第14話 幽霊ってこんな日常であってる?

 朝起きて、昼は学校、夕方は部活やって、夜は飯食って寝る。

 その中には当然家での癒しがあったり、部活でもある。


 これは俺の日常ルーティーン。


 だが、香原とセラは違う。


 最近、こいつらは学校に一緒に来るとか、部活の時に道場で待ってるとかそういうのはない。

 では、どうしているのか?


 今回はそんな幽霊の日常ルーティーンが気なる皆様に、テレビスタジオ(仮)を背景にぜひ紹介していこうと思う。


 所々カットしてコメント入れながらやって入れていけたらな思うのでよろしくお願いしまーす。





 朝9時―起床


「「ふわぁ~」」


「おはようセラ~」

「おはようございます、紅華さん」


 こんなぴったり同時に起きる事があるでしょうか?


 しかもこの挨拶毎日やってんの? 家族より家族だね。


 はい、次ね。




 9時15分―グダグダタイム


「「ぐだぐだぁ」」


 ちょっと待てよ。そんなわかりやすいグダグダあるかって。


 2人共、ロフトの中で口で言うほどのわかりやすいゴロゴロをしている。


 今時っていえば、ケータイ使ってゴロゴロしているとかそんな感じだろうが、そんなものを持ち合わせていない2人は本当にただグダッている。





 9時30分―歯磨き、洗顔


 おいおい、そんなことやったらまだ家にいるお母さんにバレるだろっ!!


「あら、あかちゃん達起きてきたのかしら?」

 

 ほら言わんこっちゃない。…あかちゃん!?


「あっ、おはようございます!!」

「おはようございます、お母さんっ」

「はい、おはよー。ぎんちゃんも。今日も可愛いわね~」

「「えへへっ」」


 …………。


 はい、カットっっ!!!!




「ちょっと待ってお前らぁぁ!!!!!!!!」

「なにぃ? まだ紹介して30分しかたってないよ? 動画にしてまだ5分よっ?」

「そうですよ? まだまだこれからですっ」

「馬鹿を言うな。んなぁにをしてくれとんじゃお前ら」

 いや、ホントに何をしてくれとんじゃ。


「大丈夫!! お母さんに出演許可はとってあるわっ」

「そうじゃねぇよ!?」

 ほんとそうじゃないよ。


「あかちゃんとぎんちゃんって誰だよ?」

「だって本名言って死んでることバレたら怖いでしょ?」

「そこは考えましたっ」


 この状況がアホすぎるから挽回は無理だがそこは偉いぞ。


「お母さん、なんていってた?」

「かわいい子達ね~って。ちょーっと目を閉じたら目の前に2人もいるから少しビックリしたけどねぇ~って」


 母よ、不法侵入を疑え。


「その後は?」

「翔君のお部屋に住まわせてもらってますって言ったら、いいわよぉ~って。何か必要な物あったら言ってねって」


 スムーズに行きすぎだろ。だから疑えって。


 ってか知っててなんで何も言ってこないのあのババアは?


「ちゃんとご飯とかは大丈夫ですって言ったよ?」


 そういう問題じゃねぇんだよ。


「どしたの?」

「翔さん、大丈夫ですか?」


 大丈夫ではありません。


「はあぁ、次いこうか…」


 俺は軽く舐めていたよ。それなりに気合入れていこう。





10時00分―朝ごはん


「あかちゃ~ん、ぎんちゃ~ん。ごはんできたわよ~」

「「は~い」」


 ……。


「目玉焼きだぁ~」

「焼かれたお魚さんもいますよっ」


「「「いただきまぁ~す」」」


 ……。


 


「カァーーーーーットォッ!!!!」

「今度はなにぃ? 進まないんですけど?」

「そうですよ? 動画にしてまだ10分です」

 いや10分もたったらコメントも入っていいだろう?


