ワイルドカード4

「まったく女王の自覚を少しは持って欲しいゾ」コートの女、ナイトメアは自分の巫女の身勝手にうんざりしていた。「まったく誰に会いにいったんだゾ?」しばらくナイトメアは彼女を探していたが能異頭ノイズの波動を感じると”仕事”に戻っていった。



「すごかったです!ツボミさん」マカネは少女のような笑顔をおっさんの顔でして見せた。「…情けないところ見せてしまったわね。あなたのようにはいかないものね」「そんな…」実際マカネにはツボミの精神的脆さを感じ取れてはいた。


それでもそれを隠し通そうとするツボミに気を遣って言葉には出せないでいた。「わたしはそうたいしたものじゃないわ」ツボミはマカネには自分の本心を言うべきではと常々思ってはいるが弱さを見せる勇気がなかった。結局最後まで。「すこし二人で歩きましょうか」


中身は二人とも少女なのだが片方のガワはおっさんなのでまわりからどう見られているかマカネは若干懸念したが勝利に喜ぶ様子もない先輩お嬢様への心配がそれに勝った。「どうすればグイグイ攻めれますかね」「ヤる気で行けばいいと思いますよ」「そういうものかしら」


ヴァルハラ地区の市街は旧リズの近代建築を模しており煉瓦造り風の建物が並んでいる。ヴァルハラは観光都市であり近隣の地区から高速地下鉄で来る観光客がほとんどだ。そして彼らの目当てはもっぱら闘技場でありこういった場所の人出は少ない。


そのため、その少女は目立った。10にも満たないであろう少女がひとりで出歩いている。治安が悪い地区ではないとは言え非常に不自然だ。少女は親とはぐれたにしては不自然に堂々としていた。その少女と目があった。少女が笑った。


「あいたかったわ」少女が口を開いた。会いたかった?ツボミのファンか?マカネはいぶかしんだ。自分の顔を知るものはいないはずだから。「俺の名はウヅメ。アメノいやカヅノウヅメよ」少女が自己紹介する。「わたしはツボミ」といって握手しようとするツボミを彼女は無視した。


「俺は貴様になど興味はないよ」少女はツボミの手を跳ね除けた。「なんてつまらないニンゲン。弱くて脆くてどこにでもいるような。俺が興味を持っているのは君よ。マカネちゃん」ウヅメがマカネをみた。


図星と中傷のショックでツボミは気付いていないがウヅメはマカネの正体について言及した。「あなたはだれ…?」「俺と友達になってよ。マカネちゃん」ウヅメの目がマカネを見た。マカネはその幼い少女に戦慄さえ覚えた。そして既視感も。「素敵な中身をしてるんだ。君は」


「なにを知っているの?」「俺には見えているんだよ。君がもたらす破滅をね」少女らしくない一人称も併せ不気味な印象を感じる。「破滅…」「ほうら、君に吸い寄せられてきたよ。破滅がね」能異頭が現れた!先日倒したはずの!

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