第11 話 7日前
7日ほど使徒男にコンタクトしていない。
今までにないほど(爆)の発動準備に集中しているからだ。
宗教解散の啓示を前に面白い仕掛けを作るための作業に勤しんでいる。肉眼で視認できる地球上のそれとは桁違いの集中力を必要としているので、爆心地にある施設に籠っているのだ。
最初のキッカケとなる(爆)を慎重に起こさないと、宗教解散計画は失敗してすべてが無駄になる。使徒男を使う実験も佳境を迎えている事で失敗はしたくない……などの人間じみた感情が湧いてくるのは、(爆)が新たな段階に到達し、湧きだした疑問が言語化しないまま、何らかの形を形成しだして疼きみたいなモノを精神に流し込んでくるからだろうか?
疑問は言語化できない、宇宙があり、地球があり、人が生きるためのツールとしての言語には到底生み出せないものがこの次元には存在するのかもしれない。
本当の正義や悪を説明しようとすると疑問がわき出してしまうのに似ているし証明できる人間もいない。自分自身を客観的に意識することで自分の存在に疑問を持てる人間はそれに気づいているのかもしれない。
親会社のコネクションを使用して天体の動きを認識する作業を1年前からはじめている。座標通りの(爆)を発生させる作業のため数億円を投じ作り出した装置は、人間が中央の座席に座りその一部として機能する様に設計されていた。
別の場所にある施設で作業するオペレーターにはモニターを通じて指示を出す。
数百人のオペレーターは何をしているのか理解しないまま指示に従い作業をしている。やってる事が宇宙の観測とわかっているのはごく一部だけで厳重なセキュリティーで情報は守られていた。
子会社に宇宙事業部を設立させ航空事業禁止になった空にしれっとロケットを打ち上げて宇宙望遠鏡を軌道に乗せたのは報道されていない。
軌道上に浮かぶ巨大な(目)に直接リンクしてVRと同じ様な装置でその目を自分の目とする作業は著しく精神をすり減らすことに気が付く。すり減った部分から疲労と同時に人間らしいモノが見え隠れしていやな気分になった。
ゲーム感覚で作業をこなすオペレーターに細かく指示を出しながら常に最新の情報を条件に加えていく。
一人のオペレーターから情報を受け取った後思いもよらない追加情報が来る。
これは天文観測ですか?しかもピンポイントで何かを狙っている?隕石でもとらえようとしてます?(笑)などとメッセージが届いた。
どの分野にも勘のいい人間はいる。
モニターに若い女が映し出されている。
まあ良いことにしよう、この啓示がうまくいけば時間もできるのでこの勘の良いオペレーターを観察対象に加えることにしようか。
この作業が終われば宇宙の目は地球に向けられる。その時役に立つ人材として登録する。
いくつかの作業手順を終え、最終確認を済ませるとカウントダウンが始まり、時間差を計算されたドンピシャのタイミングで目標に小さな(爆)発生させ、それが予想通りに軌道を変えた。
もう一つの目標にも(爆)を使いふたつの目標は仲良く同じ方向に流れ出した。
半径100mほどの二つの隕石は仲良く縦に並んで軌道を進む、到達時間の誤差は28時間程度、一撃目のインパクトが冷めないうちに次のインパクトが到達する仕組みだ。
誰の思惑か知らないが都合よく地球近傍小惑星が発見できた。世界はまだ気付いてはいない、笑えるほど丁度いいタイミングで宗教解散を発表できるだろう。
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