第15話 幽霊達に人間のライバル現る!?
早速だが、幽霊のライバルと言ったら皆さんは誰を思い浮かべる?
陰陽師? 霊媒師? それもまあ、あながち間違いではない。
幽霊のライバル、それは人間だ。
「あってるやないあかーいっ」思った人も多いだろう。大丈夫、正解あげちゃう。
これは別に俺がそう思ったわけではない。後からあいつらに聞いた話だ。実際聞いたところであんまり理解できなかったのだが。
あれは夏休みに入る前の事だった。
「藤崎っ!! はやく部活行こうぜっ!!」
学校が終わり、最近はあいつらも家にいて仲良くしてくれてるから、基本的に学校や部下で待たせるってことをしないで済んでいる。
そのおかげで自由だ。気兼ねなく生活を送り続けている。
俺は一斗と共に道場に向かう所だった。
「藤崎君、今から部活ね」
可憐の中にも少しのエロさを感じさせる声で俺に話しかけてくれたのは、1つ上の先輩。
「沢尻先輩。お疲れ様です!!」
「ふふっ、硬いね、藤崎君はっ」
やめてくださいよ沢尻先輩、硬いなんて。俺もれっきとした男の子なんですから。
「おい、翔? 何考えてた? 鼻の下伸びてるぞ?」
おい、やめろよ一斗。お前も男だろ。
「まったくしょうがない奴だな~、翔は~」
お前も鼻の下伸びてるじゃねぇか。名前呼ばれているのは俺だからな。
「沢尻先輩も今から部活ですね。今日もよろしくお願いします!!」
「うん。一緒に頑張ろうねっ」
落ち着てるな、沢尻先輩は。
とてもこれから18歳になる人とは思えないな。
でも、「頑張ろうねっ」って言って可愛いガッツポーズしちゃうんだからギャップだよな。
まさに容姿端麗、才色兼備。その日本女子にはよく似合う黒髪ロングに童顔。でも服の上からでも見てわかる胸の膨らみにエロい体つき。
目に入れるなって方が難しい。
うちにいる2人も可愛いが、外見だけでとるなら一番可愛いかもしれん。
そんな人と部活できるのも残り僅かか。今のうちに目に焼き付けておかなければ。
「沢尻先輩、進路とか決めているんですか?」
「ん? 私は大学に進むよ? 弓道の推薦も来ているしね」
おおー、さすが沢尻先輩。推薦まで来ているとはさすが。
「藤崎君は、進路とか決めているの?」
「いえいえ、まだ全然ですよ。まだ来年の話ですしね」
「へぇ~、そうなんだぁ」
一斗には聞かないのか? ってかなんで黙り込んで下向くの? なんでちょっと恥ずかしがってんの? どうしよう、勘違いしちゃいそう。
「なんでお前ばっかり話しかけられてるんだよっ!!」
「俺もわからんっ」
俺達は、耳打ちで会話を交わした。
一斗と耳打ちで会話した後は、沢尻先輩も耳打ちで俺に話しかけてくれた。
「もしよかったらさ、私の後追いかけてくる?」
「えっ? それってどういう…?」
「なになに? なんて言われたんだよ!!」
「いや~、俺にもさっぱりだ…」
沢尻先輩はいたずらに笑いながら少し俺達の前を歩き、一緒に道場にむかった。
「まじでなんて言ったんだろう?」
部活の最中も、さっき言われたことがいまだに理解できずにいた。
「おい、藤崎!! 集中できていないぞ!! 」
顧問に怒られながらも俺は沢尻先輩の方に目をやってしまった。お前のせいだと目を向けたわけではなく、集中できないっす、助けてくださいって意味の視線の向け方である。
沢尻先輩は、やはりというか少しクスクス笑っている。
くそ~悔しっ。でも可愛い。エロい。
「はい、すいませんっ!!」
まあ、意外とこういうのは時間の問題で、時が経てば「あれは夢だったんだ」と勝手に忘れさせてくれる。
はずだった。
部活も終わりも、あとは自主練の時間になった。ここからは、ある程度遅くならなければいつまでも練習が可能だ。
そして気づけば、いつも遅くまで一緒に練習をやっていた一斗も男先輩たちも帰って沢尻先輩と2人になっていた。
一斗の奴、あんな事帰り際に言うから少し意識しちゃうじゃないか。
「翔~、下手なことはすんなよ~。したら俺達男部員はお前を許さんからな~」
そういってみんな親指を下に向けて帰っていったのがさっきの事だった。
現在、時刻は8時20分。
「沢尻先輩は帰らなくていいんですか?」
「なに~? 帰らせたいの?」
「いえいえそういうわけではなく、帰り遅いので大丈夫かなと心配になっただけです」
「大丈夫でしょ? だって、」
「だって?」
「藤崎君いるしねっ」
…今日はどうしたんだろう? 俺まだ寝てんのかな?
