episode3
「なあ、何かめちゃくちゃ人が来るんだけど、気のせいか?」
僕は彼に呼びかける。
「いやぁばれた?だって君、面白いんだもん。
ワタワタして怒鳴り散らして、相手のことを考えているようで、自分を救っているような錯覚に目を眩ませていて、それすらも自覚している。
なんでこんな面白い性格が出来上がったのか、是非とも知りたいところだ」
クスクスと人を喰ったように笑いながら、彼は言ってのける。
「俺はお前の玩具じゃない!!」
そう言うと、ポカンとして、本当にわからない、という顔をして、彼は口を開く。
「そりゃそうだよ。僕と君とは違うんだから」
そして、面白そうに顔を歪めて意地の悪いそれで笑って見せた。
「君自身が、僕の玩具だとおもってしまっただけなんだよ」
いやぁ面白いな! と叫ぶように小屋内に響かせる。
「ねぇ、ここってお酒ないの?」
上機嫌な彼のテンションが下がらないように、是非とも出したかったが……
「生憎、僕はあれが好きではないもので」
「あれは、好きとか嫌いとかそう言うのではなしに飲みたくなるものだと思うんだけどなぁ」
ニマニマと僕の表情を眺める。
彼の言う通りだった。
「僕のこと、どれくらい知っているんだ?」
「何も知らないよ」
即答する彼に、むしろ僕が驚いた。
「だって、君が今まで巡ってきたところや出来事を見直したところで、気持ちは見られないし、同じ気持ちにはなれないだろ?」
それもそうだ、とやたら納得してしまった。
「んーここに人が沢山くるようになった、ってのはやっぱ良いことなんだろうね。反省してる人多いみたいだし」
あっそうだ、と言って、彼はとんでもないことを思い出す。
「あっ、そういや言ってなかったね。ここに来る人、みんな死んでるわけじゃないから、優しくしてやってね?」
……は?
その言葉に絶句する。
「いやお前早く言えよ」
思わずタメ口が出るが、それどころではない。
「いや、だってさ、それが分かったところで何か変わるのかい?」
そう問われて、大きく変わる、と言おうとして、言葉が詰まった。
たしかに、ここで僕ができることといったら、生きていても死んでいても同じだな。
一種の諦めと共に吐き出されたため息を紅茶に入れて飲むように、彼は音も立てずに美味しそうに紅茶を飲み干した。
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