第6話 幽霊と友達作ってみた その1
梅雨の時期に入りそうな曇りの天気が続いている本日日曜日、自宅にて、俺、藤崎はピンチに立たされている。
「そろそろ、俺一人では限界だ」
ここ最近自分一人では限界を感じ始めていた。その内容とは、ずばり、
”同居人幽霊の相手”である。
すいませんお母さん、俺一人では荷が重かったようです。
決して嫌いになったとかそういうわけではなくて、単純にネタ切れなのだ。基本的に、散歩、ゲーム、漫画、トランプ等のカードゲーム、人生ゲーム類のボードゲーム。
過ごし始めて、半年になるけどこれらの繰り返しはさすがに飽きてきたし、家族に変な誤解されるのもなかなかにつらい。
というのも、漫画やゲームはまだ静かに読むか、ゲームならオンラインで通話といえば何とかなるのだが、この前トランプをやっていた時のことだ。
その時はババ抜きをやっていて、弟が漫画を部屋に借りに部屋に入ってきたんだ。想像してみてほしい。
実の家族がだぞ? 部屋に入ったらひとりで話しながら、トランプのババ抜きで楽しんでる姿を。
友達がいなくてて頭おかしくなったと言われてもしょうがないだろう。もう案の定、ゴキブリを見るような目で部屋を去ったさ。そこから1週間は口をきいてくれなかった。
ボードゲームの時もそうだった。その時は人生ゲームやっていたのだが、まだ弟の方は対応が楽だった。母親が学校のことで相談しに部屋に入ってきたんだ。さすがにノックしてほしかったが。
そしたらどうしたと思う? 「翔、病院行くから準備するから準備しなさい」だよ?
「いや待て、どこに行くつもりだい?」って聞いたら、「精神外科よ!!」って本気で言われたのを今でも覚えている。
何とか、「ボードゲームってどんなもんかわからなかったから練習していたんだ」と説得? できていたのかどうか謎だったが病院行きだけは免れた。「遊び相手がどうしても欲しかったら私たちもいるからね」って言ってたかな?
とまあ、このように耐えがたい経験をしてしまったこともあり、いろんな意味でヤバイ。
香原も、飽きが出始めてしまうだろう。何とかせねば。
「なあなあ、お前以外に幽霊っていないの?」
俺は、「なにそれ!? 私にもう飽きたって言うの?」って言われるのをビビりながら恐る恐る訊いてみた。
「え?いるよ」
香原はケロッと答えた。まあテレビとかね、霊媒師が芸能人のお祓いをするテレビなんてものあったりするくらいだからいてもおかしくないなとは思っていたけど、居たんなら言えよって思わずに入られなかった。
「へ、へぇ~。具体的どんなのがいるんだ?」
「なに? いつも見えてなかったの? てっきり見えていて見えてないフリしてるだけかと思っていたよ」
おいおいどこまで天然かますつもりやねん。
んなわけないだろっ!! それができるなら俺が霊媒師になって今頃お前を成仏させてあげられてるわ。
「んで、どんなのがいるんだよ?」
「ん~とね、人の幽霊はもちろんいるし犬とか猫とは普通にいるよ? 後はね~、カエルとか鳥とかかな」
香原は淡々と話してくれた。なるほど、意外と俺達と見えてるものは一緒なんだな。
「あ、あとねっ」
続きがまだあるらしい、意外と一緒ってのが理解できたからもう満足なんだけど。
「ライオンなんだけど尻尾が蛇のやつとか…」
はっ?いや、
「それキメラ~~~!!」
「あと、馬に羽が生えた奴もいたな~」
「それペガサス~~!! もう伝説の生き物じゃん!! 幽霊じゃないじゃん!!」
「え? 結構普通にいるよ?」
「普通に!? そちらの見えてる世界ヤバすぎだろ!!」
「まだまだいるよ~、体人間なんだけど頭が牛の人、下半身馬で上半身は人ねっ」
「ねっ」じゃねえよ。嘘だろ絶対。
「まあ嘘なんだけどね?」
突如言い放たれた真実!?