 ってかセラ、焼いたお魚さんって、敬意込めすぎだろ。


 そうじゃなくて。


「今さっきご飯いらないって言っていなかったっけ?」

「あー、そこはなんか、せっかくなんだから一緒に食べましょう? って」

「ええ、普段息子は一緒に食べてくれないのでって言っておりましたが?」


 んーー、まあそうなんだけど。


「馴染みすぎじゃない?」

「翔のお母さん良い人だよねぇ」

「はい、とってもいいお母さんですっ」

「いいのっ!? あんたたちそれでいいの!?」

「うんっ」

「ええっ。何か問題が?」


 うん、いいっす。



 はい次。





 11時00分―メイクタイム


 お母さんもいなくなった後か。


 こいつらメイクとかするんだな。そのメイク道具はどっから入手してきたって訊いてやりたいが今は目をつむろう。

 でもたまに見る、私服たちもそうだがどこで手に入れてきたって聞いてやりたい。



「はい、こちらの商品がですね~。〇〇の××××です」

「そして、これが☐☐の△△△△△△だよ」


 し、視聴者向け!? ユー〇ーバー!?


 ってか肌モレてる? 明るくない?


 はっ!? 聞いたことあるぞ。


 ユー〇ーバーは機材の一つにリング状のライトがあると。

 まさかこいつらそれを!?



 カット…。


「おい…」

「今度はなにぃ~?」

「そうですよ? 動画にしてまだ15分しか…」

「いや、もうその件いいから」

「しゅん…」


 ぎんちゃん。しゅん、じゃないよ。


「お前ら、この機材どこで買った?」

「えっ? 通販だけど? ねえ?」

「ええそうですよ?」


 ……。


「どうやって受け取った?」

「どおって、ちゃんと手を重ねて姿を見せてとったわ? ねえ?」

「そうですよ?」


……。


「最後にもう一つ。いいか?」

「さっきからなに~?」

「変な翔さん、なんですか?」」


 いやいやいやいやいやいや、変なのはお前らだから。


「そのお金どっからとった?」

「ああ、それなら翔の机のカギがかかってる場所からだけど? ねえ?」

「もちろんですよ。変な翔さん」


 誰が変な翔さんだよ。


「やっぱりか!! おかしいと思ったんだ!!」

「なに急に!? 怖いわ? ねえ?」

「ええ、らしくないですよっ? 怒っちゃ、めっです」


 めっ、じゃねえよ。ってかその「ねえ?」のバトンやめろ。


「まず!! それだけの高額そうな機材、仮に母が絡んでいたとしてもやすやす買える物じゃない。ってことはわかる」

「「はい」」

「ってことは、お母さんに言ってない。つまりお金は自分たちで入手するしかない」

「「はい」」

「でもお前らは働くことが出来ない。つまり奪うしかないが、お母さんは普段口座にしか大金は入れない。ってことは…」

「「……」」

「俺が普段お小遣いを細かくためていた場所を知ってる、そこから盗むしかないなぁ?」

「「……」」

「何とか言ってみろよ?」

「「はいそうです。あなたの大事に貯金していた場所から盗みました見。申し訳ありませんでした」」

「だろうなっ!!」


 最近、俺の引き出しから4万なくなっていたんだ。おかしいと思ったら犯人こいつらかっ!!


「それに、受け取るのに姿見せたのか!?」

「見せたよ?」

「でもしっかり、全身黒タイツしましたっ。姿がバレたくない時はそうやって姿を隠すものとアニメで学びましたので」

「それ、名探偵コ〇ンだろっ!!」


 受け取り方が犯罪臭すごいくせに、律儀すぎる!!


