第50話 色々作らなきゃ
十二月二十八日 八時
今日は成田ダンジョンの四十一層からのスタートになる。
【DIT】本部の屋上に集合し、転移門から直接四十一層に突入していく。
敵のレベルは四百を超えてくるので、現状では俺、TB、雪以外では、颯太が何とか倒せるくらいだ。
他のメンバーではまだダメージを与える事すら出来ない。
同一階層にいなければ経験値を分けれないので、全員が守りを固めて後ろについてくる。
先頭はTBと颯太、中段辺りに俺、後方に雪の配置でとっさの事態に対応出来るように進む。
達也が話しかけてきた。
「実際こうして俺たちをレベリングするのは意味があるんだろ? 教えとけよ」
「ぶっちゃけ、俺が楽したいってのが一番の理由だが、まだ力が足らないんだ」
「今の理で足りないのか?」
「恐らくな、今の俺では最終【D155】のマスターの十分の一程度の力も無いと思ってる」
「それは事実なのか? 予想なのか?」
「今のところはまだ予想だ、しかも予想で言うならその先がある。俺の十倍の力を持った存在でさえダンジョン発生現象を止めれてないって事だ。まだまだ全然足りない。俺一人じゃ永遠に辿り着けないかも知れない。だがもし今の俺が百人いるなら何とかなるかもしんねぇだろ。だから手を打ってるって感じだな」
「まぁ俺はとことん付き合う。俺は政治家だがな、本当にこの国が好きで政治やってるんだ。全てを守って見せるぞ」
「達也は発想が暑苦しいな」
五十層を越える頃になると、颯太も攻撃が通らなくなり配置を換えた。
俺が先頭に立ち颯太とTBは中段に下がってもらった。
俺はプルートに光魔法を纏わせた状態で敵を瞬殺しながら、最終階層まで進んだ。
そしてマスターを倒し、入口に戻された。
みんなには悪いが、今はダンジョンコアは討伐完了するとすべて、ナビちゃんに融合してもらっている。
融合すると再設置時にスタンピードのONが設定出来ないが、たまにスキルオーブはドロップする筈だからそれで我慢してもらうしかない。
「さぁ帰ってビール飲むぞ」
◇◆◇◆
十二月二十八日 二十時
今日は、澤田さん、森さん、澤藤さんが来ている。
もちろん颯太と達也と東雲さんは居るけどね!
澤田さんが、まず頼んでおいた件の報告をしてくれた。
「図面が完成したのでお持ちしました。ちょっと相談があるのですが図面を見てお返事下さい。言われたとおりの十階建ての図面と二十階建ての二つの図面があります」
「何かちょっと嫌な予感がするぞ」
と、俺が言うと颯太が説明を始めた。
「理に新たに貸す予定だった土地な、この辺り一体だと最大で二千坪までは都合つくんだ。それでな渥美半島の買戻し金額半額に値切ったし、全部使ってくれ」
「良い事だけじゃねぇだろ?」
「俺たちも、どうせ毎日ここに来てるし、うちの初期メンバー達も元々【D特区】にあった建物を再利用して暮らしてるんだよな。結構古い建物が多かったし、初期メンバーたちには新築マンションを一部屋ずつボーナスで支給しようと思ってよ。俺と達也のこっちにいる時の住居もだが、それをこの二千坪に造ってしまおうと言う発想だ。サポートメンバーとして当初来てもらった二十名と俺と達也の二十二名分だ。プラス4LDKの理が自由に出来る部屋が十部屋、合計で三十二部屋と事務室を五部屋用意した」
「【PU】の部隊は全国に移動する可能性が高いから、現金支給にした」
「俺は別にかまわないが、みんな同じ敷地にすむとか、嫌じゃねぇのかよ?」
「俺達もそれは気になったんだが、全員に確認取ってみたらみんな賛成だったんでな。それで取り敢えず図面見てもらおうって話になった」
「あー了解済みならいいんじゃないか? 自分たちも住むなら設計も気合入ってるだろうし、俺は図面見ても解んないからな、必要なのはスキルに図面を認識させる事だから、それでいいなら資材揃えたら建てるぞ」
「そう言って貰えると助かります。実は既に二十階建てのほうで資材発注して一月八日には全て揃いますので、よろしくお願いします」
「なんかうまい事使われてるよな俺」
澤田さんの話が終わると、澤藤さんが話しかけてきた。
「私も自分の部屋が造ってもらえると思うと興奮しちゃって今から楽しみですよ。私からも少しお願いがあるんですけど、本格的なキャッシュレスに移行させようという国としての計画があってですね【DG】カードとも勿論連動させるんですけど、カードを持っていない場合や、忘れた場合の対応とかを考えると、網膜や指紋や静脈等の個人特定を瞬時に出来るシステムが、レジと連動してる必要性があるんですよね。
今度の北九州特区からは、全ての商売において国が貸し出すレジの使用を義務付けて、現金取引は基本無くします。
