episode2「堕天使」

 封印石から出てきた少女はあの後全く起きずに3日が経った、ミラージュを解き公となったダンジョンも警戒しているのか全く侵入者がいない。


 また暇になった、俺はまた様々な武器や魔法を生成していた。武器は銃を軸に様々な改良を施している。魔法も属性同士を掛け合わせたりしてさらに強力なものをいくつか作った。


 部屋には使いもしない武器がどんどん溜まっていく、どうしたものかと悩んでいると足元が光る、これはスキルを習得したという知らせのようなものだ。


 早速ステータスを見てみると完全収納ストレージマスターというスキルが増えていた、どうやら自分のみの時空の中に所持品を収納できるものらしい。


 何て便利なものなんだと歓喜し次々と物を詰め込んでいく、武器を収納し終えまた研究を再開する。


 10日が過ぎやっとダンジョンに侵入者がきた、初めての侵入者のため期待に胸躍らせた、どこまでいけるか、もしかしたらここまでくるのではないか、そんなことを考えていた1時間前の自分を怒鳴りたい。


 侵入者は1階層の魔法トラップも見破れず道を塞いだ封印石のあった空洞に転移してしまった。


 「あぁ〜何でトラップの確認しねぇんだよ!本当に冒険者かこいつら!」


 と愚痴をこぼしながら1階層付近に配置した悪魔に転移トラップを解除するよう命令を出し、また暇になる。



 やることがなく手を持て余した俺は悪戯感覚で少女に莫大な魔力を流し込んだ。


 途端に少女はビクッと体を震わせ起き上がる、やり過ぎたかとも思ったがどうやら何ともないようだ。


 少女は前回起きたときの機械的な雰囲気と違いおしとやかな感じだ。


 「ここはどこなのですか?あ、あなたが出してくれたのです?」


 「あーとまず我の名はトオル魔王直属の四天王が1人である、そしてここは我が作ったダンジョンの最下層だ!」


 と少し調子に乗ってそれらしい発言をしてみたのだが…


「あはははは、何ですかその変な喋り方面白すぎるのです。」


 少女は腹を抱えて笑っている、平然を装いつつも顔が真っ赤になっていくのがわかる。恥ずかしい…


 「う、うるさいそれより俺は名乗ったお前のことも教えろ!」


 やれやれと額に手を置きながら少女は話し始める。


 「私はティアと申します、元神です。」


 神か、ベリアルのような堕天使がいる時点で神という存在にはそこまで驚かない、こいつもおそらく堕天したタイプの神だろう。


 「で、何でお前は封印されてたんだ?」


 「それは…私がべポン国を滅ぼそうとした主犯だという罪を着せられたからなのです。言い方を変えれば冤罪という者ですね。」


 少女は苦笑し俯きながら答えた。べポン王国はダンジョン近くの隣国だ、確かに大昔にそんなことがあったという文献を読んだことがある。


 「…それは辛かったな。」


 「はい、それはもう凄く…堕天したとはいえ元は神こんな事を言ってはいけないのだとは思いますが本当にあのクソ野郎どもが憎いのです。」


 ティアの目に涙が浮かぶ、無理もないだろうこいつの気持ちは痛いほどわかる。俺もその憎いという感情で今ここに立っている。


 こいつも同じなら一緒に戦ってくれるのではと思い提案してみることにした。


 「ならば俺と共に国を滅ぼす気は無いか?丁度俺も滅ぼしたい国があるのでな、それに滅ぼせば貴様を封印したという事実は抹消され貴様の憎しみも消えよう。」


 「で、でも元とはいえ神である私がそんなことできるわけないです。」


 「しかし貴様はすでに堕天しているのだろう?」


 少女はしばらく悩んだ末答えを出したらしい。


 「決めた、私は神という地位を捨てあのクソ野郎どもに報復します!もちろんあなたにも協力します、これからよろしく!」


 「あぁよろしく頼むぞ、ところで貴様のその無茶苦茶な口調はどちらなのだ、できれば統一してほしいのだが。」


 「っ!じ、じゃあ堅苦しいのは嫌だから普通の口調に戻すわ、その代わり貴方もその変な口調をやめなさい!」


 引っ込みが効かなくなっていた俺はこの気を逃さずこの口調を生涯封印と心に誓った。あぁ今日もまた夜が来る。


To be continue

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る