酒は飲むな
喜多新一郎
酒だけは飲むな
「酒だけは絶対に飲むな。いいか?酒を飲むやつにはろくな奴は居ない。例えば、昔馴染みだった前原。あいつのことを教えてやる。前原は昔は真面目な好青年だった。俺もよくあいつにノートを借りたもんだよ。めちゃくちゃ綺麗なノートだったからな。だがな、だがあいつは大学に合格してから酒をサークルの仲間と飲むようになったらしい。浪人して同じ大学に行った時驚いたもんだよ。あいつは酒を飲むことにしか喜びを感じなくなっていたよ。あの好青年だった前原が。ありえない!あいつと過ごした三年で性根は知ってたつもりだった。けどな、酒はその根っこを腐らせちまうんだよ。そんな毒をなぜ飲むのか不思議になって俺も飲んでみたんだよ。けどな、不味かったよ。あんな不味いものは初めて飲んだよ!昔、金子にドリンクバーで飲まされたコーヒーコーラアイスフロートガムシロップのせより不味い!悔しかったよ。あんなもので人がダメになる様をまざまざと見せつけられたんだ。結局あいつは内定が決まった晩に急性アルコール中毒で死んじまったよ。酒さえなければあいつはもっといい企業に就職できたろうし、死ぬこともなかった!ああ、理不尽だ! 金子みたいな本当のクズはのうのうと生きているというのに!金子はクズだ!高校の頃から覚せい剤をやっているのに捕まる気配がない。それもこれもあいつの親父が警視総監だからだ。全部あのじじいがもみ消してるんだよ!絶対にな!くそ!くそ!くそ!あいつが死ねばよかったんだ!
はぁっはぁっ!いや、酒も麻薬も変わらないか。どっちも依存性があることには変わりない。とにかく、何回も言うが酒だけはやめておけ。これだけ口を酸っぱくして言ったんだ。お前は絶対に酒を飲んではならぬ。これだけは間違いない。」
父はそう言って既に空になった杯をあおった。
酒は飲むな 喜多新一郎 @kida_shinichiro
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