6人目(?)の客人

「おや?」

 僕は立ち上がり、扉に手をかける。


 力を入れて、外の空気を取り入れると、そこには、小さな小さな、客人がいた。

「こんにちは。今ちょうど新鮮な野菜があるのです。お出ししましょう」

 

 その言葉を理解したのか、理解してないのか、どうでもいい。僕は奥へと急いだ。


 小気味の良い音で部屋に入ってきたのは、灰を被ったような毛色の野うさぎだった。ところどころふさふさしていただろう毛は固まって、ごわごわに固まり始めていた。


 僕が準備を始めると同時に、部屋の中を落ち着きなく跳ね回り始める。

 物にぶつかり、大きな音が部屋に響いて

止まなかった。


「お待たせしました」

 僕が水々しいにんじんを乗せた皿を手に

戻るが、そこには可愛いうさぎの、黒い足跡だけが残っていた。タンスは倒れ、テーブルの上のものは下に落ちて粉々になっていた。

 僕が部屋の中を見渡すと、カーテンの布がモゾモゾと勢いよく動いて、キーキー泣き声を上げていた。

 カーテンを退けてやると、うさぎは折れて垂れ下がる耳を引きずり、1人でいたくない、と叫び散らしているように、色々な場所に突進し続ける。

 僕はこれ以上部屋を荒らされるのはまずいと思い、うさぎを持ち上げる。

 ギィィィ!とうさぎは僕の手を噛みちぎるように前歯に力を込める。

 僕は逆の左手で、うさぎの首根っこを容赦なく掴んだ。

 またしても暴れるうさぎを破片散らばる床に押しつける。

 しばらくして、うさぎの興奮が冷めていくと、僕は首を離してやる。

 そして、扉を開けた。うさぎが通った後には、くっきりと赤黒い足跡が残っていた。


 とんでもないスピードでかけていくうさぎを見て、僕はため息をひとつ吐き、窓へと向かう。うさぎに出そうと思っていたにんじんを無造作に放ると、たちまちカラスの食事へと変わった。


「何で食べないんですかねえ」


 不思議を表す僕の声に、賛成の声も、反対の声も、無いに決まっていた。

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