ステップを踏む
ステップを練習している。ずっと昔からだ。もしかしたら生まれる前からかも知れない。ステップは僕が生きるにとって、何よりも大事なことで、それを習得することに僕はどんな犠牲を払うことをいとわなかった。けれどもまだ理想のステップは踏めないでいる。こんなにも練習しているのに。僕はステップを踏めないでいる。
僕が求めているものは遙か高みにあり、それに比べて僕の踏み込みはあまりにも貧弱で、何もかも足りていないことが自分でも痛いほどわかった。それでも僕は一人でステップの練習をしている。ずっと、ずっと。踏み出した足が動かなくなるまで、続けるのだろう。僕の心臓が止まるまで、続くのだろう。もしかしたら僕の命が潰えても、それは続くのだろう。ステップを踏む。
楽しさが欠けているのだろう。喜びが欠けているのだろう。他の人が軽々とステップをこなすのを見て僕は思う。なんて楽しそうなんだろう。なんて嬉しそうに踏むんだろう。それに引き替え僕のステップは苦渋と苦悩に満ちている。そしてそれを隠そうともしない。惨めで矮小なステップ。小さく刻む。
伸びやかに生きたい。軽やかに生きたい。それができなくて悩んでいる。そんな僕にとってステップは救いだった。ステップさえ踏んでいれば伸びやかに見える。軽やかに見える。だろう。そう思っていたのに、人とはやっぱり違うようだ。猿真似は容易く見破られてしまう。けれども僕はステップにあこがれて。今でもこうしてステップを踏む。小さく、小さく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます