第56話 マンションを建てよう
一月五日 八時
今日は朝から【DIT】の初期メンバーが集まっている。
自分のマンションが建つところを見たいと、みんな来たみたいだ。
澤田さんと藤崎さんが上下水道や電気、通信などのインフラ業者との打ち合わせをしている。
その他のメンバーは莫大な量の資材を、リストと照合して確認していた。
十一時前には資材の確認も終わり、いよいよ建設を始める事となる。
現場には、【DIT】の初期メンバー、翔たちのパーティ、それに海外から【DIT】に派遣されている研究職の人たちが、集合して見守っている。
現在、俺の【土木練成】のスキルはレベル十になっており、一度に百万立方メートルの範囲を認識して練成が可能になっている。(一辺百メートルの立方体)
このマンションも当然その範囲内に納まっているので、問題なく出来る筈だ。
スキルを発動する。
【土木練成】
まず、図面を次々にスキルに認識させていき、続いて建築資材を認識させる。
そして【発動】
全体が激しく光り輝く、三分ほど続いたであろうか、光が収まると同時にその場には設計図どおりの建築物が現れていた。
その場に居た全員が、ため息をもらす。
「無事に完成したな。内部の確認とインフラの繋ぎこみを頼むぞ」
その場に待機していたインフラ業者たちも動き出し建物外部からのインフラの繋ぎこみを始めた。
その後三時間をかけ、マンション内部の電気設備等の確認を行い、問題も無かったため、これで完成となった。
「この規模の建築物でも三分なのか、ため息しか出ないな。なぁ理。時間のある限り建物作るの協力してくれよな」
「俺がやっちゃうと公共事業をあてにしてるゼネコンが路頭に迷うだろ。どうしても急ぐ必要のある物だけに限定してなら考える」
「せめて理と同等の能力とまでは行かなくとも、似たような力を身につける人物が出てきてくれるといいんだがな」
「鍛治と土属性の魔法と錬金術を使える人間が、覚醒JOBを覚える時なら可能性があるな」
「一般の人にレベル五百まで上げろとか求めるのは、限りなく不可能に近いな……」
海外から参加している研究職の人物たちも、大騒ぎして建物の確認をしながら、口々に俺に協力要請をしてくるが、俺は全部ひっくるめて「無理!」で片付けた。
どうしても必要な場合、【DIT】を通して颯太から要請があった場合のみ対応するとも付け加えた。
◇◆◇◆
今日、北九州に向かった【DPD】と【PU】の部隊は、門司区と小倉南区を絨毯作戦で探索した。
昨日北九州をぐるっと取り囲む壁を作ってしまった為に、脱出も出来なかった人間が大量に拘束され、外国人、三千二百四十五人。
日本人、七百八十三人が八幡防衛都市に収監された。
【IDCO】を通じてこの三日間で拘束された外国人、四千八百六十五人の送還を明日行う事になった。
日本人に関しては、それぞれ取り調べを行い、指名手配などのかかってない人間に関しては、早期に【DG】カードを発行した上で釈放になる予定だ。
◇◆◇◆
一月五日 二十時
今日は、向井さん、東雲さん、澤田さんが来ている。
颯太と達也は総理に呼ばれて東京に行っている。
他のみんなは、引越しで忙しそうだ。
まぁ【DIT】の初期メンバーはみんな収納バッグ持ってるから、運ぶのには苦労が無く、部屋の片付けだけだから、二日もあれば充分だろうけどね。
向井さんは教育者JOBの影響で、向井さんから指導を受けると向井さんよりレベルが下の場合成長が早い事が確認されたので、正式に【DIT】で槍を教える事になった。
この指導は、同一PTで狩をするだけでも効果が発揮されるので、明日以降設置済みのダンジョンで槍使いを引き連れて【PU】の連中を育成するそうだ。
「この歳になって、必要だと言われる場所が出来るって嬉しいもんだねぇ」
「向井さんの実力は、最近の討伐でみんなが認めてますから、当然ですよ」
「確かに俺から見ても、動きが他のメンバーとは隔絶してるな」
「私はちょっとお料理の準備しますね、今日はダンジョン産の鶏肉を使った水炊きですよ、博多風で作りますね」
「私も手伝いますよ」
「東雲さんは引越しの片付けとかは大丈夫なんですか?」
「私は、このままここに住む方がよかったんですけどね」
「折角新しいマンション貰ったんだから、ちゃんと利用しないと勿体ないぞ。どうせ敷地は繋がってるんだし」
「でもスキルの威力は本当に凄いですよね。あのクラスの建物を建てると、通常どんなに急いでも半年以上かかりますから」
水炊きの準備が整った頃に、颯太と達也も戻ってきた。
「明日以降の予定だが、明日は北九州の残りのモンスターを狩り尽くしたいから、理も協力して欲しい。建物に隠れてたりするのが中々厄介なんだよな」
「何か簡単な方法は無いのか?」
「人が居ない事が、前提ならいい手があるぞ」
「どんな方法なんだ?」
「収納バッグを使ってな、一個だけUR作ったんだが容量が凄いんだ。俺のスキルより大きい十億立方メートル(一辺千メートルの立方体)入る。これに取り敢えず建物とか丸ごと放り込むと、生物は収納されないからモンスターだけ残る。それを繰り返すと結構手早く出来るぞ」
「それスゲーな、何が出てくるか解らないから危険はあるが、【PU】で取り囲みながらやって行けば二日くらいで終わりそうだな」
「建物の上の方に人が居たりしたら落ちてくるから、今までは使えない手段だったが、居ないなら問題無いはずだ」
「そのバッグは譲って貰えるのか?」
「この容量は俺にも魅力だから、二個目が出来たら考えるぞ。ちなみにいくらだす?」
「それこそ、空母換算だと10隻分以上の価値があるからな。俺の一存で決められる範囲を超えてるが、俺だけに出来る判別法で調べるか。ちょっと複製かけてみていいか?」
「いいぞ」
【アイテム複製】収納バッグUR 必要魔核ポイント500億ポイント
「ほう、ほぼ想像通りだな、今の買取額だと十兆円だな。元々の基準だと5兆円だ」
「そんなの、どうせ使わないしな四国丸ごとくらい買えるか?」
「今は防衛都市以外の地価は、在って無いようなもんだからな、松山と高知と徳島の防衛都市以外の場所なら、楽に買えるだろ」
「開発の予定で行くと、北海道のほうが助かりますね。アラスカ経由でアメリカ大陸に送電設備を整えようと考えておりまして、国外に設置すると有事の際には所有権が無くなる可能性が高いので、設備は全て国内に置き、そこから世界中に送電する予定です。ロシアが未だに【IDCO】に加盟してないので不透明なところがありますが、ユーラシア大陸全域に向けての送電も視野に入っています」
「【DIT】の自前の発明品で唯一、世界中で利用されそうなのが送電ケーブルですよね。ミスリル銀とダンジョン銅の合金のケーブルだと、電圧の低下が無くなるので、日本から世界中に向けた送電も可能になりました」
「そんなに大規模な発電やるなら、今だったらもっと性能のいい魔導発電機も出来ると思うぞ?」
「それなら、是非頼む、SRの収納バッグに入るサイズまでなら助かる」
「大丈夫だと思うが、入らなかったらURバッグ貸してやるさ」
「しかし、今日の鍋も旨いなー。水炊きって俺は出し昆布だけ入ってて、スープに味はついてないのしか知らなかったが、この鍋は、しょうゆ味なんだな。ポン酢とそれに合わせてある柚子胡椒の風味もすげぇ爽やかで食欲そそるぞ」
「博多の水炊きは、味がついているほうが一般的なんですよ。今日はしょうゆ味です。博多の淡口醤油は旨みが強いですし、これに慣れると関東の醤油じゃ物足りなく感じますね」
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