20人目の来客

「こーんにーちは!」


 元気よく、バタンと音を立てて開く扉。

 友人は、元気よく小屋に入る。


「また仕入れてきたよ!噂話!」



「今度はどんな物語なのですか」



 やーっと興味持ってくれたね、と嬉しそうにケタケタ笑って、友人は話し出した。



「今日の話は、小さな男の子と、その親の話さ!


 男の子は、アルビノとして産まれた。


 その姿は知識のない町人たちにとって、不気味なもので、生まれた時から『悪魔の子』だと言われ、石を投げられた。


 さらに日光を浴びると彼は真っ赤になって腫れてしまう。色素が薄いからなんだけど、『吸血鬼』とか言われて、同い年の子にも虐められた。



 見かねた親は、家の中に男の子を隠した。


 安全な場所、にね。



 そして、男の子には『あなたは体が弱いから、外に出てはいけない』と言い聞かせて、寂しそうにしている男の子を慰めようと、大変手をかけていた。


 でも周りの者から責め立てられ、挙句は『何で子供を家に閉じ込めておくんだ、虐待だ』などと言われ、



親2人の心は次第に崩れていった。



 母は食べ物で心を癒し、父は母に当たることで発散してしまった。




 それを男の子は見ていたんだね。




 病弱な自分のせいだと、そう思ってしまった。


 そして、病弱だと思い込み続けた事と、外に出られない環境のせいで、



本当に病気になってしまった。



 咳が止まらなくなっても、親は自分の事で精一杯で、気付けず、男の子は、


もう自分なんかいなくなってしまえばいいんだと、そう思ってしまった。


 そして家出した。今も捜索は続いているみたいだよ」



 そう言って、僕の出した紅茶を一口飲む。



「ねえ、どう思った?」



 ギョロリと目を向けてくる彼に、僕は表情を変えることは出来ない。



「所詮他人の話なので、特別何とも思いませんね」



 彼はジッと僕の瞳を覗き、彼の睫毛の長さが見えるほど近付いた。



「いやあ、本当は僕はさ


『彼は自分で毒を飲んでいた』


とか


『実は親が毒をもっていた』


とかだと、あの人達を見たときに、そう思ってしまったんだけど、


君はどうだったかなと思ってねえ」



 にこりと彼を見つめて、ゆっくり僕は言う。



「紅茶が冷めてしまいましたね。入れ直してきます」







「待て」




 ギッと僕の体が止まる。






「答えろ。正直に」



 彼の方を向かされ、仕方なく、唱える。






「僕は何でも構わないと思いましたよ。

あの人達がどうあっても、


僕は変わりませんから」





 彼の顔に、豪華な花が咲く。



「そうかそうか!!いやあ今日の紅茶は美味しいなあ!」



 椅子に座って言った。



「もう一杯いただけないかな」



 あまりに勝手な彼に、それでも僕は、笑って言う。






「少々お待ち下さい。今、お入れします」

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