第9話 使徒
ポツポツと立ち止まり使徒男の様子を伺うモノが現れた。
世界に悪はいらない、この神の力が悪を駆逐するだろう。
神は従うモノには安寧をくれると仰った。
安寧?どこで聞いたのか疑問だが、面白いので警察署を圧縮して消し去った。
この行為が使徒男の行動の後押しになった。
1人の老婆が跪いた。
神様、私は悪を憎み従います。
嘘をついた悪の手先である警察は消え去った。
神に感謝します。
使徒男が叫ぶと次々に跪くものが現れた。マスコミはその様子を一部始終ライブ中継している。
すぐにネットの掲示板にはスレッドが立ち上がり神を信じようとする者と人殺しは悪の所業と言うものとに分かれ炎上した。
使徒男は神を崇める老婆の家に招かれ手厚い扱いを受ける事になった。
老婆の家の周りには信者となったモノ達が使徒男を守る様にテントを張り人間のバリケードを築いて警察が手出しできない様にしている。
警察も恐れている様子で出頭を促す通知をしただけで下手な手出しはしていない様だ。
このことは世界中のニュースとなり世界中の組織が使徒男に注目している。
大国の諜報機関は使徒男に接触しようと試みるが常態化するまで(爆)を使いエージェントを退けた。
諜報機関は秘密を作り出そうとする組織だ。
そんなつまらない事はもうしなくていい時代になった。
どうせ隠したところで全ての情報は大した意味を持つ事はない、宇宙人が存在してもその情報が盛り上がるのはせいぜいひと月がいいところだ。
誰がそれに価値を見出すのか理解できない。
人間とはその程度の存在……価値ある疑問への誘いは何もない。
少し苦しくなった。
無能な政府を横目にテレビ局が接触を図ってきたので使徒男に囁き、インタビューを受ける様に促した。
全国ネットの在京民放テレビ局のインタビューを受ける。
すぐに夜のニュースに間に合うようにキャスターがやってっ来た。
部屋に入るのはカメラと照明、それに自信に満ちた女キャスターの3人だ。
爆破の犯人を神の使いと崇められ権力すら手出しできない状況でマスコミは何を聞こうとするのか興味があった。
あの環境活動家の少年を世界に売り出したのもマスコミだ。
世界中のマスコミがこぞって少年のニュースを取り上げてある意味神格化していた状況は使徒男と似ている。
少年は言葉だけを発信した。
発信力の無い虐められるだけの男は武器を手にして発言力を得た。
同じ生物でも違うモノだ。
言葉だけのモノは世界の変質により存在の意味をなくし武器はいつの時代でも発言力を高めてそこにある。
それならいっそ世界を(爆)で支配してみればこの世界に対する疑問は全てを飛び越え自由なものへと変わり、全てが解決するのかも知れない。
インタビューはつまらない質問と、ひたすら神への忠誠のみを饒舌に語る使徒男の攻防となっていた。
休憩を取らせ使徒男に世界の支配について吹き込んだ。
使徒男は神の代理としてこの世界の支配者になると伝えると、素晴らしい事ですねと涙を流した。
インタビュー再開と同時にニュースキャスターは怯えた表情になる。
あなた達はもう質問しなくてもいい私の言葉だけを世界に伝えるのです。
神の啓示を世界に発信する様に命じた。
キャスターの持っていたマイクを圧縮して消し去るとさらに逃げ場を失った動物のように泣き出した。
ニュースはすぐに世界を駆け巡り惑星の空気の色が変わってしまった様に世界中の国家という利権団体が反応した。
報道から2日後ミサイル発射警報が響く。
共産主義の大国が使徒男のいるこの国の首都に核ミサイルを打ち込んできた。
20発の弾道ミサイルは上空で迎え撃つことにした。
(爆)による空中浮遊は完成度を増し戦闘機並みの速さで飛行できる様になっていた。
ミサイルを目視して圧縮する。
内部構造を核の数倍の威力に修正して発射元に送り返した。
熱線は敵対を選んだ国のあらゆるモノを焼き尽くし共産主義の大国は3時間で崩壊した。
この国の国民はその対応を賛辞して信者は膨らんで、ついに国政を動かした。
使徒男をこの国の国王とする事を決定した。
双璧をなす資本主義の大国は対話を試みる陰で使徒男の暗殺を企てをしていたが暗殺者はたどり着く前に爆殺した。
諦めだけは悪い大国はこの国を悪者扱いして使徒男を差し出す様に脅してきた。
そんな脅しで使徒男を拘束できるほど簡単なことでは無いのはこの国の元首も承知しているのだろう。
国連で我が国は神の啓示に従うと宣言してしまった。
もはや逆らうという選択肢はないのだろうかと思い流れを見守ることにした。
干渉は控え疑問の形態を探ることに専念する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます