第8話 暴走
勾留施設のある警察はマスコミと遺族、関係者でごった返していて身動きが取れない、向かいのビルの一室で様子を見ようとお邪魔すると陰湿な言動で出ていくように促された。
こちらは丁寧に頼んでいるのに強引に追い出そうとしてくるので全員の脊椎を(爆)により破壊して行動不能な状態にしてあげた。
眺めの良い部屋で烏合の衆を見下ろしていると、怒りに満ちた顔をする使徒男が佇んでいる。
使徒男だけ違う空間にいるようで人々はその存在を気にする様子はない、何かぶつぶつと唱えるように使徒男は歩み始めた。
警察署のエントランス前までくると使徒男は声を上げた。
神の声が聞こえ無い愚か者どもよ!聞くが良い我こそ神の使徒ぞ!
大声は群集を黙らせた。
面白いモノを見つけたマスコミが使徒男にマイクとカメラを向けた。
使徒男は渡したままにしていた銃をエントラスを警備している警官に撃ち込んだ。
液体で警官は汚れて怒りをあらわにしマスコミも騒ぎ出す。
その声は圧縮によりすぐに沈黙した。
沈黙後潮が引くように人々は使徒男から離れた。
恐怖で音が掻き消えた。
それでもカメラは使徒男をとらえ続けている。
銃の残存弾はあと2発だ。
騒ぎを聞きつけ警察署内から警官が出てきて使徒男と対峙する様に拳銃を構えて警告している。
武器を捨てなさいと声を上げるが虚しいだけで発砲する様子はない、これだけ(爆)を使っても危機感が薄くて使徒男を殺そうとする気概が感じられなかった。
何故か虚しくなる。
この国でのことだけかも知れないし、すぐに撃ち殺す国でも変わらず虚しくなるかも知れない。
虚像の正義は意図的に人類を調整しているだろうか?
うっすらと疑問が見えた様に思う。
使徒男は変わらず神について叫び続け、ありもしない正義に取り憑かれている。
奇妙な膠着状態は軍の到着で動き出した。
警察と違い圧倒的な武力を背景に弱者を蹂躙する力は味方であれば英雄視される。
マスコミは急に力を取り戻し活気付いた様にマイクを握るレポーターは声を張り上げた。
警察は変わらず武器を捨てなさいと説得しているが、軍の指揮官が警察署長らしい男に挨拶すると警官は所内に引き上げた。
指揮権を得た軍は、マスコミの目を気にすることもなく一度威嚇で発砲した。野次馬から悲鳴に似た歓声が上がる。
使徒男は眉が少し動いただけで動じていない様だ。
神の存在は死を恐れない精神状態を作り出すのだろう。
指揮官が無線でどこかに連絡すると少し間を置いて使徒男が膝を折った。狙撃されたらしいのはすぐにわかった。
火薬の匂いが鼻についた。使徒男は膝を折りながらも銃を指揮官に向けた。
銃を握る手は痛みのために震えている。
今使徒男を失うのは実験には得策では無いなと思い少しだけ手伝ってやろうとスナイパーを圧縮した。
通信の途絶えた指揮官は顔色を変え、すぐに周りの部下に発砲命令を下した。が、その命令は虚しいほどあっさりと実行不可となる。
構えた軍用ライフルはおかしな音を立てバラバラに分解された。10人ほどの部下達は何が起こったのか分からずにキョロキョロしながら体を左右に振っているのが滑稽で野次馬の失笑をかっている。
指揮官が怒鳴り散らすがそれが一層コントじみて爆笑に変わるが、使徒男が銃を放つと指揮官が爆発した。
圧縮ではなく派手な爆発は血肉を飛び散らせ辺りを血の海に変えた。
カメラはその様子を全国に垂れ流し野次馬は悲鳴と共に散らばり逃げ惑った。
塔を爆破した時の再現でしか無いが人間というモノの観察にはなる。
肩を撃たれたらしい使徒男が必死の形相で立ち上がり銃を天に掲げた。
神の声に従いなさい、使徒男が目を血走らせて叫んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます