3人目(?)の客人
「失礼する」
多くの人を招き入れたために狭くなった部屋。僕は慌てて準備を進めた。
ティーセットが足りない、と気づき、大急ぎで別室へと走ろうとすると、呼び止められた。
「休みに立ち寄ったわけではないので必要ない。気位が高そうな夫婦を見かけなかったか」
僕が首をゆっくり横に振ると、男はどっと疲れた表情になり、
他の者たちは立ったまま、それを眺めていた。
「どこからいらっしゃったのですか」
紅茶を注ぎながら僕が聞くと、男はくたびれた服で、くたびれた顔を乱暴に拭きながら答えた。
「俺たちはここから1番近い街から来たんだ」
「というと、現在戦争中の、あの街ですか」
僕はそう言った後、少し笑いながら付け加える。
「何か残ったものは有りましたか。」
立ったまま抜け殻のようになっていた人達が、一斉に殺気立ったのを感じ、
僕はお辞儀をした。
「生きてらっしゃったのですね」
満面の笑みでそう言うと、何故か怯んだ人々の前で、もう一度お辞儀をした。
「ティーセットをお断りなされたので、死んでいるものかと」
にっこりと笑って、続ける。
「残りを準備しますので少々お待ちくださいね。」
準備を終えて戻ると、人々の姿は無かった。
僕は当たり前のようにガタリと窓を開け、
注いできた紅茶を全て、草木に与えた。
熱い湯を浴びて少し萎れた草木をみて、
「熱すぎるものは、毒となることが多いですよね」
と、独言、首をゆっくり左右に振って、次の来客に向けて、準備を始めた。
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