 それにはさぞかし配達員も引いただろう。


「ってかなんでユー〇ーバのマネ?」

「「なんかおもしろそうだったから」」「です!!」


 あ、そう。楽しそうだね君たち、はい次。





14時30分―外出


 嫌な予感がする。


「可愛いワンちゃんですね~」

「ほ~ら、お手です」


 おばあちゃんに連れられて散歩しているチワワに見える小型犬は気持ちよさそうに愛でられている様子。


 この流れ、おばあちゃんに姿見せたパターンあるよな。


「こら!! ポメ太郎!? なにをやっているんだい!?」


 よかったぁーー!! ちゃんとというか、姿は見せていないようだ。

 

 ってかばあちゃん、ポメ太郎って、チワワじゃないのね?

 その名前はポメラニアンとかにつけてやれよ。チワワならチワ太郎とかじゃないの?


「「いやそれはないでしょう?」」

「お前らたまに心読むそのスキル何なの?」


 はい続き。



 どうやらお次は公園の様だ。この町内にはいくつか公園があるがその中でも一際目立つ公園だ。

 次こそ嫌な予感がする。


 おっ? 2人共ブランコをこぐのか? ちゃんと周りに誰もいないことを確認してから乗ってくれよぉ~? 頼むよぉ~?


「町長!? ブランコが消えてます!!」

「なんじゃと!?」


 ほらぁ、バレたじゃん。


 こいつらの不思議なスキル2つめ、”化け隠し”。最近そう呼ぶことにしている。

 こいつらが触れたものは触れている間だけ周りの目から見えなくなる。こいつらが手を放すか、誰かが触れればそこにまた現れる。生物はどうやら例外の様で。

 この場合は、俺が触れるか、ブランコほど大きいものであれば誰かがそこには何もないと思って通った人が触れる。というか当たる。


「いったぁっ!?」

「町ちょーう!! ぬぅあんじゃこれはっ!?」


 こんな感じに。

 

 なくなったと思って、様子を見に行った町長の体は化け隠しのブランコにぶつかり化け隠しは解除され、またブランコが現れた。


「ぬぅわっ!! 現われおったっぞ!? どうなっておる!?」

「さっぱりですぅ、町長」


 おっさん、運悪かったな。ってか散策偉いな。



 うーん、一応カット。




「なあなあ?」

「なに? また怒られるの?」

「怖いです、翔さんっ」

「今さっきは怒ってもよかったよね?」


 ちょっと強く怒りすぎたな。今日はもう何があっても怒らないぞ。


「そういえば、11時から14時の間が全然なかったんだけどこの時間は何やってたんだ?」

「その時間はですね、紅華さんが説明してくれます。ねっ、紅華さん」

「わたし? なんでよ? セラが説明してよっ」

「私は無理ですよ言葉知りませんので」

「ぬぬぬ、ずるいよ!!」

「でも本当に言葉を知らないのですよ?」

「もうっ!! しょうがないわね!!」


 なんなんだ一体なぜこいつらはこんなにも話すことをためらっている?


「翔? 怒らない?」

「怒らないさ。話してみ?」


 今さっき怒らないと誓ったばっかだ怒るわけないだろう。

 男に二言はない!!


「実はね?」

「ん? 実は?」


 香原は俺を怖がるように口を開いた。


「ピザ頼んでお菓子買って漫画かってメイク道具買って買って買って買いまくったのっ!!」


 ・・・はっ?


「セラっ」

「ええ、紅華さんっ」

「「退散!!」」

「待てやっ」


 俺はこのスタジオ(仮)から逃げ出そうとしている2人の首根っこを掴んだ。


 すまない、男にも二言はあったな。


「今さっき金盗んだって言ったよなぁ?」

「「はい」」

「あの機材たちはいくらだ?」

「「2万くらいです」」

「なるほど。俺が盗まれた金額は俺が把握している限りでは4万なんだが、残り2万をそこに使ったと?」

「「すいませんでしたっっ!!」」

「いいか? もう怒らないけどな、今度から盗みをするぐらいだったら相談しろ? 盗み癖はついたら怖いからなっ」

「「か、神様~」」


 2人は目に涙を浮かべ讃えていた。


 そうだもっと褒めよ、讃えよ、そしてお金返してください。


「「いや、それは無理です」」

「うん、そのスキルの無駄遣いやめて?」


 しれっとした顔しやがって。今度からその心読みスキルは”無駄読み”にしよう。


「はい次」


  



帰宅して18時15分―


 君たち外出長くない?


