第54話 北九州奪還

一月三日 八時


 【DIT】本部では【DPD】と【PU】の部隊が各五万人体制で揃い百対の転移門を用意して、北九州に向かい出発した。


 理たちは今日中に八幡ダンジョンを討伐する予定で、討伐班が集合している。


 三十六層から討伐を開始し、順調に討伐を進める。

 装備を一新した颯太、達也、鹿内、東雲、坂内のチームは、五十五層の中ボス以外では遅れをとることも無く、安定した戦いぶりだった。


 五十五層の中ボスはヴァハムート以外では、初めて見かけるドラゴンタイプのモンスターで、いきなりブレスを吐いてきたために、一瞬隊列が乱れ危険な状態になったが、坂内さんと達也が旨く結界を展開し持ち直した。


 とどめは、雪がアイスブレスで凍らせてTBが砕き散らせた。


 そして五十七層のマスターに辿り着く。


「颯太。ちょっと試して貰いたい事がある。俺がマスターを引きつけて相手してる間に、マスターの装備を【アイテム複製】してみて欲しいんだ。マスター装備はレベルと共に成長するから、もし手に入れることが出来ればかなり有用だぞ」

「解った。触らないと複製できないから、完全に押さえ込んでくれ。後ろから回ってやってみる」


 理がマスターを押さえ込んだ瞬間に、颯太が【アイテム複製】を発動した。


「お、複製できるな。魔核ポイントがアーマー、ブーツ、リング、ソードがそれぞれ十万ポイント必要だ。理今持ってるか?」


「あるぞ、四十万ポイント分だな。颯太の横に出すぞ」


 颯太に魔核を四十万ポイント分を渡し複製をさせた。


「ドロップはせず、奪うことは出来ないってのは聞いてたが、もしかしたら複製なら出来るんじゃないかと前から思ってたんだよな」


 マスター装備をベースに使って、UR装備と融合させることが出来れば、凄いのが出来そうだな。


 成長する装備は、魅力だぜ。

 複製を終えて、マスターを倒し地上に戻される。


『マスターおめでとうなのじゃ、『世界で初めて、マスター装備を手に入れた者』を取得したのじゃ、ポイントは五百ポイントなのじゃ』


「このミッションの可能性は考えてなかったな。颯太このマスター装備を、今もう一度複製は可能かやってみてくれ」


「解った」と言って颯太が再度複製を試みる。

「出来るが、ポイントが一千万に上がったぞマスターから直接複製するほうがいいな」


「一千万ポイントは金額にして二十億円か、ちょっと高いな。マイケルなら五十億円くらいなら出すかもな。複製して売りつけろよ、国が出すならこっちに来てる隊員二十名分出すかもな」

「後で聞いてみよう。魔核で払わせるほうがいいな、一人分二百億円。二十人で四千億円なら空母買うつもりで出すだろう」


 ◇◆◇◆ 


 北九州市内の制圧も、今日は【PU】の部隊がモンスターを殲滅しながら【DPD】が捜索を行っていったことにより、旧八幡東区、西区ではほぼ征圧が完了して検挙した人数は二千人を超えた。


 この人数はまだ増加しそうなので、八幡防衛都市内に臨時の収容所を設け、対応が決定するまで拘留することになった。


 ◇◆◇◆ 


一月三日 二十時


 今日は、上田、坂内、澤田、星野、音羽のメンバーが来ている。

 ダンジョンで巨大なタラバガニのモンスターが落とす、蟹足を使った鍋料理に舌鼓を打つ。


「これはモンスターだからまた違うかもしれないけど、タラバガニって蟹じゃないんだよな。ヤドカリの仲間らしいけど、もしかしてヤドカリも旨いのかな?」

「きっと食べれるところが少なすぎて、めんどくさいとかの理由で食べないんでしょうね」


「でも、このダンジョン産蟹肉は、甘みがあってプリプリしてて、身が大きくて食べ易くて、もう最高です」

「今日は二種類の鍋があるけど、俺はカニすき鍋の方が好きだな」


「俺は、カニシャブのほうが好みだ、ポン酢との相性が抜群で素材の味の良さが引き立っているぞ」


「どっちも美味しいです」


 と、みんな思い思いの感想を述べている。

 美味いは正義だよな!


