第12話 幽霊たちとお化け屋敷入りました その1
「え? 嫌だけど?」
「え~行こうよ~」
「あのなそれどういう状態になるかわかるか?」
「なに? どういうこと?」
「はあ、紅華さんはわかってませんね~」
今、俺達が話しているのは、遊園地に行くか行かないかである。
無論、俺は遊園地が嫌いじゃない。むしろ好きだが。
じゃあ、何を言い争っているかというとだ。
こいつらと行くって事は、俺一人なんだよな。
1人カラオケ、オッケオッケ。全然いける。
1人ショッピング、もう全然余裕。
1人映画、朝飯前。
1人焼肉、ん~まあまあ。
1人、す〇家。日常茶飯事。
1人、遊園地、無理だろ~。
えっ? 1人遊園地って? 俺行ったら寂しくて死んじゃうよ?
「というわけで無理」
「翔はアホだな~」
お前に言われたくねーよ。
「さすがにその辺は考えてありますっ」
「まあ」
「なんと!!」
どうせしょうもない考えなんだろうけど。
「ちなみにその考えとは?」
「それは当日になってのお楽しみ」
知ってる、こういう時ってだいたいハズレ。
ってなわけで、まんまと騙されてきていたのだが、
「よお、屋上ぶり」
「お前かよ」
ミスター、エアーマンがいた。まさかの策ってこれか。
「そんながっかりされるとは心外だぞ?」
「がっかりしてると思われてるなんて心外だぞ?」
「それは悪かったな」
「おう、気を付けてくれ」
まったく人を見ためで決めつけるのはよくないぞ?
「どう? これで行けるでしょう?」
そう香原は自信満々に言ってるが、その前にだ。
「ってかいつの間にお前許可してたんだよ」
「だってこうしないと遊園地連れてってくれないでしょ?」
嫌、ぶっちゃけ微妙だろ?
「いや、ギリだな」
「ああ、ギリだな」
そこで乗ってきてくれるミスターエアーマン。
おー、友よ。
「どうしてっ!?」
「まったく紅華さんはわかってませんね」
この前も見たな、この光景。ってかセラは意味わかってんのかな。
たぶんわかってないだろうな。
しょうがない、ここは俺が教えてやろう。
「いいか? 香原視点は確かに4人に移るだろう。だけどな、周り視点は男二人だぞ?」
「なんで仲良くていいじゃない?」
「男2人で遊園地、ゲイもしくはホモに見られてもおかしくない」
「それこそ偏見じゃないかしら?」
んー、地雷踏んだ気がするが今は気にしないことにしよう。
「男にとっての遊園地は大勢の友達と共に、もしくは可愛い彼女と2人きりで行く夢のテーマパークなんだよ」
「なに言ってるの? 可愛い女の子ならいるじゃない」
「それに関しては、私は紅華さんに同感ですね」
「んあ?」
んなものどこに?
「ほら、ここに2人」
「ねっ? どうでしょう?」
ああ~、そこね~。
確かに可愛い、それは間違いない。
でも何だろう、何かが、何かが違うんだよな~。
なんて言ったら怒られるからこれ以上は何も言うまい。
「まあ、いいか」
「ずいぶんあっさりだな?」
「いいんだ、これ以上言うとこいつらすねるから」
「なるほど、懸命だな」
宮本もどうやら理解できたようで何よりだ。だけどやっぱ気になる。
セラとそんな簡単に行くのか?
「でも宮本はいいのかよ?」
「何がだ?」
「いや、セラの事…」
「なんだ、そんなこと気にするな。それに屋上で言ったろ?」
「??」
「覚悟しとけよって」
「そうですよ? 初めから決まってたんですからっ」
そういえば、宮本はそんなこと言っていたな。セラにはまんまとやられたが。
「はぁ、そうだったよ。忘れてた」
なら他に心配は、俺達が同性愛者にみられないかどうかってことだな。
別に、同性愛を否定するわけじゃないが、俺はれっきとした女性が好きなんだ。誤解されても困る。
「んじゃ行くか!!」
「「おおー!!」」
「あ、俺空気に徹していい?」
「ダメに決まってるだろ」
こうして、俺達は遊園地”モジQ”に向かった。
そこまでは、まずバス、そして電車、そして新幹線、そして電車、からのバス。そこまでの交通機関を利用してようやくたどり着く場所にある。
結局道中も基本宮本と一緒なわけで、時々変な視線が向けられていたのは間違いではないだろう。
「「ついたーー!!」」
ついてしまった。
っていうか、こっちはそろそろ半袖短パンでもいいかもしれないと思うくらいに暑い。
チケットも購入し、入り口ゲートを通った。すごいよな、今って顔パスなんだぜ?
「長かったな」
「ああ、もう満足だ」
俺は心底そう思った。普段こんな遠くに来るときは親としか来ないんだ。さすがにここまで結構疲れた。
「それは早すぎだ」
だが、そんな俺に鞭を打つように鋭いツッコミを入れてくれた宮本。
まじで、普段の学校でこれくらい普通にしていればいいのに。
「モジQはじめてです!! 感激ですっ」
セラが感激を受けている。意外と今回の外出は香原にとってもセラにとっても、いろんな意味でいい経験になるかもしれないな。
そう、ポジティブに行こう。せっかく来たんだ、俺も楽しまねば!!
