episode6「反逆者」

 ベリアルと向かい合い中級の魔物が鳴らすスタートの合図を待つ、辺りには殺気と緊張が漂っているのがわかる。


 ピリピリとした空気が漂う中鐘の音が闘技場内に轟く、その音と共にベリアルは一気に距離を詰めてきた。


 俺は落ち着きながら攻撃を仕掛ける、しかしベリアルはするりとかわし俺を殴り飛ばした。


 さすがに一筋縄ではいかない、俺はこの戦いの中でこいつを越えなければならない。策を練りつつ一定距離から魔法を打ち続ける。


 しかしベリアルは俺と同じ全属性オールマイトを持っているため弱点属性が無い、銃や電磁砲台レールガンなど様々な武器などを生成し応戦するも全て見切られてしまう。


 やはり本当の悪魔であるベリアルには戦略は敵わない、こいつを騙せるほどの戦略を考えたところですべて想定内だろう。


 約1日が過ぎても何も変わらない、ベリアルは傷1つ負わずに立っている。


 俺も自己再生パーフェクトヒールのおかげで傷は消えて体力も減らないがこのままだと残り日数やりあっても勝てない。


 そのまま1ヶ月が過ぎ俺はいまだに打開策を見いだせないままでいた、そんな時ふとベリアルに現れた違和感に気づく。


 攻撃のステップが一定だ、もちろん罠という可能性もあるがそのようには見えない。仕掛けるならここしかない、一点集中で攻撃を仕掛ける。


 ベリアルはぐっと鈍い声を出ししゃがみ込む、ありったけの魔力を込めた魔法や武器でそこをたたく。


 自己再生パーフェクトヒールもこの量の攻撃を治癒するのには時間がかかるらしくベリアルは傷だらけだ、しかし攻撃をやめるわけにはいかない、攻撃するにつれベリアルの姿は見えなくなる。


 何日過ぎたかわからないがその時は訪れた。


 ベリアルが完全に倒れたのだ、どう見ても倒れている。審判の魔物がカウントを取る、俺は自分の鼓動のみが聞こえてくる。


 カウントが終わりベリアルはまだ倒れている、勝った、勝ったんだ。その嬉しさに浸っていたが、その嬉しさは一瞬だった。


 ベリアルは死んでしまった、これからは誰かに導いてもらうのでは無く自ら動かなければならない。努力しようそう心に決め振り返る。


 が、俺は驚き目を見開く。そこにはベリアルが立っていた、何が起こったのかわからないが自然と嬉しさが込み上げてきた。


 「ふん、あの程度で死ぬと思うな自己再生で生命までも再生すると書いてあっただろうスキルを徹底的に見直すべきだな。」


 とても安心した、この魔物ばかりの城で1人は嫌だ信頼できるやつがいるだけで安心だ。ベリアルはついて来いと言わんばかりに手招きしている。


 ベリアルについていくとそこは初めの日に来た魔王の部屋だった、中は城内の魔物たちが勢ぞろいしている。


 「魔王様ここにいる元人間トオルをまともに戦えるところまで強くしてまいりました。今ここでマモンとの一騎打ちをさせていただきたく思います。」


 「よかろう、マモン前へ出よ。」


 面倒くさそうに前に出てくるベリアルの後だからか脅威には見えない。


 ベリアルの「はじめ」の一言で戦闘が始まる。が、一瞬だった俺の拳はマモンの腹を貫いた。


 マモンはその場に倒れ動かなくなった、城内の魔物たちは驚愕したようだったが俺とベリアルはさほど驚かなかった。まぁこんなものだろうと大体予想できていたからだ。


 「これほどまでに育て上げるとは大したものだベリアル、そのトオルとやらをこの城に置くことを許そう。役職は…たった今空いてしまった四天王の1席をくれてやろう。」


 俺はここにきてたった半年で四天王にまで成り上がった、勇者パーティを目指していたあの頃とは比べ物にならない成長だ。


 悪感情が強いというだけで連れてこられた魔王城、ここで俺は新たな人生をスタートしあの国に復讐することを再び誓った。

 

 魔王城四天王が1人「反逆者リベリオンデビルトオル」として。

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