episode5「メンバー集結」

 ダンジョンに戻った俺たちは俺がティアにしたように幼い少女に魔力を注ぎ込んだ、すると少女はティアと同様に体をビクッと震わせゆっくりと目覚める。


 「んっふぁ〜、ここ…どこ?」


 「目覚めたな幼女よ!我名はトオル魔王四天王の1人にしてこのダンジョンのぐふっ」


 「その変な話し方やめなさい、えーとこんにちは私はティアっていうのあなたはお名前わかるかな?」


 「名前…フーニャ、私はフーニャ!」


 名前を思い出しフーニャは嬉しいのか嬉しそうに飛び回る。これ程までに無邪気だと戦闘に出る時使いづらそうだなと先のことを考え気が重たくなる。


 「よしフーニャ、なぜあんなところにいたか教えてもらおう」


 「フーニャ何も悪いことしてないのに街のみんなが急に家に来てアーニャのせいでこの街がダメになったとか疫病神めとかいろいろいっぱい言われて暗い洞窟に閉じ込められちゃったの…」


フーニャは悲しそうな顔をしている。こいつもティアと同じ様な冤罪でべポン王国によって閉じ込められたようだ、これでべポン王国が何か計画している事はもう確定だろう。


 べポン王国については本当胸糞が悪い話しか出てこない、フーニャの話を聞いた後俺は自室だけでなく魔王城の本まで全て調べ尽くしたがどうやら事実とは異なることばかりらしい。


 ティアとフーニャの生活していた時代は約100年ほど違うらしく2人の話す街の様子はだいぶ違っていた。


 フーニャの時代の方がべポン王国に俺が1度行った時と似ている様だった、それでも少しちがっている部分があるのでフーニャも半世紀はあそこにいたのだろう。


 べポン王国も調べなければならなかったが俺たちはパーティ4人目のメンバーを探さなければならなかった為休憩がてら森へ来ていた。


 特に目星はない為またティアの神眼を頼りにする事になった。そんな中目を凝らすティアとは裏腹にフーニャは俺たちの少し先で久々の外に興奮していた。


 「トオルお兄ちゃんコレなぁに?」


 「あぁそれはリンゴだよほら食べてごらん」


 「あま〜い、おいし〜い!はい!これティアお姉ちゃんにもあげる!」


 にっこりと笑いながらリンゴを差し出すフーニャに戸惑いながらも礼を言い受け取り食べようとしたその時だったティアがフーニャを見つけた時同様興奮し始めた。


 「来たわよ!どんどん移動してるこの潜在能力、スピードかなりのものよ。ほら聞いてるだけじゃなくて捕まえてきなさいよ、ここから北東に進んでるわ。また変化したら念力飛ばしてあげるから。」


 それくらいは仕方ないと思いながらフーニャを任せ俺は北東の方へ走り出した。なかなか追いつかないため逐一おおよその距離を伝えてもらう。


 しばらく走るとそれらしい影が見えてくる、近づくにつれそれはより鮮明になっていく。その影は人ではなく何かドラゴンに似て非なるものだった。


 その生物は尻尾が9本生えていたためすぐに捕まえることができた。尻尾を掴み足で思いっきりブレーキをかけるとその生物は止まり振り返った。


 「何事でありんすか?私は久々に外に出て羽を伸ばしている最中でありんすのに。」

 

 「よぉ化け物!早速だがちょっとついてきてもらうぞ!」


 俺はその化け物の返事を聞かぬままダンジョンの96階層にある闘技場に転移した。化け物は何が起こったか分かっていないようで辺りをキョロキョロと見渡している。


 「一体何が起こったんでありんすか?さっきまでいた原っぱはどこに行ったでありんすか?」


 驚いていた化け物は少し落ち着きを取り戻したのかフゥと深呼吸をした、次の瞬間ぼむっという音と共に辺りが真っ白になった。


 (煙幕か…クソ逃げる気だな、探し出して脅すしかないか)


 そんな事を考えているとやがて煙が晴れてくる、やはり先ほどまで目の前にいた化け物はいなくなっていた。確かに化け物は居なくなっていたのだが代わりにそこには見たこともない服を着たお姉さんが立っていた。


 「だ、誰だ?どこから現れた!ここまでたった1人で侵入してきたというのか?」


 「お前さんは何を言ってるのでありんすか?私は先ほどお前さんの前にいた九尾でありんすよ?」


 どうやら人化したらしい。九尾というのははるか東に位置するバディク地方に生息する妖気という種族で地方最上級の魔物らしいがバディク地方には魔法という概念自体がないらしく研究するため遥々ここロウティーク地方まで来たらしい。


 「魔法がないならその人化するのはスキルか何かなのか?」


 「コレは妖術でありんす、この地方には妖術が無いのでありんすか?」


 何となく掴めた、恐らくこいつの妖術というのは魔法のことで言い方や特徴が少し違うだけのものらしい。それを九尾に伝えてやる。


 「な、誠でありんすか…ここまでの労力は一体なんでありんすか」


 九尾はガッカリしたのか涙目になり俯いてしまう。そこですかさず俺は九尾をパーティに入れるため取引を持ちかける。


 「お前俺たちのパーティに入る気はないか?実はある事情があり俺はパーティメンバーを探していてなお前は能力的にもちょうど良いのだ。もちろんお前が入ってくれるのであれば知らなさそうな魔法を好きなだけ教えてやろう。」


 「ま、誠でありんすか?それはいい話でありんす!ぜ、是非メンバーに入れておくんなまし!」


 はい、メンバーゲット。4人目のメンバーが決定したところで俺はこの階層にティアとフーニャを集める。


 「まずは自己紹介も兼ねて自分の持つ魔法やスキルなどを端的に交換しあおうじゃないか。俺は知っての通り魔王四天王が1人トオル魔法は全て使え武器の生成や魔法の研究などもしている。」


 「次は私ね、私は堕天使のティアこいつと同じで魔法は全部使えるわ。役職としては何でもござれの完璧な魔法使いマジックマスターってところかしらね」


 「次はフーニャ!フーニャはフーニャ!フーニャは何ができるのかわかんない…」


 「最後は私でありんすね、私は九尾の堕鬼と申します。妖術全般は使えるでありんす、他は武力などは割と普通でありんす。」


 「よし!ではここからの第一課題だが俺たちはまずフーニャの特訓から始める!フーニャは潜在能力こそ高いが今はまだそこらの子供と同じ力しかない。その為フーニャが俺たちと同等以上の力をつけるまで特訓を行う!」


 こうして俺たちのパーティは最強パーティへの第一歩を歩み出した。


To be continue

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