ドリームキャッチャー6

悪の黒幕達が興味深そうに眺める中、二機のアームヘッドはそんなことはつゆとも知らず対峙していた。初手の切り結びからCENDRILLONが弱敵でないと確信したDREAMCATHERはどう打って出るか思案しCENDRILLONもまた攻めあぐねていた。


さながら拳法の達人同士の試合のようであった。アームヘッドは単なるロボットではなく、人機の一体でありヒトの体の延長であった。かつて、自由に海を闊歩したCENDRILLONの前世の記憶がマカネに過ぎった。


アームヘッドは過去世においても戦士であり兵士であった。あるいはならず者であったかもしれない。その戦闘記憶が数万年の時と肉体の違いを超越し蘇り警告する。相手は自分たちに何度も辛酸を舐めさせた強敵である。


それでも、マカネは思った。このような姿にされ戦わされる羽目になった怒りを、そうCENDRILLONも同じ怒りを持った。我々は土に還り故郷で眠っていた。やつらの都合で目覚めさせられた、このような姿で。


我々は!元の姿を取り戻す!二つの魂の同調が、力を呼び覚ます。一対しかなかったCENDRILLONの腕が本来あるはずのあと一対の腕を生やす!しかもその腕は不可視なのだ!


シークレットフォースと名付けられたその能力は、本当の強敵にしか使って来なかった。透明の2つの腕は先端が鞭状にしなり、DREAMCATHERを牽制する。


そしてそれは武器では無い!移動手段だ!ドーム型闘技場の屋上にその鞭を引っ掛け、CENDRILLONが浮く!三次元戦闘は敵だけの専売特許ではない!


ダイセンが目を見開く。飛行能力?否、浮き方の挙動が不自然だ。それに先程の装甲への衝撃。なんらかの調和能力を使用している?なんたる……。ダイセンは思った。彼女が戦いへの道へと沈まぬため最大の武器を奪ったつもりだった。


しかし運命はそれを望まなかったか。愛機たるDREAMCATHERが光の剣を構える。武闘会を望んだシンデレラを迎え撃つ為に。ダイセンの口が歪んだ。ああ、同じだ。私達は。


戦いへの渇望が心の底にある為に、歴史の葬列へと否応なしに加わるのだ。再び二機のアームヘッドが切り結んだ。救世主の後裔の筆頭たるDREAMCATHERの剣と力を望むCENDRILLONの拳がぶつかり、闘いの重力が衝撃波を引き起こす!


やはり良い!能異頭や他のアームヘッドとは違う!俺が望んでいたのはこの闘いだ。沸き起こる思考をマカネは否定する。これは望んでいたものではない。私の体が奪われなければトリフネで今も日常を続けていたはずなのだ。


日常とはなんだ?この空なき地下世界でこのまま?ふとヴァルハラ地区とトリフネ地区を結ぶ地下大特急の途中でみた本物の青空がフラッシュバックする。かつての世界。それを過去の人々は力を求めて棄てたのだ。


ああ、同じだ。俺は俺の体を取り戻す。力を取り戻す為に。イグナイターとして!「あははは!」CENDRILLONは笑った。



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