第180話:三者の今・・・
*前半:ルーク
中盤:ある人
後半:別のある人・・・と、視点が変わります。
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「じゃあ皆さん、お気をつけて」
「おう! 本当にありがとうな。この恩は次に会った時からなず返すよ」
「いやいや、頂くものは頂いたんでお気になさらずに」
うん、本当。お金いっぱい貰えたよ。
売ったのは五つ。簡易転移装置を持たないパーティーが五つだったから。
取引中に結局、ボス産魔法陣が消えたので自分たちで一個消費。
だから残りは三つ……。
「なーんてこと、ある訳ないもんなぁ」
「いっぱい作ったねぇ」
ダンジョンの入口に転がる石で、簡易転移装置を量産。
全部がここの位置を記憶しているけど、上書き可能だからこれからは便利に使わせて貰おう。
けどこの石、あのパーティーが落としたものかなぁ。
最下層で生き残っていたモンスターと戦闘中だった、あの人たちの。
もしそうなら返したほうがいいのかな?
一個返しても手元にまだ残っているから、いつでも量産可能だ。
転移場所の上書きも可能だし、これからは自由にダンジョンと地上とを行き来出来るな。
「じゃ、俺たちは帰るか」
「おぉー! ご飯ご飯~♪」
その頃地上では──
「なんだって!? ダ、ダンジョンが復活した?」
「復活? なんのことじゃん?」
「お馬鹿は黙っていろ。コアは自動再生しないものではないのか?」
地上に戻ったアルゲインは、雇った冒険者の口から出た言葉に驚愕していた。
その冒険者も別の冒険者から聞いた話なので、直接見たわけではない。
「生き残りのモンスターにしちゃあ、数が多すぎる。いや、多いというよりは以前と同じになったって感じだとか」
「ディサイドでも突然ダンジョンが復活したってことだし、ここもそうなったっておかしくはない」
冒険者らの意見はこうだ。
確かにとアルゲインも考え込む。
「ふむ……確かディサイドの迷宮では、コアが復活してから内部が拡張されている──だったな?」
「あぁ、そう聞いている。ってことは、こっちもか!?」
「可能性はあるだろう。トロンスタ王国との国境近くにある、長年死んだままだったダンジョン。あそこも近年になって復活したそうだが、以前より階層が増えているらしいからな」
アルゲインはマロウナにいた際に集めた情報を思い出した。
国境に近いからという理由でコアを破壊したダンジョンだが、数年前に突然復活を遂げている。
当時は「長い年月をかけてコアが蘇った」などと言われていたが、実際にはかのダンジョン以外では──
「トリスタン島のダンジョンも、確かそうだったな」
そう。
ルークエインが統治するトリスタン島のダンジョンとの二つだけだ。
(さて、偶然かな? 確か国境のダンジョンにあのルークエインが入ったことがある──という情報は俺様の元にも届いていた。そこでドラゴンと契約しただなんだのということもだ。まさかルークエインがこの町に……)
「なーんてことはないか! はっはっはっはっは」
なーんてことが、あっているのだなこれが。
しかし、お互い運がいいのか悪いのか。
アルゲインはこの後すぐ、簡易転移装置で砂漠のダンジョン最下層へと直行。
その時ルークとシアはレゾルの町へと向かう為、砂漠の中を歩いていた。
「どうせだったら町中で位置情報の上書きすればよかったなぁ」
「うぅ、ご飯まで遠いおぉ」
「遠いなぁ」
そんな愚痴をこぼしながら、二人はとぼとぼと町に向かって歩くのだった。
その頃、あるところで──
「なんだと!? ディサイド迷宮が復活しただとぉ!?」
ドンっと豪華な造りの机を叩いたのは、ローブを来た男だった。
身に纏うそのローブも、魔術師と言うには随分派手な色合いだ。
だが机の脇に置かれた杖は、確かに魔術を嗜む者が手にする物で間違いない。もちろん、派手な宝石が散りばめられてはいる。
「潜伏させている部下からの報告ですので、間違いありませんメッサ様」
「く……いったいどういうことだ。何故破壊したコアが復活した? 確かトロンスタ国境付近のダンジョンも……」
「数年前に突然復活はしておりましたが、長年かけてコアが再生、もしくは新しいコアが誕生したのではと噂はされているようですね」
ここは大陸から北東の位置に浮かぶ島──といっても、トリスタン島の数十倍はあろうかという面積を持つ。
その島には国が一つ存在し、それなりに平和を築いていた。
だが島には小さなダンジョンが一つあるだけ。
諸外国との交易はあまり盛んではない。
そして現国王は野望を抱く男だった。
「こんな島国など出て、大陸を支配する!」
自然に恵まれ、鉱山もあることから国民の暮らしは決して貧しくはない。
周りを海に囲まれているため、他国から攻められることもほとんどなく、これまで穏やかな暮らしが続いていた。
だが現国王にとって、島国だからこそ──ぼっち感があったようだ。
お隣の国ときゃっきゃウフフしたい!
外交したい!
時々戦争もしてみたい!!
そんな国王をいさめる者がほとんどなのだが、一部には自らの利益のために奮闘する者もいた。
この男──
宮廷魔術師のひとりにして、魔術の研究が大好きっ子なメッサもそのひとりである。
「くっ。ディトランダのいくつかのダンジョンのコアを破壊し、疲弊させてから攻め込む手はずであったのに」
「引き続き、他のダンジョンのコアを破壊させますか?」
「……そうだな。ついでにコア復活の原因調査もしろ」
「御意っ」
返事をすると、メッサへ報告に来ていた男は一瞬にして姿を消した。
投影型の魔導通話装置だ。
水晶で造られた大きな鏡のような魔導通話装置に触れ、魔力の流れを遮断したメッサはため息を吐く。
「自然現象、なのか? それとも外部による要因によるものか……もし後者であった場合は──」
欲しい。
コアを復活させる力が──欲しい!
メッサの顔が醜く歪む瞬間であった。
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