第2話 厄日の到来、1
俺たちの母はメイーシー・クライウスといって、父の名はカルソン・グラントという。
両親はロランダ王国にて、どっちも若い頃は魔物ハンターをやっていて、優秀な戦士二人組として知られてきた。で、ハンターギルドに所属していた二人は数多くの魔物を討伐してきたんだが、「あの日」がやってきたまでにも国.....つまり、王様からの褒章として、爵位をもらうことに対して、ずっと拒否し続けてきたのである。
おかしいと思うだろうー?
国に対して、魔物討伐で多大な功績をもたらしてきたというのに、それに伴う褒章を一切拒むとしていた彼らの態度が......
で、最近になって、姉ちゃんにしつこく両親のとってきた頑固な姿勢をたずねたのだけれども、いつもこう答えてきたのだ:「多分、爵位をもらってからでは自由な生活ができなくなるから、目立たないためにここの山奥の屋敷を立てて暮らしていくのが好きだから、そういうのをずっと拒んできたと思うわ。」
姉ちゃんの説明を聞いて、納得がいくなとも思うんだけれども、なんか腑に落ちないなぁって感じがして、なんども他に思い当たる理由がないかと姉ちゃんに何回も聞いてきたけど、返事はいつも同じだった。
でも、やっぱり、俺がこうしてしつこく聞いてきたのは仕方のないことだ。
だって、「あの日」の後の今の一年間なんだから、それについて深く知りたいと思うのは養子である俺にとって、とっても大事なことなんだから!
「あの日」.......というのは、今の俺たち二人の脳裏にも鮮明によぎるほどの衝撃的な悲劇として、頭にずっと付きまとわれてきて離れようとしない、忌々しき厄日だったのだ。
そう。
あの日、つまり.....一年も前から、俺や姉ちゃんがそれぞれ11歳と13歳だった頃に、森の中で木の実や果実、動物の狩に出て行った俺ら家族は4人も揃った、とある森奥の一角に、数匹のイノシシの群れを発見したのである。
で、ここの生活を続いてきた俺ら4人にとって、主な食事となるの果実、野菜や狩でとってきた動物から食べるのが主流で、たまにだけど、一ヶ月間ごとに一回だけ、父ちゃんがここからもっとも近くにある小規模な町、約5キロメートルも離れた「グランテズ」に行って、備蓄のつもりで買ってきた料理に使うような食材や加工された原料やスパイスなどで、日々の必需品を調達しにいってきたのであった。
しかし、やっぱり、主な生活の営みにおいて、狩から得られる食材はメインで、だからいつも4人で狩に行って、父ちゃんたちから色々学んできたのだ。
その日、戦闘力の上がって俺は容易く一人で、すべてのイノシシの首を切り落とすことに苦もなく成功した。
「ネノ姉ちゃん、父ちゃん、母ちゃん、どうだったー!?俺の腕前はー!?姉ちゃんたちほどじゃないにしても、よくできただろうー!?」
「セオー!見事だったわー!ああ~~私の可愛い弟がまたもその優雅な動作一つ一つで狩りの成果を披露してくれたのを見ると、なんか~~すごく抱きしめたい衝動にかられるのよねー。ええいーー!」
そういうが早いか、紫色ロング髪を煌かせた姉ちゃんが予想通りに、俺の方に向かって突進してきた、それも先ほどのイノシシみたいに、だ。
「はい、それー!」
いつものことに、俺は姉ちゃんの突進を無事に回避したのであった。
バコーー!
当然、勢いづけた姉ちゃんの容赦ない猛進は俺に当たらずに、代わりに俺の後ろにあった、木に衝突して、それをばきっと折らせてしまったのだー!そうだった。姉ちゃんの<霊性気力(アンナドレム)>は俺のより遥かに上なのだから、気をつけないって点も注意しないとー。
「うぅぅぅぅ......酷いよー!セオちゃん!なんで避けるのー?姉ちゃんはただ、可愛い弟の成したすごい戦果に対して、この胸や腕の中で労おうと思ってたのに~~~、なんで~~??」
「もう、姉ちゃん、俺はもう子供じゃないんだから、そういうべたべたするの、いい加減やめてもらえないかな?それに、そんな速度だと、当たったら俺の方が怪我するってのー!」
「ぎゃはははははほほやああー!どうだ、メイー!?セアはいつもあんな感じでセオに迫ったんだが、あの二人は将来、いい魔物ハンターコンビになると思わないかいー!?昔のオレらみたにさー!?」
「もう、あなたー。その笑い方はいつまで続けるつもりなのー!?年を取るにつれて、少しは自重....というか、大人しくなってみてはいかがー?後、セア、あんたもセオに対して、少しは自粛した方がいいんじゃないー!?彼、数年たったら、もう立派な一人前の男性になるのよー。」
「だって~~。母ちゃん、セオがあまりにも可愛いのはいけないんだもんー!それに、狩りをしてる時もなんか、かっこいい男の子って感じが最近、いつも感じられるようになったんだから、おかげで、ついつい衝動に耐えられず、セオの身体中すべてをひじょうにこの身でぎゅっと~~包み込んでいきたくなっちゃんだもん~~!」
「もう、姉ちゃんー!これあげるから、今のところは引いてくれないかなー?」
「わおー!私の好みの<ユブラン実>なんだわー!それも3個ー!?ありがとう、セオー!ちゅ~~。」
<ユブラン実>というのは、黄色な小さな玉に似ている形をしていて、味はとっても甘いながらも、ほんのりとすっぱいなところも混じっているから、姉ちゃんの大好物なんだ。3個を俺の手から受け取った姉ちゃんなんだけど、それでも懲りずに、ありがとうと満面な笑みで声を興奮させながら、俺に近づいて頬にキスしようと唇を寄せてきたのだけど、
「はい!ストップー!」
と、俺の手のひらで姉ちゃんの向かってきた顔を阻止してみせたのである。
「むーーっ!むーーっ!」
それでも懸命に俺に近づきたいって意思が衰えないままで、頬を膨らませたまま白い肌をいっそう真っ赤にさせている途中の姉ちゃんはやっぱり、なんか....可愛いなあ、って思ってしまうって思う気持ちはこの胸の内にだけ留まらせよう、うん。
それから、数分後、太陽もそろそろ沈みそうな夕暮れ時も近くなって、狩や自然に生える果実の採取も終わりを迎えるところに、
「わがおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!」
恐ろしいまでに、そんな獣のような咆哮がこんな紅色にそまりつつある黄昏な空に照らされた森の奥にある俺らのところにまで、聞こえてきたのだったーーー!
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