でも、心底安心した。そんな死んだにも出てきたような生物が普通に居たらもう何でもありだろ。
「ってかどこからが嘘なのよ」
「馬に羽が生えいる奴がいるとこまでかな?」
「キメラガチなのーーー。そうなのーーー」
それもう蛇が生前、ライオンに食われて、その蛇がライオン呪い殺して、そして、そして、、あ~~~~!! もう何ツッコんでいいのかわからねぇ!!
目の前の嘘つき霊は大変反応が面白かったようで、腹抱えて爆笑しておられる。
なんか疲れたな、ふぃ。
「は、はは、一旦もういいです」
「面白いね~」
「ハイハイ、オモシロイネ~」
いかんいかん。ペースを乱された。本題に戻していこう。
「香原さん!!」
「はいっ!! なんでしょうか!!」
「友達が欲しくはありませんか?」
「ん? いらないけど?」
おっとーー? なんでそんなに即答なのよ。お前寂しがりやったヤーン。
「な、なんでいらないんだい?」
「だって、だって……」
言葉を詰まらせるその姿は、少し怖がっているように見えた。
…香原…。それもそうか、こいつ急に幽霊になって見えないものが見えるようになって怖くないわけがないよな。
そして香原は、必死に次の言葉をだす。
「だって、幽霊なんだよ!!!!」
そうだよな、幽霊だも…、って、いや、
「それ、おまえもや~~~~ん!!!!」
そんな理由?! みんなお前の仲間といっても過言ではないぞ?
「翔にはわからないんだよ。その人? 動物? 姿を見たことないなからさ。みんな目が死んでるし、どこか生気が抜けてるんだよ。それが、周りにいっぱい居てみなさいよ。こっちは怖すぎてたまったもんじゃないわ」
確かに香原が言うことにも一理ある。想像してみたら正直恐ろしい。
まあ、友達は無理に作るものでもなかったか。
「だが、それでお前はいいのか? 俺ばっかりじゃつまらないだろ?」
「そんなことないよ? 毎日すっごく楽しいの!」
ほう? 素直にうれしくなるが、こいつがいいならそれでもいいのか。
そして、だんだん「まあいいか」と思い始めていた時だった。
「あ、でも……」
香原が何かを思い出したように口を開いた。
「この霊の体になってから、たまに気になる霊を見かけるの」
なんと、どいつも目が死んでいる霊ばっかなのに気になる霊がいると? そいつは一体?
「へぇ、どんな奴なんだ?」
「女の子で~」
「ほう」
「髪の毛はボブで~」
ずいぶんお洒落な霊だな。
「ほう」
「私とは違うけど、学生服着てて~」
「ほう?」
ん?おや?
「その人は翔と同じ学校の男の子のこと会話していてね? 私すっごく気になってるの」
…………………………………。
「おい……。それはいつ見たんだ?」
「幽霊になってからすぐだったよ? いつ話しかけようかずっと迷ってたんだね~」
…………………………………。
「な、なんで……」
「ん?どしたの?」
「なんでそんな大事なこと早く言わねんだよ~~~~!!!!」
なに? 馬鹿なの? この子馬鹿なの? だから、いきなり幽霊姿で俺の前に現れた時、あんなに落ち着いていたのか!?
なんかおかしいと思ったんだよ!! 普段、頭の容量が爆発すると大慌てになるくせになっ!!
そうとなれば決まりだ。
「よし、香原」
「な、なによ?」
「明日は月曜日。学生はみんな登校してくる日だ。その気になる女性の幽霊の隣にいた男性…、長いな。ここからはその男性をXと称する」
「エ、エックス?」
「そうだ! 明日はそのXを探すぞ!!」
「お、おー」
そうして明日の目標は決まった。香原はあまり乗り気ではないみたいだが、かまうまい。
明日が楽しみだ。ひっひっひっ。
香原は、俺の抑えきれない感情が顔に出ていたのだろう。
それを見て、こう言い放った。
「翔? 顔怖いよ?」
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