第167話
ホプスツェント国を抜けるのに七日掛かり、やや東寄りの山脈を通らないルートからディトランダ王国へと入った。
ディトランダに近づくほど土地は枯れ始め、国境近くは完全の荒野だ。
人が住むには快適とは言えない土地には、自然とモンスターが多く生息する。
そこを抜けようっていうんだから、結構な頻度で襲ってくるわけだけど──。
「うぅん、だいたいのモンスターはゴン蔵ブレスかロイスの雷魔法で片付くなぁ」
「ゴン蔵ブレスつおぃ! つお過ぎてシアなにも出来ないぉ……」
「いや悪かったって。でも他人の魔法付与石だから力加減も出来ないしなぁ」
中程度の威力の魔法も貰っておくんだったなぁ。
まぁボスのニードルクエイクあたりはそんな感じなんだけど、なんだかんだ一発で終わるゴン蔵ブレスと雷は楽でいい。
この頃になると俺の石使いっぷりも冒険者に認知されて、今では石使いのルークと呼ばれるようになった。
二つ名って厨二心をくすぐるよな。
「しかしルークよぉ。お前、そんな力があるのになんでディトランダなんかに?」
「ダンジョン攻略じゃないよなぁ? あの国が管理してるダンジョンは、半分近くがコア無しの死んだダンジョンだぜ?」
「あー……」
そのダンジョンを復活させるために、とは言えない。
俺の錬金BOXのことは、あまり公にしない方がいいと陛下にも言われたし。
コアの修復が可能だってことを知られると、ボスを倒してコア破壊からの、直ぐに修復してボス再戦。
これを繰り返してボスドロップ狙いをしようとする連中に、俺が連れ去られて悪用されかねないからだ。
それを聞いた時、ちょっと俺もそれやりたい!
とか思ったのは秘密にしておこう。
しかし現実として、それは難しいんじゃないかなぁって思うんだ。
島のダンジョンにしろ、エリクサーの素材が出るダンジョンにしろ、復活後にボスが現れて、そいつを倒すとダンジョンが拡張している。
うちの島のほうだと遂に最下層が発見されたが、そこがなんと地下十五階。
元々七階までしかなかったのに、ほぼ倍の深さになっているんだよなぁ。
生命の花が咲くほうのダンジョンは、あれから丸一年経ってもまだ最下層が見えてこないらしい。
まぁ一階一階が広いし、転送用の魔法陣もないから攻略には時間が掛かるんだよな。
下層ほどモンスターも強くなっていくし。
そんなんで、コア復活からボス討伐後はダンジョン拡張がデフォだとすると……連続でボス戦ドロップうまうまも出来ない訳だ。
ただただ面倒くさいだけ。
ディトランダ王国に入って五日目、王都トランダへと到着した。
「いやぁ、ありがとうございますルークさん」
「いえいえ、こちらこそ早くに到着できたんで助かりました」
乗合馬車を使っていたら、乗り換えなんかでもう半月近く到着が遅れただろう。もしかするとそれ以上になっていたかもしれない。
タダ働きの護衛とはいえ、道中倒したモンスターから剥ぎ取った素材はネドリアさんが冒険者ギルド並の価格で買い取ってくれた。
手数料を支払わなくていい分、少し得もしている。うぃんうぃんだ。
キャラバンと別れた俺たちは、いったん宿を取って冒険者ギルドへと向かう。
ギルドの登録は島の支部で済ませてある。
今回はコアを破壊されたダンジョンの調査隊に参加する、という名目で登録をするためだ。
「うわぁ……さすがに王都のギルドだけあって、でっかいなぁ」
「島のギウド、ちっさいねぇ」
島で一番デカい建物は領主の館だ。
ここの冒険者ギルドはその三倍はあるんだろうな。
が、中に入ってみると建物の大きさに対して人の姿は少なく、いや少なすぎる。
やっぱりダンジョンが死んでると、冒険者は一気に減るんだろうなぁ。
この国には他にもいくつかダンジョンがあるけど、それでもこれだ。死亡ダンジョンがこれ以上増えると、それこそ人がいなくなってしまうかもしれない。
早いとこ復活させないとな。
「はい、登録完了いたしました。ここから一番近いディサイドの迷宮は、明日になればギルド専用の馬車が出ますので、そちらをご利用ください」
「え? 馬車があるんですか?」
「王都の南門前から出発します。馬車にはギルドのマークがついていますので、御者にこの札をお見せください。そうすればタダ乗りできますので」
と、ギルドのお姉さんが話す。
タダ乗りひゃっほー。
宿の食堂で晩御飯を食べている時だった。
「ついに四つ目だぜ」
「ったく、誰なんだよ。ここまで続くとうっかりじゃなく、計画的にコアの破壊をしているよな」
そんな会話が近くのテーブルから聞こえて来た。
おいおい、コアを破壊されたダンジョンが、これで四カ所目だっていうのかよ。
さすがにこう連続すると、意図的に破壊しまくってる奴がいるって誰だって思うだろ。
それが個人なのか組織なのか、はたまたどこかの国なのか……。
個人ならそいつら見つけて捕まえて終わりだけど、組織にしろ国にしろ、そっちだった場合は厄介なことになるだろうなぁ。
「シア、飯食ったらすぐに寝るぞ。明日は朝が早いからな」
「むぐむぐ。おぉーっ」
馬車はダンジョン近くの町まで向かうという。食糧の買い出しはそこでいいだろう。
確か地下十二階あるって言ってたっけか。結構深いよな。
まぁ何度も攻略されたダンジョンだし、最下層までの地図もあるだろうから迷わず行けるだろ。
問題は他の調査隊メンバーに見つからず、こっそりダンジョンを復活させなきゃならないんだけど。
あとボスの攻撃パターンとか、そういうのも知っておきたい。
向こうの町で情報が手に入るといいなぁ。
***************************
カクコン用に新作を投下いたしました。
こちらは異世界転移ものとなっております。いつものようにコメディ寄り・・・。
お時間があればちょろっと読んでみて頂けるとありがたいです。
https://kakuyomu.jp/works/1177354055235116548
異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~
相変わらずタイトルなげーなぁ・・・短くスッキリさせるセンスをくださいorz
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます