第3話 公園で、灯油とライターで
うん、燃やすわ。三度目の正直。
私は、灯油の入ったポリタンクとライターを準備した。今日は休日で、公園に来ている。公園まで、重いポリタンクを運ぶのは本当に疲れた。さすがに、学校にポリタンクを持っていくのは怪しまれるからな。今は誰もいない時間帯だし、それにあいつだっていない。
ポリタンクの蓋を開け、力を振り絞って持ち上げ、頭から思い切り灯油をかぶった私は、視界がにじむ中、ポリタンクを置いて、ポケットからライターを取り出した。私は着火レバーに親指を乗せ、火をつけようとした。
カチャッ
「ん、あれ」
何回やっても火はつかない。なんで? 新品なのに……。不思議に思っていた私の後ろから、馴染みのある声が聞こえた。
「はーい、残念(笑)」
う、嘘でしょ!? 驚いた顔をして、振り向いた私は、公園の入り口の柵に腕を組みながら、もたれかかり、にやりと笑うあいつの姿を捉えた。なんで、ここが!? なんで、あいつが知っている!? だが、そんな驚きは一瞬で無くなって、私はそのことが気に障り始めた。
「お前、キモいぞ」
「え、何がですか?」
「なぜ、ここを知っている?」
「内緒です」
「また、それかよ……」
だんだん呆れてきた。あいつはストーカーか何かか? 本当になんでここを知っているんだ。
「お前、今度は何をした」
「空のライターと変えました」
「……」
「あ! ちなみに先輩が頭から頑張って、ぶっかけていた液体は水です」
「は、え?」
服を嗅いでみる。確かに灯油のにおいがしない。そして寒い。
「ほんと先輩、どれだけ、風邪ひきたいんですか(笑)」
笑っているあいつがウザすぎる。
「また、熱湯かけましょうか?」
「……いらない。そんなことよりあんた灯油とライターどこやったの」
「内緒です。教えたらまた自殺しかけないんで」
私で遊びやがって。本当に調子が狂うわ。
「……先輩、私服可愛すぎです」
「な、は!?」
いやいやいや、あいつは急に何を言っているんだ。意味が分からない。
「そんな丈の短い白の可愛いワンピースを着て……それ、俺に襲ってほしいって言っているようなものじゃないですか」
「は!? な、なに言ってんの! こ、これは、パジャマのまま、出てきただけで……!」
「さっきから、動揺して照れてるし」
「て、照れてない!!」
「ムキになってますけど。それに、パジャマって。どんだけ可愛いの着て寝てるんですか」
「う、うるさい!!」
私は、空のライターをポケットに入れ、空になったポリタンクを片手で持って、あいつがいない方の入り口から出て、そのまま家へと無我夢中で走り続けた。
耳が赤く染まっているのがあいつにバレないように。
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