第5話 学校への道中 車

車にしよう。学校へ行く途中に、交差点がある。もしかしたら、またあいつがタックルしてくるかもしれないな。そんなことを考えながら私は、信号が赤と分かりながら道へと飛び出した。

こちらに走ってきていた派手な緑の蛍光色のオープンカーとの距離、わずか。もう、これで……。目をつぶる。


キキーーー!!!


とてつもなく大きいブレーキ音に思わず目を開けた。痛みがない。私は車と当たっていなかった。私のスカートに触れるか触れないかギリギリのところで、車は止まっていた。そして、馴染みのある声が聞こえた。


「残念な先輩、ちっす!!」

「なっっ!!」


まぎれもなくあいつだった。シャレたギラッギラのサングラスを頭に乗っけて。いや、そんなことより!! なんであいつ、車なんか乗ってるんだよ!! 高校生でしょーが!! 驚きすぎて私は、交差点の真ん中で突っ立ってしまっている。みんなが見ていた。


「あんた、なんで車なんか!」

「もーう、大変だったんすよ? 先輩のこのためだけにわざわざ、不良から車ぶんどってきたんですよ!?」

「なにしてんの、返してやれ」

「乗るっすか?」

「いや、聞いてた? いらないし」

「ちょっと! このサングラス見てくださいよ! かっこいいっすよね! 似合ってるっすよね! 車の中にあったんすよ!!」


声が大きい!! うるさい!! そしてサングラスといいオープンカーといい、正直すべてが似合いすぎてて非の打ちどころがなく、何も言い返せないのがウザいよ、あんた!!


信号が青に変わってみんなが歩きだしたのに気づき、私も恥ずかしい顔を隠すために下を向きながら歩き始めた。まだ、みんなに見られているような気がして早くその場から去りたい気持ちに襲われた。ブーンと大きなエンジン音が聞こえそっちを見ると、それとともにあいつが去っていった。本当になんで、あいつあんなにうまいんだよ、運転。そんなことを思いながらしばしあいつを見ていると、目が合ってしまった。いや、前向け!! 阿保か!! そう心の中で叫んでいつの間にかあいつを心配している自分がいることに気づいた。いやいや、別に心配なんかしてないし。うんうん、してないして、ない。


「では、ごきげんよう! 学校で!!」


そしてウインクをされた。っ!! いや、本当に前向けって!! なにしてんの!!しかも、なんか流れ星みたいなのがウインクと同時に見えたわ!! それに、なんなの!! なん、で、こんなに心臓、が……。ドクドクと激しく脈を打って、全身が振動しているかのようだ。なんで、こんなドキドキなんかして……。痛い……。何かがおかしい。私の何かがおかしい。本当に何かが、おかしすぎる。













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