5人目の客人

「こんにちは」


 消え入りそうな声と共に入ってきたのは、うら若き乙女。


「あの……?」


 光る艶々の、金の髪色に惹きつけられる僕に、少女は堪らず赤い頭巾で包み込んで隠してしまった。

 残念だと少し笑って、気を取り直し、僕は声をかける。

「直ちにお茶を入れますので、そこにお掛けくださいませ」


 何故か目を大きく開けた少女が椅子に収まるのも見ずに、僕は奥へと歩き出す。

 何故すぐ座らないのだろうか、と不思議な問題を考えつつ、準備をする。


 そわそわと落ち着きなく待つ少女。

 それに重なるは森の木の囁き。



「!?」


 窓に枝が叩きつけられ、糸をピンと張るように気を張っていた少女は飛び上がった。


「どうかなさいましたか」


 外のことなど何も知らないかのように、静かに笑って、僕はティーセットを並べていく。


 カチャカチャと重なる音に被せるように、

少女の緊張の声が響く。


「あの!私は今、ある男に追われているの!お願いします!助けて……」

 カチャリと音がして、少女が目を見張る。


「紅茶をどうぞ」


 全く慌てもしてくれない僕に、少女は一瞬顔を歪ませ、純粋以外の色を浮かべる。


「ねえ!助けてくれたら、薪拾いでも料理でも、何でもします!だから……」

 お願い……と呟く彼女を見て、僕は少女以上に純粋な疑問を持った。少し首を傾げる。


「手は足りていますよ?」

 悲しみを隠しもしない彼女は目を覆っていて、僕の接近に気づかないようだった。


「料理に使う、手も、足りています。」


「いや、こないで!!」

 必死になって扉を開けて、彼女は去っていった。後には少女の残り香だけがあった。


 僕は窓の外を見て、呟く。


「まだ嵐には遠そうですね」

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