しんしんと
しんしんという冬の形容を打ち叩く
外は深い冬であった。是程積もるはいつ振りか。
もう少し眺めて居たかったが、遠くの銃声がならぬと告げたらしい。「早くお逃げを」さて如何しようか。
―聚遠。あぁ西公は私を買被りすぎだ。上手なお世辞に身が竦む思いだ。
しかしあの人が冷やかしでなく、ほかならぬ真心でそれを寄せたのに違いはない。
温かさがその手紙と共に私を励ました。少なからず慰められたのは事実。
美しくきりりとはねた字があのひとらしい。私は彼をよく知るわけでもないのだが。
――聚とは世界のことで、…世界の期待をあなたが、―…あなたが集めているということです。
果たしてそれは一部に於いて事実であったか知らないけれど、閑散の身をして是れは申し訳無いなア。書に耽る毎日だ。そう言えば、あの人は「私もだよ」と笑って云うのだろうか?
あぁ、西園寺さん、世間の期待を集めているのはあなたの方だというのに。あなたという柱心で、私達はどれだけ気を強くもてているか。あなたはきっと――そうでもないと、苦笑するのだろう。あなたのように上手い漢文も使えませんから、これをお伝えできぬのが残念です。
雪が庭を覆ってどことなく愛くるしいようだ。清々するような騒音に、私は超越したような諦観を抱く。わたしにも回想のうちに西公の風がいくらか
仕方の無い、此処をひとつ出ようか。重い腰を持ちあげた。
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幣原に着想を得た超雰囲気噺。二月の雪の日、外が警備で騒がしい時期。これからあの辺の、時代が傾く流れに入って来る、あのあたりのイメージ…
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