1日でこんなに沢尻先輩と急接近するとは、何かあるのだろうか?
いやっ、でもっ、俺が接近できていると錯覚しているだけかもしれない。
俺達はその後軽くの自主練をして終え、時刻は9時を超えていた。
いけない、いけない。こんな遅くまでやってしまった。軽くとは言ったものの1時間近くはやってしまっていたな。
きっと今頃「帰ってくるの遅ーい」とかあいつら言ってんじゃないか?
「では、そろそろ上がりましょうか。沢尻先輩」
「そうだね、そろそろ上がろう。今さっきの話忘れてないよね?」
ああ、さっきの遅くなっても俺が送るから大丈夫って話か。
「送るって話でしたっけ?」
「あれ、送ってくれるの~? 優しいね藤崎君はっ」
「んん? 違いましたっけ?」
「私送って、なんて言ってないんだけどなぁ」
や、やられた。確かに送るなんて沢尻先輩言ってなかったな。
でも、満更でもなさそうだ。どちらにしろ送っていくつもりだったし。
「まいりましたっ。送るんで行きましょうか」
「リードはよろしくね?」
「はい。家知りませんけどね?」
「なに言ってるの? 家4つ隣だよ?」
「本当ですか?」
「嘘だと思うなら一緒に帰ろうよ」
「それは、帰りますけど」
「んじゃ、行こうよっ」
そうして、俺達は本当に同じ道を辿って家に到着してしまった。
”沢尻”。確かに先輩が「ここが私の家だよっ」っていった場所に家があった。
「本当に4つ右隣りなんですね。さすがに驚きました」
「だから言ったでしょ? 私、嘘使つかないよ?」
「ええ、今日は色々まいりましたよ」
「色々って?」
また、沢尻先輩は俺の事いじって遊び、そしてご満悦ときた。
なぜだろう、俺も悪い気はしない。
実は俺、Мだったんだろうか?
「色々は、い、色々、ですよっ!」
「ふーん、色々ねっ。そういうことにしといてあげるっ」
こまったな。全然自分のペースに持ってけない。普段あいつらの相手しているせいか、沢尻先輩が本当に年上だってことが実感できる。
「それじゃ、ここまでくれば大丈夫ですね? 俺そろそろ帰りますよ」
「あー、待ってっ」
「今度はなんですか?」
沢尻先輩は自分の鞄からメモとペンを取り出し何か書きだした。
「これっ、あげる。じゃあねっ」
「はぁ? さよなら?」
そういい捨てて颯爽と帰ってしまった。
その渡されたメモを見ると、メアドと電話番号だった。
なるほど、ラ〇ンの交換とかじゃなくてこっちね?
わかるかな? ラ〇ンの交換よりメアドとか電話番号の交換の方がより親密度を感じる。
メアドとか電話番号って家族とかしか交換しない気がする。
にしてもこの渡し方は…。
「この渡し方はずるいよな?」
これじゃあ、直接言わなくても間接的に登録しておいてねっ。って言われているようなものじゃないか。
ああ、今頃あの扉向こうで恥ずかしがってないかな。
沢尻家―
「あー、すごく恥ずかしかったぁ」
「おねちゃん? 何でそんなところで顔赤らめて立ってるの?」
「何でもないんですぅ!! ほっておいてくださいぃ!!」
「?? 変なお姉ちゃん」
はあ、ドキドキした。
「メール、送ってくれるかな?」
「まだいたの? お姉ちゃん」
「あなたもねっ!?
めっちゃ恥ずかしがっていた。
藤崎家―
「ただいま~」
「「「「おかえり」」」」
なぜ4人そろってリビングに?
「翔さん、少し座ってくださらない?」
「ってか早く座って」
なんでセラと香原は怒っているの?
「陽? なんかあったのか?」
「アニキ、馬鹿だな」
そういって陽は2階に上がっていった。
最近俺の事アニキって呼ぶよな? 馬鹿って俺なんかしましたか?
