12人目の来客

「こんばんは!今日は賑やかだったみたいだね」


 扉を開けて入ってきた友人は、戯けた調子で僕をにっこり見つめた。


「お茶を入れてきます」

「うん」


 ご機嫌そうに言って席に着き、バタバタ足を揺り動かす。


「そういえば、また面白いの仕入れてきたよ」


 聞きたい?とニヤついた顔で僕に問う。


 僕が何かを返す間も無く、男は語り始める。


「今日の話は、ある強欲な親子の話さ!

父が欲しがったものは、娘からの愛、

娘が欲しがったのは、何と愚かな、豪華な服や調度品だ!」


 席を立って、部屋の中をクルクル回りながら、機嫌良く話す。


「貴族の父は妻を亡くし、


娘の愛が欲しくて欲しくて堪らなくなり、

何でも買い与えた。

次第にエスカレートしていって、


ついには溢れるほどあったお金を使い果たした。


娘の愛が離れていってしまうことを恐れた男は、

借金をして、借金をして、借金をした。


ついに首が回らなくなって差し押さえをくらいそうになったが、それをされると娘を失いかねないと考えた男は抵抗した。

人生で初めて声を荒げた。

娘のため、そして自分のために。


借金取りのヤクザは、男の足を撃った。娘を売りに出すようにと指示されていたため、嫌々ながら、ヤクザの男は娘を探した。そのヤクザは一つミスをした。

父親を殺さなかったことだ。

父親は足を引き摺って猟銃を手に、その男を撃ち殺した。

父親は人生をかけた必死の嘘をついた。

あの男は盗人で、もう直ぐ仲間が来るから逃げろ、と。

優しく美しい娘の愛を、永遠のものにするために」


 友人はピタリと立ち止まって、仕上げとばかりに言った。


「強欲な娘は、

本質を見抜いていたのかどうだか、

最後まで誰にも分からないだろうね」

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