「ただいまー」


 陽? 帰ってくるのが遅いな。部活ってこんな時間までかかるのか?


「「お帰りなさーい」」

「ただいま、あかちゃんにぎんちゃん」 


 ……。


「いや、お前もかーい」

「ねえまだこの時間始まったばっかなんだけど?」

「お楽しみはこれからですよ?」


 何でこんなにも普通に馴染んでるくせに、母も弟も俺になんも言ってこないの?


「ははは、では続きをどうぞ」


 もう、どうにでもなれ。




18時30分―ゲーム


 もう展開読めたわ。弟とテレビゲームだろ?


「ジャックバックで階段縛り~っ。どうっ?」

「やるね、あかちゃん」

「うまいですわね~、それは誰にも出せませんわ」


 トランプかいっ!! それも大富豪!! 3人でやるゲームじゃないよ。



1時間後―


 1時間後? 何このパターン? 何時何分じゃないの?


「あかちゃん、ぎんちゃん!! これでウノよっ!!」

「母さん最後の1枚役カードじゃないよね?」

「やりますね? ですが私もウノです!!」

「私はまだまだいっぱいあります…。紅華さんがいっぱい引かせるんですもん」


 お前も混ざんのかーいっ!!

 時間的に飯つくれやーい!!


 ってなんで今さっきからなんでそんなカードゲームばっかり!?





「今回はカットしなくていいの?」

「コメントが欲しいですわ」

「もう、心の中でツッコませてもらったんで大丈夫です」


 なんか疲れてきたよ、僕。





21時00分―翔、帰宅


 おっ、俺が帰ってくる時間だったか。


 俺こいつらが一緒にカードゲームやってるところなんて見たことないんだけど?


「はいウノ~」

「またやられた」

「お母さん強いですね!!」

「またこんなにカードが残ってますぅ」


 ウノやりすぎだろ。どんだけハマってるんだよ。

 ってかセラ今さっきから弱すぎだろ。


 にしても俺本当に帰ってくるのか?


「ただいま」


 あ、帰ってきた。


 そこで俺が見た光景は実に目を疑うものだった。


「「「「散っ!!」」」」


 …。


「翔、お帰り」

「あれ、お母さんご飯まだできてないんだ。最近珍しいね~」 

「ちょっと疲れちゃって、ごめんね」

「いいよ、なんか手伝う?」

「いいのよ、ありがとう」

「あ、そう?」


 …。


「アニキお帰り」

「アニキ? お、おうただいま。珍しいなリビングでゲームしているなんて」

「最近、俺の部屋居心地悪くてさ」

「そ、そうか? まあ楽しめや」


 …。


「ただいま~」

「「おかえり~」」

「お、おう」

「見て見て~」

「部屋掃除しておきましたよ?」

「そ、そうか? ありがとう」


 …。


 なんか、最近みんなと距離があると思っていたんだ。

 そうか、こういうことだったのか。


 母も弟も珍しいなって思ってたんだ。

 なんだそういうことだったのか。


 香原もセラも、なんか気持ち悪いなと思っていたんだ。

 なんだそういうことだったのか。


 これよくに俺に見せたな。

 せめて始まる前に、暴力表現が含まれているとか言ってほしかったな。


「しょ、翔?」

「泣いているのですか?」

「うん、悲しくてねっ。ぐすっ」

「「相談乗りましょうか?」」

「お前達には言わねぇよ!!」



これにて終了―


翌日―


 俺は朝、ミルクティーを飲みながらある新聞の記事に目を通していた。そこに書かれていたのは。


『〇〇公園のブランコ!! 神隠しにあう!!』


 いや、あほくさ。




 

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