ってか、モジQって。ネーミングセンスヤバすぎだろ。
モジってなに?
「ねっねっ、何から乗るっ?」
香原楽しそうだな。可愛い奴め。
「翔さんあれから乗りましょう!!」
セラもセラか。可愛い奴め。
「あれから乗ろうよっ」
また香原か、2人とも可愛い奴め。
「「へへっ」」
「ううっ!?」
なんだ今の寒気は? 誰かに心の中を見られたような感覚だ。
「今の会話、テンポ良かったぞ?」
宮本、客観的意見ありがとう。
そうして、俺達は最初にジェットコースターに乗ることになったのだがハプニング発生だ。
「これは困ったな…」
「ああ、困ったな」
本当に困った。スタッフには俺達しか見えていない。つまり二人で案内されるわけだ。
香原とセラの席がないっ。
「私たち、安全バーいらなくない?」
「ええ、いらないですね」
んっ!? はっ!? やばーー、ウケる。
逆にどこにつかまるの?
「おい、どこのアニメやねん」
「何とかなるって」
ならないだろっ。どうすっかな。
ここまで来て、こいつらが楽しめないのは嫌だしな。
……。
「はぁーー、嫌だけどこれしかないな」
「どうした藤崎?」
「スタッフさん、俺達妹が2人いたんです」
「はい? お客様どうしました?」
「その妹2人は昨日亡くなってしまって」
「そ、それはご愁傷様でした」
「でも俺達は今日4人で来ているんです!!」
「は、はいぃ」
「ですから、4人で席を準備していただけないでしょうか!?」
「い、いえお客様、後ろも控えていますのでぇ」
「そこをなんとか!! この通り!!」
俺は社会的に死んだな。大嘘をつく挙句にこんな大衆の目の前で頭を下げるなんて。
「私たち、昨日死んでなくない? ねぇセラ」
「はい、昨日は死んでませんよ?」
お前たちは黙ってろ。昨日じゃなくても死んでるだろ。
「は、はぁ? そこまで仰るのでしたら。どうぞ4名様ですね」
「ありがとうございます!! しっかり妹たちの分も楽しんできます!!」
「は、はい。行ってらっしゃいっ」
「つらい…」
「しょうがないだろう。我慢しろ」
「なるほどっ!! そして、誰もいない所に私たちが座ればいいのですね?」
「……………そうだ」
今俺達は、非常に悪目立ち。すまない、宮本!!
そしてスタッフの「3・2・1」の声で間もなくスタートしようとしている。
こういうのはノリと雰囲気だ!!
「それでは行ってらっしゃーい」
「宮本。俺達は、カップルだっ!!」
「なるほど、違うがな」
ジェットコースターの鉄が移動する音と風の音が鳴り響く中、香原は絶叫コースターで間違いなく絶叫している。そしてセラは逝ってるな、あれ。
「いやぁああああ!!」
「……………」
「セラっ!? 目っ!? 白目っ!? 戻ってきてーーーぇえあぁっ!!」
「「南無三」」
「男2人!! 馬鹿言ってないで、セラがっあぁあ!!」
「………はっ!? 私、今綺麗なお花畑が見えたような?」
「幽霊ジョークかましている場合じゃ…」
一瞬セラが正気を取り戻したと思ったが、すぐに言ったな、あれ。
「……………ふっ」
「セラぁぁあああ!?」
俺達はほかの乗り物にも色々乗った。全部スタッフの人には妹が死んでしまってと言って。
なんか、セラが失神してたり、香原がツッコミキャラとキャラ崩壊したり普段じゃありえないような一面が見たので非常に刺激的だった。
「…ジェットコースター、ヤバすぎだね」
「「南無三」」
「いつまで言ってんの!?」
「お花畑…」
「セラっ!! いい加減戻ってきなさい!!」
「はっ!? 紅華さん、私はなにを?」
「ふぅ~、何とか一命はとりとめたわねっ」
「「いや、死んでるだろ」」
「そこっ!! おだまり!!」
なに? 遊園地めっちゃおもろいやん。
ジェットコースター系の絶叫系をほとんど乗りつくした俺達が次に足を運んだのは、
「ここは、どする?」
「ここは、いくだろ」
お化け屋敷だった。
前代未聞だろう。幽霊と人間が一緒にお化け屋敷に入るなんて。
むしろ、香原達が脅かし役には入った方が絶対怖いのは間違いない。
「いいよな?」
「え、ええ。別に私は大丈夫ですけど、紅華さんが嫌みたいですよ?」
「な、な、な、なに言ってるの? 別に大丈夫だしねっ!!」
「そうだよなぁ?幽霊がお化け、怖いはずないもんなぁ?」
「ええ、も、もちろんですっ」
「あ、あたりまえじゃない? む、むしろ先頭歩いてあげるわよ!!」
「やれやれだ、行くぞ藤崎!!」
何で乗り気なの宮本よ。
ってか、周りから見たら俺達の方が先頭だからな?
「さあ、い、行くわよっ!!」
「ええ!! 行ってや、や…」
「や?」
「行ってやりましょう!!」
そうして本日のビッグイベントがが幕を開けるのであった。
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