後日談と、今日という日まで(あとがき?)
バイトを辞めたその後、卒業試験の範囲が縮小したことや、バイトを辞めて勉強する時間ができたことにより卒業試験は無事に合格できていた。何回かダブっていたが、無事に大卒という肩書を手に入れることが出来た。
その年の国家試験を受けることは決めていたが、バイトでの出来事や、もともと私自身の勉強不足もあったりという事で保険をかけることになった。
それが登録販売者試験である、この資格は簡単に言えば薬剤師のランク下の資格である。
難易度は薬剤師試験よりはるかに簡単で、薬学部に通っていた私は無勉強で難なく合格していた。
だが本命である国家試験の方はとてもじゃないが歯が立たなかった。
もともと勉強不足もあったが、そんな精神状態で受かる試験ではなかったし、近年は難化傾向にあるという事もさらに追い打ちになってしまった。
大学を卒業後、薬剤師国家試験の結果が出るまで4月ほどは何もできなかったが、そこから私は就職活動を始めた。
奨学金を借りていたから、その返済が始まったのだ。
決して裕福とは言えない家庭環境の中、また一年試験の為に勉強だけをすると言ったことは出来なかった、予備校に通うためのお金もない我が家では、働く以外の選択肢がなかった。
月々1万5千円ずつ引かれる借金は、自分が想像していた以上に厳しいもので、早く就職して正社員になれば楽になると考えた。
大学は卒業できたので、試験へのチャンスだけは何度でも挑戦できる、だから落ち着いてからまた再挑戦することもできるからだ。
何しろその時の私の貯金は0円だった、多少は自由に使えるお金として給料から幾らかは自由なお金を貰っていたが、ほぼ全額消えていた。その位微々たる金額しか持ってなかったのだ。備えがないから蓄えなければならなかった。
そこにコロナが発生してしまったのだ。
泣きっ面に蜂、いやもはや剣山である。
最初はよくわからない病気だったが、私も医療系の大学出の人間、自分で多少調べるうちにとてもじゃないがただの風邪などではないことなどすぐにわかった。
だけどただの大卒の人間では、社会にその影響力がどう出るのかまでは全く予想できなかった。
正社員の採用枠は狭まってしまった。元より複数回ダブってしまっている私では、現役ストレートで卒業したほかの大学生に敵うわけもなく、私はほかにコネなどの手段も無かったので、近所のドラッグストアのパートに応募するしか仕事を見つける手段が無かった。
他の業種に挑戦するには、大学で勉強したことが余りにも役に立たなかった。
そして何よりも、頭の中に今まで勉強したことがちらつくのだ。
6年間という時間が、日常生活にちらちらと顔をだしてくるからでこそ、他の業種は選べないだろうという確信があった。
例えば成分の名前が出てくれば、それが殺虫成分だとか、保存剤だとか出てくるし。
一時期表面活性剤が危ないなんてデマが流れていた時は、石鹸のようなもんじゃねえかと、つまり日常に関連したことが余りにも多い。
そこで他の業種を選べば、一生後悔するような、そんな強烈な予感がしていたのだった。
だからドラッグストアのパートを選んだのもある、いや、選ばざるを得なかったのかもしれない。
そしていま現在、一か月務めたところである。
今までのバイトの事もあってか、どんな環境なのか恐る恐るだったが、いままでが異世界だったと言わんばりにその環境は良いものだった。
客も店員も皆いい人ばかりで、ここが天国かと割と本気で思っている。
一日5時間程度で、入ってくる金額も微々たるものだがそこから正社員登用の道もある。
いまは長時間パートへの変更も考えているし、同じパートの人から推してもらってもいる。
それに私はまだ薬剤師国家試験の挑戦権だけはもち続けているから、その道に本気で挑めれば将来が全く暗いというわけではない。
なんだかんだとこの世界は真面目に生きていれば道が開けるんだと分かったからでこそ、あのバイトの経験で腐ってしまうのは駄目だなと前を向いて頑張っている。
こんな大変な時期だからでこそ、私は諦めないで前を向いて欲しいと思っている。
世の中こんな大変な目に合っても生きている人間だっているから、諦めないでほしい、そんな思いで私はこれを書いた。
読んでくださった方がた、ありがとうございました。
そして、頑張りましょう一緒に。
パート戦士のバイト供養話 @ie_kaze
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます