8人目の来客

閲覧注意。

 ホラーに耐性の無い方は、どうか避けてお通りくださいますよう、お願い申し上げます。







「やっほー。元気に1人ぼっちしてたかい?」


「いらっしゃい。そこへどうぞ」


 いつも通りに、奥へ消える僕に、男はいつも通りに、勝手に喋り続ける。


「今日も噂、届けにきたよ。

ある少女と父親、そしてグレーの野うさぎの話だって」


 軽く言葉を紡ぎ出す。


「あるところに、1人の心優しい少女と、その父親がいました。


父親は狩りをして生計を立てていました。


それを心優しい少女は、


心優しすぎた少女は、


見逃せませんでした」



「それで、どうなったんだ」


いつも通りに合いの手を入れる。


「少女はある日、

父親の罠にかかった、

怪我をしたうさぎを森へ逃しました。


父親は必死に少女を説得しようとしました」


 先を焦らす男に、今度は無言を返すと、男はつまらなそうにぶつぶつ言いながら、

僕の近くから、席へ戻った。


「何故なら、

少女は肉を全く食べなくなっていたからです。

少女は、肉が動物たちの命と引き換えだと知ると、


食べる事を拒否し出しました。


 人間にとって、肉は、生きるために必要なものです。

 それに、野菜も中々手に入らない土地に住んでいた少女は、

ガリガリに痩せていきました。」


 確かに彼女は髪こそ綺麗だったが、そこに栄養を吸われたかのように痩せていたな、


と僕はふと思い返す。


「そして、

救われた子うさぎは、

母のもとへ帰ろうと、道を探しましたとさ」


 グイと顔を近付け、

男は僕に言う。


 心底嬉しそうに。


「今日の話、どうだった?」



 それに僕が返した言葉は、皆もうご存知の通りだろう。


「紅茶をどうぞ」

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