まみれとか、そういう類ではないことは確認している。


「おまいさんには、頼れる相棒もいるしの……ときに、ヤツの名前はなんじゃ?」といって、アノルグはバウザスのほうを見た。

 最初にバウザスと会ったときにも書いたが、この時点までバウザスという名前は知らなかった。あ、そうだ、聞いてみよう。トゴリーティスで。

 例のメニウから、「T-word」を選んでスライタスで触れると、何やら下半分に文字の一覧が出てきた。文字をスライタスで触れると……ほう、触れた文字が1文字ずつ上半分に出てくる、という仕掛けか(読者の皆さんはよくご存知のアレを思い浮かべてくださればOK)。


「kimi no namae nani? 」と書いてみた。

「na ma e ? nanda sore kueru no ka ? 」

 そんな概念はないっぽい。


「まあ、生粋の魔物じゃからそんなもんじゃろ。そうじゃ、おまいさんがつけてあげればいい」といわれた。

 そういわれてもなー、と思って、文字の一覧を適当にさわってみる。

「ghuroge」:グフローゲ? なんかすぐやられそうだ。

「efuvkge」:エフヴクゲ? 読みにくいだろ。

「cagin」:あれ、たまたま俺の名前になった。

「assijimo」:俺を見捨てたあいつじゃんか。

「sarye」:ん? 聞いたことない響き。異世界の名前っぽいな。女性っぽい?

「vauzas」:バウザス……あ! これ! これ、それっぽい!

 ええと、何ですか? 何ですか? 俺の名前やらなんやらが、ランダムに叩いて適当に決めた名前だってのかって? そ、そんなことは絶対ないぞ! ってバウザス、バウザスだよ、君の名はバウザスだ、決まり!


 そう伝えると

「ore ha vauzas , kakkoiizo」

 とご満悦だった。


―――――†―――――


「ひっひっひっ、それじゃあ、わしひとりでさみしいかもしれんが、見送るかのう」

 テュブは浮島群からはそれほど遠くなかった。バウザスの好物、モラックの実もいくつか持たせてもらったから、お腹ももつだろう。


 俺は、バウザスの背中にまたがり、浮島の1つから飛び降りた。

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