「お母さん?」
「じゃあ、私はお風呂に入ろうかしらね。息子がまさかそこまでの男になるなんて」
まじで、なにしたんだ? 息子? 俺だよな。
俺は香原とセラの言うままに座った。
2人の目は血走っている。どうやらその殺意は俺に向けられてそうだが、皆目見当もつかない。
「翔、さっきあの女の人に何を貰ったの?」
「さっき見てしまったんですよ? 謎の女の家の前で謎の何かをもらっているのを」
「ええ、翔の声がするものだから見に行ったら、何? あの光景は?」
ま、まさか、外出てこっそり見られたのか。
全然気づかなかった。
「あ、あれは部活の先輩で、家も4つ隣だったから一緒に帰ってきただけだよ」
「ああ、そういえば最近近くに沢尻さんって人が引っ越してきたわ? ちゃんと挨拶回りしてたわよ?」
おお、まだいたのか母よ。どうか助けてくれっ!!
「んじゃあ、お風呂行くわね?」
何しに来たんだっ!? 早く行っちまえ!!
「ふぅ~ん、沢尻さん。で、もらったものは?」
「なんだったんです?」
こいつらダメだ止まらない。怖すぎる。次には何を喋ってもヤられそうだ。
「まあこういう時はメアドとかそんなノリじゃない?」
おおー弟よ、戻ってきたのか!? そのまま俺助けてくれっ!!
「裏切者っ。あかちゃん!! ぎんちゃん!! やっちゃえ!!」
「「了解」」
ほんと、何しに来たんだーーーーーーー!!
この後、まさに半殺しにあいました。
服という服を脱がされ、こちょこちょの刑にあいました。
俺、こちょこちょ苦手やねん。
かれこれ、こちょこちょの刑は10分ほど続いた。
「まあ今日の所はこれくらいで勘弁してあげる」
「ええ、光栄に思ってください? 翔さん」
光栄に思ってくださいって使う場面間違えてるから。
そうして、解放された俺は1人自室の戻り、さっき沢尻先輩から貰ったメモに書いてある、メアドと電話番号を登録した。
「時間遅いけど、これ貰ったってことはメール送れってことだよな?」
俺はドキドキと少しの不安を募らせ、沢尻先輩にメールを送った。
メールの返信は思ったよりも早く、すぐに返信がきた。
ちなみに、送った内容は、こう。
『お待たせしてすいません。これ俺のメアドと電話番号です!!』
そして帰ってきたのが、こう。
『あれ、私登録してなんて言ったけ? しかも送りかえしてとも言ってないような? あれれ~?』
なんて悪戯な文面だ。
ぜったい面白がってるよ、これ。
でも何だろう? 本当に嫌な感じがしない?
沢尻家―
「ふふっ、やっぱ面白いなぁ、藤崎君はっ」
「おねえちゃん、なんで笑ってるの?」
「うわっ!! ここ私の部屋なんですけど!? 扉少し開けて覗き見するのやめてよねっ」
「ってか藤崎さんってお隣じゃん。まさかお姉ちゃん?」
「うわぁぁぁ、もうそれ以上言わなくていいから!!」
ちょっと楽しんでいた。
藤崎家―
「翔? なにニヤニヤしてんのぉ?」
「なにか翔さんのニヤニヤな感情を察知したので来てみればなんですか? このメールのやり取りは?」
いつの間に部屋に。まずい!!
ってかその”無駄読み”。本当に無駄だな。
「陽パイセン? このアニキやっちゃっていいすっか?」
「なんだ、香原、口が悪いぞ?」
「ああ!? うるさいっすよアニキ?」
慕ってんのか慕ってないのか紛らわしい呼び方すんなよ。
「陽さん、もういですよね?」
セラも怖いよ? お前もっと優しい奴だったろ?
ってかなんでお前またいるの? 陽さん?
「きるきるゆーーー!!」
「「了解っ」」
「何言ってんのーーー!!」
弟の訳の分からない号令と共に、再び俺の叫びが始まった。
今夜は俺の叫びが綺麗な夜に叫び渡った。
なんだろう? これは気持ちよくならない。
自分がまだ本当にМになりきってはいないことに少し安堵した。
沢尻家―
深夜1時頃の事だった。
「お姉ちゃん? まだニヤニヤしてんの?」
「蜜葉っ!? 時間考えなさいよーーー!!」
もう1つの叫び声が、また夜空に響き渡った。
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