11人目の客人

「ごめんくださいまし!!」


 転がり込んできたのは、

派手なフリルの付いたドレスを着た女。


 僕は、一礼をして言った。


「こんばんは。お茶はいかがですか」


 女性は反射的に、

いただくわ、と言って、席に優雅に座った。


 僕が準備をしようとすると、

ハッとしたように、僕の服の裾に縋り付く。


「あの!父がここに来ませんでしたか!?」


 残念そうに首を横に振る僕をみて、


立ち上がりかけていた彼女の身体は、深く椅子に沈み込んだ。


 顔を覆い隠してすすり泣く彼女は、しばらくして僕が紅茶を用意すると、少し口に含んで、語り出した。


「私の父は、それはそれは優しい人なんです」


なのに何であんなことに、

と言って涙を部屋に落としては、また話し出す。


「昨夜、優しい父が声を荒げているのを聞いて、玄関に走って行ったんです。


そしたら大きな、何かが爆発するような音が聞こえたの。


怖くて仕方がなかったから、私、引き返して自分の部屋に戻ったわ。

そしたら階段を登る音が聞こえて……父のものの筈がない乱暴な音が近付いてきて、

ドアを一つ一つ開ける音が聞こえた。


わたしの部屋に明かりを差し込むと、ニヤリと笑った下衆な男の顔が見えたの。


その時、男の後ろに父が見えて、

家にあった猟銃を構えていた父は、


男を撃った」


 また、紅茶を必死に口に含んで、息をつくと、口を開ける。


「父は正当な行為を行なったのよ。私を守るために。

 なのに父は私に言ったわ。

 あいつは盗人で、仲間がいる、と。私に遠くに逃げろ、

と言ったの」


 父の迫力に怯えて思わず逃げてしまったけど、父がいないと私は生きられないの、

とホロホロ涙を流す女性に、

僕は微笑んで、言葉をかけた。


「何故あなたのお父様は、その男には仲間がいる、と知っていたのでしょうかね」


 女ははっと顔を上げて、言葉を吐こうとするが、


僕の指に遮られた。


 女の口に当てた人差し指を優雅に引き寄せ、僕は言う。



「あなたは、お父様の何を知っているのでしょう」



 女性は立ち上がって、逃げるようにドレスを靡かせながら、


森の中へ、駆けて行った。



「またのお越しを」


 僕は森に向かって一礼した。

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