断片詰めあわせ
「…こうするとね、光の加減で…こう、ガラスの色が変わるんだ」
わぁ。 彼はそう言いながらガラスを持ってその角度や位置を変えつつくるくると回す。
その度に光はそれに当たりきらきらと反射する。涼しげで透き通った様な味。
きれい、と声をつい零すと、賛同するように笑顔もこちらに向ける。
―本当だよなぁ…、少しの息の吹き方や形の加減で、全く違ったもんになっちまうんだぜ、
と彼ははにかんだ、夏の花の様だった。
もう一度称賛すると照れた様に笑った。ばぁか、これからもっと凄いのを作れる様になるんだよ、
――へぇ、師匠みたいな? ――いや、 俺は俺に作れるものを作る。
そう言い切ったあの日の少年の瞳は、とても澄んだ、夢に満ちて、きらきらと輝いていた。
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※「(?)」は判読自信無い文字
いや、こういう意見は…正直余り慣れていない、 彼は溜息をつきそうだった。
好評価ばかり各方面で受けているからであろうか、気を配っていたゆえ、また最大気に掛けていたのは他者―其れも人民への配慮と共に官僚への気の振り方―の印象であったゆえ。
意外でありましょう、このような、一般の方の状、 云うと彼は あぁ僕は担がれたものばかりと 驕(?)って居った、反対は居ないことはない、と、僕はまったく、
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楽しいよ。 でもね、ちょっと疲れたんだ…。
そう言ったきり彼は倒れ込むように眠った。
誰だってそうだが眠りこけている表情てのは何も考えていない様な風をしている。
ただ、それはどうも僕には心穏やかに見られるものでなかった。
どこまで疲れていたのか、僕には知る由も無いが、きっと彼は、彼なりの立場と役職と、その他一人で抱えて対処していた問題とで大分労力を費していたのだ、その位は同じ様な境遇の僕には判った。
こいつは若い。まだ若い。若いからと言ってまだ頼ってしまう所は多分にあった。きっと大丈夫だろうと、皆が思い込んでいた。今思えば、それはこの性格の目の前の一人には幾分酷くこたえる仕打ちであったか。
気付かないでいた僕は、どうしようもない奴だった。ただ目線をやったままじっと考え込んで了った。
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「君は案外よく分からないことを言うな」
月を横目に装束は云った。
「あなたは案外よく分かることを話します」
…はあ。そうか、と彼は疑問形で返した。
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わあこんなにも空が星で明るい。次官は声を出して感嘆した。
ええこんな短い間に、こんなに暗くなりました、ずっと外に居たら、その移り変わりを見ていられたのかと思います、が、どうも寒くてその気がしません、と、彼らに笑った。
官僚たるもの億劫がるようではいかんぞ、そう口にした隣の司の口は笑みを画いていて、珍しく穏やかな表情を滲ませていた。その空気に包まれることが、次官にとってはひどく自分に好都合で気が休まり、一層その満面の微笑を一杯に広げるのであった、
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