episode2

 蝋燭にシャンデリア、人の本質と向き合うにはちょうどいい静かすぎず、それでも落ち着いた雰囲気を醸し出す部屋。


 僕は感動を胸に仕舞い込み、奥の厨房へと足を進める。

 奥には、沢山の死体が眠っていた。


「君が、持ってきてくれた人達だよ」

 彼が心底嬉しそうに、はしゃいだ声を出す。


 僕は、中途半端に善な、人間が好きで、嫌いでどうしようもなくなったところで、目覚めた。

 そうか、全員いなくなれば、こんなに苦しい思いをせずに済む。そう考えた僕は、早速楽しそうに口をにっこりさせて、一部の躊躇もなく、身近にいたものから、切り刻んでいった。


 悲鳴に飲み込まれて、僕は前も後ろも分からなくなり、それでもなんとなく楽しくなって、ボロボロになる自分も可笑しくて、ずっと笑っていた。そしたら、これまでの人生で聞いたこともないような鋭い音が、パンッという音が聞こえて、しばらく暴れにくくなり、それでも暴れて、身体が動かなくなって、初めて、自分は何がしたかったのだろう、と、そう考えてしまったのだ。


 僕は、何がしたかったんだろう……人間に期待していたのか? 人間を全部消せば、僕は楽しく生きられるのか? でも、僕だって人間なのだから、僕がいるならここに止まってちゃいけないだろ。

 殺さないと。

 無言でナイフを引き抜き、胸に突き立てた。

 あれ? 何故血が出ない? なにがどうなって……

 彼をじっとみて、僕は少しだけ理屈が分かった気がした。


「ここって、地獄と呼ばれるところですか?」

 一瞬だけ呆けた顔をした後、彼はゲラゲラと笑い転げた。

「はぁっ、はーーー。やっぱり君、可笑しく狂ってるね。面白い。教えてあげるよ」

 僕に近づいて、顔を鷲掴みにする。

 退けようと反射的に抵抗したが、彼の手はガッチリと固定したまま、僕の中に、入っていった。

 なんだこれ? 大勢の人が立ち並んで、何かの実を収穫してるのか? なんで?

「ここは、天国なのか?」

 彼はふふん、と笑って言った。


「別に呼び方なんてどうでもいいけどさ、ちょっと君、ここの門番やってくれないかな? この森にやってきたものは、森からあまり出ちゃいけないんだ。でも人手が足りなくてね」


「……この小屋にいてもいいなら、それと、ティーセットを補充し続けてくれるなら、やらせてもらう」


 即答するかと思いきや、やっぱり君は冷酷だね。彼はそうぼやいて、僕の肩に手を乗せる。


「まあ、頑張ろうね? おかしなことをしたら、僕が食ってやるからな?」

 あと、タメでいいからね、と嬉しそうに言う彼に、僕は答える。


「わかった」

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