第16話 夏だ!!海だ!!幽霊だ!! その1
2時頃が太陽の猛暑を迎える8月。
普段みんなならどんな風にお過ごしでしょうか?
俺なら当然、家でゲームかなんかやりながら扇風機ガンガンに回し、スイカを切って並べて、風鈴の音で涼みながらぐうたら過ごす。
そういう夢を見ていた時期が今でした。
ああそうだ。ちなみに、この前、部活の大会がありまして見事に優勝飾る事が出来ました。
この大会は3年生も最後になる大会だったので、無事に優勝できて本当によかった。
この前の沢尻先輩とのこともあったから後味悪くならずに済んで本当によかった。
いや~、ほんとによかった。
これで全国大会に行くことが出来る。ちなみに秋です。
というわけで、顧問からも
「お前ら、調子を崩さない程度に夏を楽しんでこい」
なんて言って、1週間ばかりの休息をいただきました。
だからこそ、さっきのような夢のような生活がしたかったわけなんだが、それは叶いそうになかった。
今俺は、否、俺達はどこに来ているかというと。
「「海だ!! 青空だ!! 水着だぁ!!」」
そう、香原とセラが叫んでくれたとおり俺達は今海に来ている。
実は海はそんな好きではない。
焼けるし、暑いし、海しょっぱいし、入って出た後体に砂ついて洗い流すのがめんどくさいし、体も髪もベトベトする。
だからあんまり好きではない。めんどくさい。
「「いや、それはもう嫌いなのでは?」」
「急に入ってくるのやめて? ってかスキル無駄遣いしないで?」
そんな海だが、今回はこいつらもいるしそれに、予想だにしない誤算もあるし、少し楽しみにはなっていた。
「海だね~蜜葉っ」
「はしゃぎすぎじゃない? 私海あんまり好きくないし」
ほう、奇遇だな妹よ。俺もだ。
「「今、嫌いって認めましたね?」」
「うん、急に入ってくるのはやめて?」
それ、何度やられてもヒヤリとすんのよ。
「この度は藤崎家を誘っていただいてありがとうございます」
「いえいえ、娘に友達誘うなら誰誘いたいっ? って聞いたら藤崎君かな? なんて言うものですから~」
沢尻家も母子家庭なのだろうか? 父親の姿が見当たらないな。
「ちょっと!? 勝手なことを言わないでっ」
「だって、百合はそれしか言わないんですもん」
「あれは、無意識で…、そのぉ」
何あれ、可愛い。
にしても、うちのお母さまは相変わらず硬いな。あれ昔からで結構恥ずかしいんだよな。
俺はフランクな家族が好きだぜ?
「陽先輩、いいすっか?」
「いいですよね? 陽さん」
「まだ駄目だね。溜めておきなさい」
「「いぇす、ヴォス」」
ふと香原達に目をやると、なにやらまたこの前と同じ殺気を感じる。
それ、まだ続いてたんだ。
「藤崎君っ」
可憐の中にもやはりどこかエロさを感じる声が聞こえた方向へと、今度は視線を移動させる。
「今日来てくれてありがとねっ」
「いえいえ、こちらこそ夏の思い出ができるんでよかったです」
思い出ができるのは喜ばしい。高校生活にはこういう垢抜けた話が思い出として1つは必要だろう。まあそれが垢抜けるのかどうかは俺達にかかっているのだが。
このメンツなら問題なく垢抜けるだろ。意味通り、行けてる高校生へと洗練される。
そんな期待をしている俺の後ろには先ほどの殺気が3名分あるがな。
「あ、後ろの3人が同居さん?」
「ええそうなんです。それがまた癖の強い奴らで、ひょっとしたら沢尻先輩の手をぉぉぉぉぉぉっ!?」
な、なんだと。まさか、見えているのか?
「沢尻先輩、どんな奴らが
「?? 茶髪の可愛らしいボブの子があかちゃんでしょ、綺麗な銀髪の子がぎんちゃんでしょ、後今私の妹と話しているのが陽君かな?」
「まじか」
「ど、どうしたの? 何かまずかったかなっ?」
「いえ沢尻先輩はなんも悪くないですよ」
「そ、そう?」
沢尻先輩はなんも悪くない。こいつらを不用意にこの人に吹き込んだ犯人が悪い。
ってか、弟よ。お前もちゃっかり交友持ってんじゃねえかよ。
「おい、陽の後輩たち。あれはいいのかよ?」
「「先輩はいいん」」「だよ」「ですよ」
ああ、そう。もう呆れるしかなかった俺だった。
でも沢尻先輩に吹き込んだのはどこのどいつだ?