「ちょっと蟹クリームコロッケ作ってみたから、これも食べて感想聞かせて下さい」と東雲さんが揚げたてのカニクリームコロッケを運んで来た。

「滅茶苦茶美味いなこれ、蟹の濃厚な味がベシャメルソースにしみこんで、サクサクの衣との相性が抜群すぎるぞ」


「カニの甲羅を炙って香りを出した物と野菜を使ってスープを引いたんですよ」

「成程なぁ。プロも顔負けじゃん」


「私、料理人のJOBも取得して上げてますからね」と、東雲さんは中々ご満悦な様子だ。


 ◇◆◇◆ 


「今日な、北九州で約二千人拘束したんだが、そのうち八百人弱が日本人だった。殆どが反社会勢力の構成員だが、中には食い詰めてるだけの人間も混ざっている。全国の防衛都市以外の場所でほぼ同じ割合で、不法滞在に該当する者達が居ると思うと、対策を考えなければならないよな」


 と、達也が言い始めた。

 それに対して、上田さんが返事をする。


「現状、不法滞在者と呼ばれる者が行っている行為ですが、これははっきり言って、モンスターを狩ってドロップ品を集め、それを売ることがメインです。

ちょっと考えれば分かると思いますが、これは探索者と同じ事をしているだけです。


何故これが不法な行為になるのかと言えば、今まで前科者及び出身国から許可を得ていない人物に対して【DG】カードの発行を認めておらず【DIT】に売る事が出来ないから、闇で流すと言う悪循環が生まれたのです。

結局、これにより鑑定すらされていない、中身が本物なのかも解らない商品が闇で流れ世界中で問題になっています。


前科者に対してもDGカードの発行をして、正式にアイテムを取引できるようにする事を、良しとするのか否とするのかの判断を考え直さないといけない時期だと思います」


 総務省出身の星野さんが、意見を言う。


「総務の立場から言うと、犯罪履歴の有無とは関係無しに、きちんと納税をしてもらわないと国として困ります。【DG】カードを発行して【DIT】にドロップを売りに来てもらった方が確実に徴税出来るのですから緩和して欲しいですね」


 同じく音羽さんも公定の意見を述べる。


「前科の履歴がある人でもD特区内に設置しされたダンジョン以外での狩りは解禁したほうが国益にかなっていると思いますよ。きちんと収入がある事が、やはり一番犯罪を起こす心理を抑制する事は間違いないですし」


 その意見を聞いた上で、上田さんが要望を伝える。


「【DPD】の意見としても基本は同じですね。一番問題になるのは未鑑定の商品を違法に流通させる事です。詐欺被害も多発している状況ですし、未鑑定の、認証シールが貼っていないダンジョンアイテム類の売買行為に対してのペナルティを強化して、狩り自体は解禁する方向性がいいと私は思います」


 東雲さんも考えを言う。


「売るほうは勿論ですけど、買う事も犯罪になるとはっきり法令化すれば問題は殆ど解決すると思います」


 俺も、一応意見だけは言っておく。


「難しい事は良く解らんが、モンスターを倒してくれるんなら、それが誰でも関係なくないか? 人に危害を加えるようなことがあれば、今までと同じように取り締まればいいだけだと思う」


 颯太と達也がそれぞれの見解を述べる。


「そうだな、税収の安定の為にも【DG】カードの発行を抑制する事はナンセンスだ。逆にカードがあることで、ある程度行動を把握する事もできるし、これは解禁しよう。音羽さんが言った様に、再設置したダンジョンに入る事を規制するだけで問題ないだろう」


「ただし、母国からの許可を貰ってない外国人は別問題だ。DGカード不所持で防衛都市もしくはD特区外での摘発を受けた場合は、理由の如何を問わず、本国に強制送還の措置をとる事になるだろう」


 ◇◆◇◆ 


「颯太、明日の小倉ダンジョンでももう一回【アイテム複製】を試してくれな。俺が思うにマスターから直接複製しても、二回目は一千万ポイントだと思うが、実際に試してみないと解らないからな」


「解った」


「俺は今日手に入れたマスター装備を使って、更に上位のアイテムを作れないか研究してみたいから、今日は早めに抜けるな。みんなはゆっくりして行ってくれ」


 ◇◆◇◆ 


 自室でマスター装備を取り出し、改良をする為に魔導鍛治師のJOBで覚える特技【融合】を使い、武器融合、防具融合をそれぞれ試した。


 武器は思い切ってプルートにマスターソードと、更にヒヒイロカネを追加して、武器融合を行った


【プルート改】:ミソロジーレア(MR)使用者のLVに合わせて成長するレベル×10の攻撃力


「来たーーー、これは凄いぞ。この刀だけで攻撃力が13840もある」


『ミッションクリアです。おめでとうございます。『世界で初めて神話クラスの存在を確認した者』が達成されました。千ポイントが付与されます』


「ミッションクリアも、俺は久しぶりだなー」


 防具はマスターアーマーとマスターブーツは動きが阻害されるからな、俺のコードバンバトルスーツと融合させよう。

 これには、アダマンタインとヒヒイロカネ、更にオリハルコンもあわせる。



【アルティメットバトルスーツ】(MR)使用者のレベルに合わせて成長するレベル×10の防御力と敏捷性


 なんだか俺【D155】マスターと普通に殴り合いで勝てそうな気がしてきた。


 アクセサリーはTBと雪に明日作ってやろうかな。

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