7人目の客人

「おい!ここに小さな女の子が来なかったか!?」


 今度こそ扉が壊れる、と僕が思う勢いで突入してきた、ボロ服を着た無骨な男。


 彼の髪は水々しくは無いものの、少女の髪と瓜二つだった。


 無言で自分を通り過ぎて扉へ向かう僕に、

何故か男は言葉を止めた。


 僕は、扉を丁寧に調べ、壊れていない事を見て取ると、安堵の表情を浮かべて、消してみせた。


「こんにちは。いいお天気ですね」


 僕の少し上にある顔に向かって、笑顔で喋りかける。


「お茶でもいかがでしょう」


 男は怒りを表面にまた浮かべて、短い髪を振り乱す。


「だから!女の子が来なかったかって聞いてるだろ!答えろ!俺の娘なんだ!」


 僕があっさり首を横に二回振ると、

男性はすぐさま扉へ向かった。


「どこへ行くんです?」


 僕が聞くと、今度こそ全力で、男は怒りを叩きつける。


「娘を探しに行くに決まってるだろ!!」


「どうして?」


 男の顔に、怒りと困惑の色が、混ざり合う。


 言葉を必死になって探しているから、僕は代わりに、勝手に、無造作に、拾い上げてやった。


「彼女は望んでいないのに?」


 来た時とはうって変わって静かに、吹けば倒れそうなほど憔悴しきった男。

 素直に椅子に座って紅茶を飲む男に、僕はにこやかな顔を向けていた。そして、僕も紅茶を飲む。この後、どうするつもりなのですか?


森の中に吸い込まれると、呟いた。


「ああ良かった。修理はもう、時間が足りなくなる」


 振り返り、新品のように光るティーセットを見て、今日1番のため息をついて顔を歪ませた。


「準備する間も与えないとは、何て無礼な方でしょう」

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