第2話 真奈美



私と悠太郎が最後に夫を見たのは、夫が会社を休んだ日だ。


いままで至って健康に過ごしてきた夫が寝込むことは珍しく、

家族や職場の田崎さん含め、大いに心配していた。



最初は体調が悪いという理由で休んでいたが、


夫は病院に行きたがらなかった。


強引に連れて行こうとしても、


「薬臭いのは嫌だ」と、よく分からない理由で断られ、


結局、休んだ翌日から高熱も出て、


17日までは自宅待機ということで、会社からも了承をもらった。





しかし、

夫は自宅から消えてしまった。



とても動けるような体調ではなかったはずなのに、

私も悠太郎も全く外出の気配に気づかなかった。


管理人さんへ頼み通して、

アパートの監視カメラを確認すると、

17日の夜に、夫が玄関より出ていくのが映っていた。



私たちは「なぜ外出してしまったのか」それさえもわからないまま、

必死で町中を探した。


捜索には、田崎さん含めた会社の方も何名か参加してくれたが、

失踪翌日には見つからず、それ以降も消息が分からなくなってしまった。



警察にも相談した所、

近所のコンビニの監視カメラを確認してくれたようだが、

そこにはなぜか夫の姿は映っておらず、

アパートの玄関を出た映像のみが、夫の外出を裏付けていた。


警察も首を傾げてはいたが、それ以降は特に相手にもされず、

私たちはビラ配りをや興信所に依頼をすることで、

夫の所在を探す情報を集めるしかなかった。




なぜ?どうして?



私がもっとそばにいてあげれば。



私がしっかりしていなかったせいで。



私たち出会ってからずっと二人で乗り越えてきたはずじゃない。



なぜ私たちを残してどこかへ行ってしまうの。


帰ってきて。生きていて。



燦々と真夏の太陽が降り注ぐ中、


暗闇は私にそっと寄り添い始めていた。

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