第171話:コアが

 翌日。

 シアと集めたコアの欠片を錬金BOXに入れて──


「足りない……」

「まんまうじゃない……」


 箱から取り出したコアには窪みがあって、明らかに欠片が足りてない。


 マジか……。


「くっそう……どっかに落ちてないか?」

「うぅーん……」


 シアと二人でもう一度その辺りを探してみるが見つからない。

 そういやコアって、ボス部屋から持ち出そうとするとどっか飛んで行ったよな。

 昨日、俺の手から飛んで行ったのはちゃんと拾ったし……。


「もしかして俺たち以外にも、知らずに持ち出そうとしてどっか飛んで行かせた奴がいるのかも?」


 それがどこに飛んで行ったのか。

 決まった所に飛んでいくのなら、昨日の俺が飛ばした欠片の近くにあったはずだし。

 そう考えるとランダム?


「となると、このボス部屋のどっかにあるってことか」

「うえぇ~」


 シアがぶーたれるのも仕方ない。

 ここは部屋の入口付近は石畳だけど、他は土がむき出しで草まで生えてる始末だ。

 その中から欠片探すの、大変だったんだからな。

 まぁ大部分は昨日の冒険者が拾い集めて台座の上に置かれていたんだけどさ。


「はぁ……仕方ない。もう一度探すか」

「うええぇ」


 行き当たりばったりで適当に探していたら、同じところを何度も探すことになるかもしれない。

 二度手間だ。

 ボス部屋を9分割して、一カ所ずつ潰して行こう。


「シア、計画立てるぞ」

「あいっ」






 それから数時間、昼食を摂ったあとも探して……


「あった、あったぉウーク!!」

「あったか!?」


 石畳と土床の隙間に紛れ込むようにして、小さな欠片をようやく見つけた。

 

 もしかして、他のダンジョンもこんな感じ?

 欠片探すのめっちゃ大変なんだけど。


 シアが持って来てくれた欠片と実完成のコアを箱に入れて錬成。

 

「はぁ、やっと真ん丸になったな」

「あうぅ、大変」

「大変だなぁ。でもこれがあと三回、四回か? 続けなきゃならないんだ」


 まぁ欠片探しに半日掛ったけど、この程度で済むならまぁいいか。

 問題はこの後だもんな。


「シア……箱から出すぞ。準備はいいか?」

「あいっ」

「箱から出したらすぐにお前の爪に氷を付与する」

「おーっ!」


 シアが武器の爪を用意している。俺もゴン蔵ブレス石を用意してっと──


「うし、じゃあ行くぞ」


 箱からコアを取り出した瞬間、ふわっと浮かんで台座に飛んでいく。

 そしてガコーンっと嵌ると、次にくるのは地震だ。


 すぐにシアの爪とゴン蔵ブレス石を箱に入れ、付与。


「さぁて、ボスのお出ましだ」


 揺れる足場を蹴って台座から距離を取った。

 いきなり背後に出てくるもんなぁ、ボスってばさ。


 待っているとコアから漏れ出た黒い霧が集まって、それが形を作り上げていった。

 もちろん、リザードマンの形だ。


 カオスリザードマンって、普通のリザードマンとどう違うのかなぁ。

 と思っていると形成が完成したようで色が付き始める。


 蜥蜴人間──まぁ二足歩行のオオトカゲなんだけど、頭はモヒカン……。


「モヒカントカゲか!」

『グルシャアアァァァーッ!』


 え……モヒカンが光った。

 いや、燃えた?


 そして口をぱっくり開くと、そこから炎を吐き出した!?


「なんかファイアモンキーみたいなやつだなっ」


 けど、火力が全然違う。

 ファイアモンキーは野球ボール並の火球を飛ばす程度だったけど、こっちは火炎放射だ。

 しかも扇状に広がって、まじ危な!


「があぁぁっ!」


 シアが爪を振り下ろす。

 カオスリザードマンの鱗がそれを弾き、同時に爪がパキーンっと折れた。


 え


 折れた?


「ウークゥー!」

「えぇぇーっ!?」


 なんかめちゃくちゃあっさり折れたんですけどなんで?

 え、まさか付与に耐えられなかった……とか?


 ゴン蔵ブレス、強力だもんな。

 いやってことは俺の魔法剣もやばい?


 右手に装備したバリバリメラメラパッキパキの剣を見つめる。


 ……これ折ったら、ヤバいよな。だって陛下から貰った剣だし。


「となるとだ。やっぱ石投げるっきゃないよな!」


 ポーチからじゃらりと石を取り出して、それをカオスリザードマンに投げつける。


 ボスって自信過剰だもんな。

 たかが石だと思って避けようともしない。

 避ければ助かったかもしれないのになぁ。


 こつんっと石が当たる。

 その瞬間、ドゴォンっと爆音が響いた。


 爆音のようだけど爆音ではない。

 小さな石から氷のブレスが解放された音だ。


 白い冷気が溢れ出し、何も見えなくなる。

 それが晴れると、カオスリザードンの氷の彫刻が出来上がっていた。


「んじゃあとはーっと」


 ボスのホーン・デストラクション石を投げる。


 スキルが解放され、ボスの頭突きの威力が炸裂した。


 氷の彫刻が粉々に砕け散る。もちろんカオスリザードマンごと。


「んー……ブバァァァのドゴォォォォンで終わったなぁ」

「シアの爪ぇぇ」

「あぁ、ちゃんと修復するから。ゴン蔵ブレスの付与は止めよう」

「あうぅぅ」


 俺の剣に付与してるゴン蔵ブレスも外しておかなきゃな。


「あ、ウーク魔法陣」

「お、じゃあ脱出するか。とりあえず一カ所目、任務完了っと」


 折れたシアの爪も回収して魔法陣に飛び乗る。

 そして一気にダンジョンの外へ。






 ダンジョンが本当に復活したのか確認するために、暫くしてまた潜ってみた。

 するとモンスターがリポップし始めているのを確認。


「よしよし。これで大丈夫だな」

「そだねぇー」

「はは。今ダンジョンに入っている冒険者は、ビックリするだろうなぁ」

「そだねぇー」


 ……あれ?

 これ、結構ヤバいんじゃね?


 モンスターがいないと思って油断しまくってるところに、突然モンスターが湧き始めたら……


 うえぇーい


 これ絶対ヤバいやつぅー

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