第168話:無限石(石は増殖しません)
馬車に揺られること半日で、最初の目的地ディサイドの迷宮近くの町へと到着した。
ダンジョンはここから徒歩で三十分ほどで着くという。
「今日は町で一泊して、まずはダンジョンに潜るために必要な物を買いそろえような」
「肉! ウーク、肉大事!!」
「肉だけじゃなくって野菜も食おうな。あとは……」
うぅん、どうするかなぁ。
パンを買って持って行くか、それとも小麦粉と酵母、塩を持って行って現地で錬成料理するか。
でも水も必要だし、飲料水と料理用とて準備するには、大量の水筒が必要になるもんなぁ。
「ということでパンを買います。まぁ水はどちらにしろ持って行かなきゃいけないが」
「すいとー買う?」
「んー……錬成しよう」
ガラス瓶でも作るかな。雑貨屋で仕入れていたんじゃ高くつく。
必要なのは素材──と言っても、街中じゃ手に入らないだろうなぁ。
そこで向かうのは工房だ!
ガラス職人が作業をする工房に行けば、失敗したガラスがいくらでもあるはず!
それなら安く譲って貰えるんじゃないかな。
「あぁ? 割れたガラスなんてどうするのさね」
「あー……継ぎ接ぎして、なんかこう……絵でも描ければなぁ──と」
工房で職人さんに「割れたガラスが欲しい」って頼むと、すっげー怪しまれた。
じぃーっと睨まれ、それから無言で指差される。
おっちゃんが指さした所には、失敗作だろうガラスが山積みになっていた。
「ありがとうございます」
「大量に持って行くなら金を貰うが、どのくらい欲しいんだ」
んー……二週間ぶんぐらいの水を持っていかなきゃならないしなぁ。
一日二人で最低でも三リットルはいるだろ?
四十二リットルか。多いな!
「えぇっと、バケツ一杯?」
「そんぐらいか。なら勝手に持って行きな」
「え、タダでいいんですか?」
おっちゃんは黙って頷いた。
お金、ちゃんと払うつもりだったんんだけどな。
うぅん、なんかお礼しないとなぁ。
あ、そうだ。
「シア、ガラスを集めるから手伝ってくれ」
「手ぇ怪我すんじゃねーぞ」
「はーい」
おっちゃんが背を向けたのを確認して、錬金BOXを取り出す。
野宿用に買っておいた薪をリュックから出し、それを錬成してバケツにする。
シアと二人でガラスを箱に詰めていき、これを分解錬成して……
「う? 砂に戻すお?」
「シーッ。お礼には、失敗したガラスを元の素材に戻してやろうと思って」
失敗作が山積みになった近くに、素材の砂置き場もあった。
分解錬成した砂をしずかーに出し、石灰のほうはバケツに入れてこっそり置く。
うっかり置いたままにしちまったぜい! とか思ってくれるとありがたい。
「なんでぃ、まだ見繕ってやがんのか」
「あっ、そ、そうですね。いろんな色のガラスが欲しいなぁと思って。でも、はい、もう集めたんで大丈夫です。ありがとうございましたーっ」
「ありがおうございあした」
シアと二人でペコりと頭を下げて、それから速足で工房を出て行く。
おっちゃん。これで失敗作がまた作れるぜ!!
「水よし」
「お肉よし」
「パンよし」
「お肉よし」
「シア、肉だけチェックするの止めろよな」
宿で荷物チェックをし、明日に備えて準備をする。
と言っても、死んだダンジョンだ。モンスターはほぼいない。
「死んでうのに、ほぼなの?」
「そう、ほぼだ。少し前まで普通に生きていたダンジョンだからな。まだ誰にも見つからず生きているモンスターだっているんだよ」
「なうほどぉ」
核を破壊しても、ダンジョン内にいたモンスターが死ぬわけじゃない。
復活しないから、倒してしまえばそれっきりだというだけの話。
「ダンジョンコアが破壊されてどのくらい経ってるか分からないけど、何カ月ってところだろうしな」
「まだ残ってうかもねぇ」
「あぁ。だいいち、コアを錬成すればボスが出てくるんだ。最低でも一回は戦闘になる」
「ボス……元気してうかなぁ」
シアの言うボスとは、角シープーのボスだろう。
進化してハイパーパワー羊になってるから、何をするにも力加減をしろよとは言って来たけど。
問題はボスよりボリスだろうなぁ。
ハイテンションで島を破壊してなきゃいいけど。
「ダンジョンのボス情報だと、ここのボスは植物系らしい。だから火属性に弱いそうだ」
「火? 火だとぉ……石なにあうの?」
「んー、火属性だと猿から貰ったプチ・ファイアと、前に島の冒険者から付与用に貰ったファイアだなぁ」
正直火力としては弱い。
「こんなことならロイスに全属性の最強魔法を貰っておくんだった」
「ファイア石いっぱいでいく?」
「そうだな。あと武器にもエンチャントしていこう」
「おぉー!」
エンチャント石も常に一個、予備として持っている。一個あれば無限増殖可能だからな!
「明日はダンジョンまで歩きつつ、石を大量に拾っていこう」
「たっくさん集めうおーっ!」
ポーチのポケット全部、火石になるぐらい集めなきゃな。
ぱんぱんになるぐらい!
──で。
ポーチのポケットがぱんぱんになるぐらい石を集めて入れてみたら、凄く重くて歩きにくいことが発覚した。
──で、考えた。
「ポーチにもディメンション・フォールを付与すればいいじゃん!」
これでポケットにも石が無限に入れられるな!
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今更ですが・・・作ってみた。
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