その制度が実用化すれば脱税もほぼ防げますし、キャッシュレスシステムに対応するレジを魔導具で造れないかと思って相談したいんです」
「話が難しすぎるぞ…… 俺の理解力の斜め上だ。だが、ダンジョンシステムを使うなら、指紋や網膜じゃなくて、DNAを認識して個人を特定するほうがいいと思うぞ。再生系統のポーションなんかは全部DNA情報から、最適化状態で再生してる筈だから、それを魔導具に組み込むのは可能だと思う」
「ちゃんと一番大事なところは解ってるじゃないですか。そういう答えを望んでました。今の意見を参考に機能を組み込んだレジを考えてみますから、案が纏まったら一度作って貰ってもいいですか?」
「作るのはいいけど俺が内容をどこまで理解できるかだな、俺が理解できない部分は機能が実装されないと思うからな」
「レジって様々な業態で、POSシステムやワイヤレスオーダーシステムと連動した物などがあるので、専門のメーカーにも意見を伺って、機能拡張や汎用性を考えなくちゃいけないから、結構大変なんですよね。大体の基本設計が出来上がったら、一度説明させて頂きますので時間を作っていただけますか?」
「暇な時にならな」
沢藤さんの話が終わると、待ち構えたように森さんが話し掛けて来た。
「今度は私の番ですね、私は翻訳機のお陰で今は世界中の言語が理解できて凄く満足してるんですけど、今【D特区】の中では世界中から研究者たちが集まって、毎日様々な会議が行われているんですが、翻訳機の絶対数が不足しているんですよね。今の翻訳機ですと島長官にお願いして複製すると一台当たりが五千万円掛かってしまうので、勿論それだけの価値はあるのも解るんですが、せめてこの特区の中だけでももっと台数を増やす事で、意志の疎通をよりスムーズに行えないかと思ってですね、岩崎さんなら、もう少し安く作れないかとのご相談です」
「あー翻訳機は向こうで知り合った奴が世界制覇を目指したからさ。大量に在庫あるぞ。俺はスキルで取ったし、もう使わないから取り敢えずあるだけ預けるぞ。在庫が百二十台ほどあったはずだ。レンタルでも買取でも好きにしてくれ」
俺の話を聞いて、颯太が嬉しそうに返事をした。
「理、何か俺お前が聖徳太子に見えてきたぞ。翻訳機は買い取らせてくれ、一台一千万で頼む」
「あーそれでいいぞ。でもお金使う暇なんか無いから、結局同じなんだがな」
「鹿内さんじゃないけど、本気で愛人にして欲しいですよ」と、森さんが言い出した。
「勿論却下の方向で」
森さん少し残念そうにしてるぜ……本気で言ってるのかな?
みんなの要望を一通り聞くと、東雲さんが話し掛けて来た。
「私もお願いしちゃっていいですか?」
「愛人ねたは却下な」
「私は正妻しか狙ってないですし、私がお願いしたいのは装備です。今、剣神JOBで取得できる特技で飛ぶ斬撃『飛燕』って言う特技を覚えたんですが、それに相性のいい刀が欲しいんです。今の直刀Rは強さ重視で、『飛燕』のようなスピード重視の特技との相性を考えるとそろそろランクアップさせたいと思って、金額はいくら掛かってもかまいません。一生かけても払いますから」
「一生かけてとか発言が怖いぞ? 刀は確かに東雲さんだともう物足りないだろうな。それは朝までに作っとく、恐らく今ならURで作れる」
その話を聞いて颯太も喰いついて来た。
「俺も欲しい」
「発言が小学生みたいになってるぞ颯太? 颯太のはついでに造っとくが無料じゃないぞ? 勇者だし刀より剣の方が合いそうだな。達也は何が良い?」
「俺はヒュベリオンみたいなのがいいな」
「じゃぁこれ使っとけ」
ヒュベリオンを渡した。
「これ金額にしたら空母一隻に相当するんだぞ? いいのか」
「武器は使って何ぼだよ、ただしそれ使いこなすのは練習いるぞ? イメージがすべてだ」
「イメージプレーは任せろ、俺はコブ○に憧れてたからばっちりだ」
「コ○ラのイメージならばっちりだな、慣れれば曲射もいけるはずだ」
◇◆◇◆
十二月二十九日 七時
久しぶりに鍛治したな。
俺には似合わないと思ってたタイプの刀だけど、東雲さんならぴったりだろこれ、刀の名前は本人に任せるか。
一振りの美しい曲線と刃紋を持つ細身の刀、沖田総司の菊一文字をイメージしたUR品だ。
それともう一振り。
あらゆる物を切り伏せる力強さを持つURの大剣だ。
刀身は赤く輝く。
これも颯太に名前は任せよう。
きっと厨二病全開の名前付けるぞ。
さぁ今日は【D68】つくばダンジョンだ。今日は四十層まで颯太と達也と東雲さんの三人でやってもらうかな。
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