第178話:金銀冒険者
結論から言おう。
さすが金銀冒険者だ!!
「なんだよ……モンスター出ないのにみんな本気モードじゃん」
「みんな眠くならないねぇ」
「ならないなぁ」
むしろ俺が眠いです。
三交代制だからってのもあるだろう。
だけど二番目の交代メンバーは短時間寝ては見張りに立つ。
そのメンバーが三番目と交代する直前ぐらいが、きっと一番眠いだろうって踏んだんだけども。
めちゃくちゃ元気だった。
トイレ~なんて言ってテントから出てみたけど、普通に焚火を囲んで談笑してたし。
しかも台座の近くで。
おかげで欠片をねこばばしに行くことも出来なかった。
そして朝になった。
といっても地下なので、時計でしか時間は測れないけど。
「さぁ、どうするかなぁ」
「どうすう?」
「こっそり取って来るしかないよなぁ」
「ないねぇ」
まぁ冒険者は特に台座を見張っているって訳でもなく、このボス部屋に何かないか調べているだけだから──
つまり──
何か、を作ってやればそっちに意識を向けられるかも?
何かを──さて、何を作るかな。
この場合、効果的なのは更に地下に続く隠し通路──とかそんなんだよな。
さて、それをどうやって作るか。
「じゃじゃーん。ここに次元石がありまーす」
「おぉ?」
と小声で言うと、シアが首を傾げて俺を見ていた。
「つまりだ。冒険者の気を引くものを作るんだよ」
次元石を錬成した木の棒の先に括りつけて、台座から遠く誰にも見られていない壁をこつこつ叩く。
すると当然、壁に穴が開く。
「シア、誰かが来ない様見張っててくれ」
「分かったぉ」
少し奥まで穴を開け、今度はその辺の石と薪を錬成して扉を作る。
それを隠し扉代りに壁に埋めてっと。
あとは開けた穴を、ボスのホーンディストラクション石で──埋める!
ドゴォーンっと物凄い音がして壁が崩れた。
「ど、どうしたんだ!?」
さっそく金銀冒険者がやってくる。
「た、大変なんだ! いや、ちょっと用を足そうと思って来たんだけどさ」
「ウーク、おしっこだったお?」
女の子がおしっこ言うんじゃありません!
ふり、ふりだってば!!
「そんで、なんか壁にひびがあったから突いたらこうなって」
「崩れたのか? ってことは、奥は空洞に?」
「かもしれないな。まさか隠し通路があったりするんじゃ」
そうそう、あるかもあるかも。
もちろん空洞は俺が造ったものだし、その先は行き止まりだ。
が、その空洞も角石でワザと天井を崩して、今の出埋まったはずだ。
「よし、掘り起こすぞ!」
「他の奴らも読んでこよう」
「あ、それなら俺が行きます。さ、シア行くぞ!」
「おー!」
そうなるよねー。
人手が減ったところで、台座から欠片を拝借する──という手はずだ。
「誰も見ていないな?」
キョロキョロと台座を前に辺りを見渡す。そして台座の上に置かれた欠片を──
「あれ?」
「ウーク、シア取ったぉ」
「……そうか。じゃあこの中に、な」
「うん」
錬金BOXを差し出すと、シアがその中に欠片をころんっと入れた。
錬成して蓋を開けると、転がっていたのは真ん丸な玉だ。
「今回は粉々にされてなかっただけに、大きな欠片だけだったようだな」
「とりだすぅ?」
「ちょっと離れるか。なんちゃって隠し通路の反対側にいこう」
コアは取り出さず、蓋を閉めてそのまま移動。
全員の意識が隠し通路モドキに向いている間に、こっそり見えない場所で箱からコアを──
「取り出すぞ」
「おぉー! シア準備オッケーだぉ」
箱からコアを取り出すと、ふぉ~っと浮かんで飛んでいく。
それを離れた所からひやひやしながら見守ったが、誰にも見つからずにドッキング出来たようだ。
そして揺れる。
「よしよし。ボスが出てくる──」
──な、と思った瞬間だ。
「揺れだ! 全員気を付けろ!!」
「ダンジョンの中で地震だと? 明らかにおかしい。何かが起きる前兆だ!」
「全員、戦闘態勢!!」
さ、さすが金銀冒険者さんですね。
なんていうか……
「おい見ろ! ダンジョンボスのシャドウデュラハンだ!!」
「懐かしいじゃねーか、ボスさんよぉ」
「テンションあげあげ~っ」
なんていうか……
頼もしすぎて泣けてくる。
「ウーク、ボス死んじゃったぉぉ」
「死んじゃったなぁ……」
俺とシアが見つめる先で、真っ黒な影のような首なしデュラハンは金銀冒険者にフルボッコされて昇天した。
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