第1章「国家陥落編」

episode1「ダンジョン」

 今でも時々あの頃を夢に見る、人間だった時パーティメンバーと共に苦しい中でも楽しかった日々を、もう戻ってはこないあの日々を…


 マモンとの戦いの後特にやることもなく俺はまたベリアルと手合わせをする日々が続いていた、新たなスキルもいくつか増え魔法同士を掛け合わせる合法魔法を研究したり武器を開発する研究者のような生活を送っていた。


 勇者たちはまだ攻めてこない、何をしているのか死んだのではないか、など様々な憶測をするもただ攻めてきていないだけらしい。臆病な奴らだななどと考えていると魔王から招集がかかる。


「よく集まった四天王よ、ここ最近は勇者パーティの動きは一切ない。そこでだお前たちはしばらく四方に飛びダンジョンを作ってきてもらいたい。」


 魔王によると勇者たちのような人間サイドの力量を計るためにダンジョンを作りたいと考えているらしい。難易度的にはLv300の人間がクリアできるくらいでいいらしい。(人類最高はLv150くらい)


 早速出発だ話し合いの結果俺は西側にダンジョンを建設することになった、だが俺はこの森と故郷の国しか行ったことがないため転移魔法が使えないので歩いていくしかない。


 しぶしぶ歩きながら森を抜け隣国との間の原っぱに着く、このあたりに作ろうと決め早速始めた。俺が作るのは地下ダンジョンだ。


 周りにミラージュ魔法を掛け穴を掘り始める、何層にするかは特に決めていなかったがきりがいいので100層にすることにした。


 召喚魔法で複数の悪魔を召喚し爆発系魔法でひたすら穴を掘り進める。穴をあけ終わり城内にいたドワーフを使い層を作っていく。約50層まで作り終えた、そこまでは順調だったがそこで問題が発生する。


 60層辺りに洞窟が発見された、不安な要素は取り除くべきだということになり俺と数匹の悪魔を引き連れ奥へと進んで行く。


 だいぶ昔の道のようなので隣国がどこかへ繋げるために作った道なのだろう、幸い分岐はなく一本道だった、しばらくすると見上げるほどの大きな扉に突き当たった。


 結構歩いたのでこの上は魔王城だとわかる、嫌な予感がしたため恐る恐る扉を開くと中は真っ暗だったが、その闇の中に時々光る宝石のようなものがある。


 おそらく何か仕掛けようとした後なのだろうが失敗したらしい、しかしこの宝石は万が一のため持ち出し穴を塞ぎ俺たちはダンジョンづくりへと戻った。


 半月ほどでダンジョンの層は完成した後は内装だ、正直内装などは面倒くさいので女の魔物に任せ俺は最深部100層にある自室へと赴いた。


 自室には各階層につながる陣や俺が作った武器や魔法などの資料が置いてある。


 椅子に座り机の上に置いておいたこの間の宝石の研究を始めることにした、不思議なことにこの宝石は呼吸をするかのように一定のリズムでずっと光り続けている。


 こんなものは見たこともなければ本で読んだこともないので正直手の打ちようがなくどうしようかと悩みふけっているとダンジョンづくりを終えた1匹の悪魔が宝石を見て喜び始めた。


 「トオル様そのような美味そうなものをいつ捕らえられたのですか⁉」


 えらく興奮しているのか鼻息がすごい。


 「これが何か知っているのか?」


 「?知らぬのですか?それは封印石と言って人間から魔物まで何でも封印できてしまう魔道具ですよ、近年では素となる鉱石が掘りつくされだけでなく封印にもまた解くためにも膨大な魔力を消費してしまうためもう使われていないようです。」


 俺の魔力なら開けるのなど容易らしいが明けてこのダンジョンか壊れてしまっては困るので外で開けることにした。


 早速外に出ると数匹の悪魔や魔物がワクワクしながら見つめている、そこまで期待されてもなと苦笑しながら宝石を地面に置き魔力を込める。


 目いっぱい魔力を込めて手を宝石にかざすとあっという間に開いた、辺りに煙が立ち込め視界が奪われる。


 風魔法で煙を飛ばすも前には何もいない空にも、まさかと思い背後を見るも悪魔や魔物に変化はない。


 失敗したかとため息をつき視線を下にやる、するとそこには少女が眠っていた、その少女は恐らく封印石に眠っていた者なのだろう。


 何年封印されていたかは知らないがかなりやつれている、俺はその娘を食らおうとする魔物たちを払いのけ自室に連れていきベッドに寝かせてやる。


 しかしまぁなんというか貧相な風貌で服も髪もクシャクシャだ起きたらシャワーくらい貸そうと考えていたら悪魔たちから内装が完成したとの連絡が入る。


 俺は悪魔たちにそれぞれの階の配置に就くよう命令し魔物たちを魔王城へ送り届けまた自室に戻る。


 少女はまだ起きない、俺にも少しは人間としての心が残っているらしく少し心配になった、少量であれば魔力を分けても大丈夫だろうと少女の手をつかみ少量の魔力を流し込む、


 しばらくしてうーんと声がした、俺は起きたのかと振り向くといつの間にか体を起こしていた。バッチリ目が合う、少女は小さな声で何かを復唱している。


 「…してやる、全員…殺してやる…。」


 少女はその言葉を発してまた眠ってしまった。恐らくあそこには何か悪意があって封印されていたのだろう。


 まぁ起きたら聞くとしよう。少女を横目に俺は机にあった本に目を落とす。


To be continue

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