簡単に推理してみよう。
候補1・弟。…ないな。こいつにそんなコミュ力があるはずもない。
候補2・香原。こいつも考えにくいだろう。何より沢尻先輩を謎の敵対視して
いる。
候補3・セラ。香原と同じ理由につき無いと考えたいが、こいつはどこか危なさ
を残している。捨てきれない可能性だ。
候補4・母。そういえば昨日沢尻家にいっていたな。そして、帰ってきて海の
話が出た。そしてなにより、あかちゃんやぎんちゃんとこいつら
の危険性を知らない。
「母よ。おまえだろっ!?」
「ひどいわね、お母さんをお前呼ばわりなんてっ。そうです、私が紹介しました。ちゃんと握手も交えてね? それも片手じゃないわ、両手よっ!!」
なるほど、その儀式は両手の握手でもよかったわけか。
めんどくさー。せめて沢尻家にはホントの事いうか?。いやそれもめんどくさいな。
どうか、これ以上めんどくさい事にならないでと祈るばかりだ。
「それより、私たちの水着に何か感想はないのっ!?」
「ずっと待っているのに中々言ってくれないんですもんっ。ひどいですっ」
「ど、どうかなぁ?」
3人それぞれ違った水着でとてもよく似合っている。
香原は茶色のボブに赤の水着で、そこに合わせて白のレースコートを着ている。まさに白と赤のバラ。誰しもの目を引くだろう。
セラは青地に白の花が描かれた、ブラジャーアンドスカートの夢ある水着だ。いうなれば、夏の暑さにも咲く氷花のようだ。見るだけで心が涼む。
沢尻先輩はシンプルに黒のビキニっ。これぞ王道、シンプルイズベスト!! まさに好み!! もうこれしか目に入りません。
「みんな可愛い、です」
「「「へへっ」」」
反応が女の子だな~。
「どうかしらっ?」
「ににに、似合ってるんじゃ、ななないか?」
「まったくしっかりしなさいよ!!」
沢尻先輩の妹、蜜葉ちゃんだったけか? 弟とうまくやれてるじゃないか。
弟を男にしてやってくれ!!
そうして、女子同士は互いに日焼け止めを塗りあい日の下で遊ぶ準備をしていた。
こう、白いトロ―っとした液をすく伸ばして塗りあっている。
なんか、エロイな。
ちなみに、俺は日焼けしないのだ。仮に日焼けしたとしてもすぐに戻るのだ。
でも、ちょっとくらいは、日焼け止めイベントがあってもよかったんじゃないのか?
「それじゃ、早速遊ぼっ」
1番乗りは香原だった。こういうイベントごとを素直に楽しんでくれる奴はいいよな。
俺みたいにノリきれない奴でも、一緒に楽しませてくれる。集団にこういう奴は1人は必要だよな。
「私も行きますっ」
「藤崎くんも行こっ!!」
セラにそれに沢尻先輩に連れられるように俺も海に駆け出した。
「しょうがないから私たちも行くわよ?」
「しょうがないには賛同できるな」
さらに続いて末っ子ズも海に来て、なんだかんだ海で過ごす夏が始まった。
「「いや~、青春ですね~」」
「そうですね、娘たちも楽しそうでよかったですぅ」
「うちの息子たちも鼻の下伸ばしてよかったですぅ」
おいババア聞こえてんぞ? 鼻の下なんか伸びてねえよ。
ビーチパラソルの下で2人でビール飲みすぎて視界ボヤけてるんじゃないですかねぇ?
コメントするなら、沢尻先輩のお母さまのように優しいコメントしてくれます?
まずは、ビーチバレー。偶数で来れたのはよかった。
ちゃんと3対3での試合ができる。
チームの組み合わせは、俺、セラ、妹組と香原、沢尻先輩、陽組にわかれた。
いろんな意味でバランスの取れた、いいチームだった。
「それっ。いきましたよ!! お願いしますっ、蜜葉さん!!」
「はいっ!! 最後お兄さんお願いします!!」
お、お兄さんっ!? 悪くないっ!!
「悪くないぞぉオラぁっ!!」
「はいっ!! あかちゃんっ!!」
「先輩!! お願いします!!」
「アニキっ!! 調子乗ってんじゃねぇ!!」
ビーチバレーは白熱した試合展開になったものの結局は、俺達の組が勝った。
でも危なかった、コートに見えたそれぞれの胸が俺の敗北を誘惑していたからな。
途中で、セラ、もとい、ぎんちゃんが首を絞めてくれなきゃ今頃負けていただろう。
人間死ぬ直前に悟りを開く。今回はおっぱいの誘惑に打ち勝つ悟りを開いた。
「「バレーじゃねぇのかよ」」
「棒読みのツッコミありがとう」
慣れないぜ、まったく。でも今のツッコミは悪くなかったぜ。
そして、海に来てできる遊びで代表的なものと言えば。
スイカ割りだろう。
「陽くーん、45度斜め右前だよ~」
沢尻先輩は優しいな。ホントの事しか言わないどころか角度まで教えてあげる優しさ、ぜひ周りも見習ってほしい。
みよ、周りのあのスイカを割らせないチームプレーを。
「陽先輩左っす!! 海に沈めてきました!!」
それもう割れないじゃん。
「陽さん? ここですよ、ここ」
どこだよ。
「ふん、しっかり割りなさいよ」
場所教えてやれよ。
「くっ、全員訳が分からないぜっ!!」
そうだろうよ。しょうがない、沢尻先輩が本当だって教えてやるか。
「おい、弟よ」
「なるほど、そこかっ!!」
おおー、わかったのか? まだ何も言ってないけどなあぁっ!?
陽は全力疾走で俺の方向かって来ては脳天をかち割る勢いでバットを振りぬいた。
「あっぶねっ!! 殺す気かっ!!」
「ちっ、はずした!!」
いや、狙い俺かよ。
どさくさに紛れて後ろで香原とセラは舌打ちしていた。
心配してくれているのはどうやら沢尻先輩だけらしい。「あわわっ」なんて声に出す人初めて見たがそれもまたいいよ。
妹ちゃんは「こらーっ!! 兄弟は大事になさいっ!!」って怒ってくれてる。できた妹ちゃんだ。
「おーいっ、お昼にしよっ」
「焼きそばとか色々買ってきたよ?」
昼、もうそんな時間か。10時から遊んでいたが2時間あっという間だったな。
みんな、「わぁーい」なんて言っちゃうくらいだから本当におなか減っていったんだろう。
俺も実はおなかすいた。
あー、やきそば、食べたいな。
後半につづく!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます