第3話

分かっていても随分と本格的だ、なんて感心して無意識のうちにキョロキョロしてしまう。ちょっと昔の日本をモチーフにした雰囲気が、あちこちに散りばめられている。


店員さんを見るとこれも昔ながらの格好、はかまにエプロンをして席まで案内をしてくれた。


すると、店内をパタパタ動き回りながら笑顔を振りまく一人の店員さんが、こちらを見るなり近づいてくる。挨拶をしながら接客をしようかというその瞬間、表情を変えて少しだけ怪訝そうに、


「いらっしゃいませ! ……あれ? お客さん、随分不思議な格好をされてますね?」


「え?」


突拍子もない言葉に、私は何も考えぬまま声が漏れてしまった。


「え、っと……これは制服で……」


「制服?」


けれど少し考えたところで驚きは驚きのまま。落ち着いてみれば確かに、ここは大正時代の喫茶店をモチーフにしてるんだから、制服もこんな今風じゃないって設定なのは当たり前かな、なんて不安になりながら。


店員の彼女は不思議そうにしながらも、どこか興味津々で、まるで本当に制服のことなんか見たこともないかのような表情を浮かべていて。


「こら、お客様にそんなことを言ってはいけませんよ。」


「あ、そうでした……。その、お客様……申し訳ございませんでした!」


奥の方から別の、落ち着いた雰囲気の男性の声が聞こえてきた。


その声は彼女をたしなめるようにすると、彼女はその言葉通り我に返ったかのようにして深々と謝ってくれた。


「い、いやいや……その、こっちも変な、格好……で来たのも悪かったので。」


私はそう告げて、彼女はそれに納得したのかしていないのか、先ほど注意を受けたのもなかったかのようにして、また溌剌とした表情で動き出す。


「それではお席にご案内しますね。」


彼女の言葉に従ってそっと席まで着いていく。


その短い道すがら、先の声の主である男性が店の奥に座っていて、ふと目が合う。


どうぞごゆっくり。そんな口の動きだけで声は聞こえなかったが、さっき聞こえた深い男性らしい声が脳内再生されて、思わず会釈を返した。





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