床にて
――苦しい、とは言いもせぬ本音だった。苦しい、胃のうちの全てが病魔に占められている。もう其処は我が意思の自由に利く処では無い。
降り始めた冬は我が春もよく遠ざける。過ぎ去りし秋は夏も携え、背負いては我が眼前を去りぬ。
布団を深く被り直し我が思考は呆れた。あぁ、一体、
更に深々と静けさを抱えながら粒の数は甚だしく、その知れぬ雪の明けに胸を抱えた。苦しい。その深い雲は、あの時の深淵を思い起こさせるのに易かった。今更、その思い出を無理に静めようとは思わぬ。ただ、一連の光景が眼前を通過してゆく、それを我が病床に移りし気の病みが抵抗もせずに受け流してゆくのだ、
嗚呼しかしよく乗り切った、君。
辛きに及んでもあの頃の己は自ら必死の勢を常に熱き眼に抱えてゐた。
強き意思だった。苦しき戦ひであった。だがその回顧は眠る我と、その頭に浮かぶる若き、…
だがひとつ、我が闘ひにひとつの光明を与へた。若くとも病を抱へてゐようとも、我は我で在る事だ、即ち前線で耐へた我は詰めるまでもなくこの病床の我であり、そう気付くと我はにわかに以前の我が力の継承を認めるのであった。
苦しい、が、これが将の私の何に為ろう?いづれ果てる、雪も冬も消える、拠って病も癒ゆる、それは確かだった。
講和会議は時を見るに既に開かれて早ければ終わっている事だろう、
一等勲章、何を嘆かん、邦国指揮官、憂ふるに如かず。
雪はきっと去ることよ。美しき流に身を任せれば来年春には桜と共に戻らん。
しばしの休養、しばしはしばし、時は過ぐとも長くはあらね、我が横で降りし清白なる屑、今や其れが横、身を休めよとや。
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けっこうまえの産物。あるモチーフをイメージしていたりします。バーッと書き付けていたので表記ゆれがあります。それも大体そのままです。
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