第166話:石最強伝説

「その腰の剣は飾り物なのかよ! なんでそんな立派な剣ぶら下げてんのに、得意武器石ってなんだ石って!!」


 キャラバンに雇われた冒険者の中で、一番年長の男が頭を掻きむしりながらそう突っ込む。

 まぁこの剣はトロンスタ陛下から貰ったものだし、魔法付与もしているし、なんだったら雷の上級魔法だったりする。

 もちろん剣だって使えるさ。

 一応シャテルドンとかに稽古をつけて貰っていたからな。基礎はしっかり出来てるぜ。太鼓判も貰ってる。


 でも──


「いやぁ石ってほら。投げるだけでいいし。楽でしょ?」

「楽でしょって、そりゃあ石だからな! 投擲として投げて使うこともできるよな! いやでもそうじゃないだろ、え?」


 え? って言われてもなぁ。

 石のどこがダメなのか、俺にはそっちの方が聞きたい。


 そして見張りの順番は、俺とシアは一番最後の明るくなり始めてからの時間帯になった。


「この時間が一番襲われにくい時間帯だからな」

「こんな連中が夜中起きて見張ってるとか、恐ろしくて寝られねーよ」

「はぁ……」


 冒険者って神経質だなぁ。

 それとも冒険者って、本当は過酷な職業なのだろうか?

 島にいる連中を見てると、とてもそうは思えないけれど。


 お言葉に甘えて先に寝台へ。

 荷馬車は二階建てになっていて、下の段には荷物を。上の段は寝れるようにマットが敷かれていた。

 ちょっとキャンピングカーみたいだ。もちろん前世でキャンピングカーなんて試乗すらしたことないけどさ。


「天井が低いから、気を付けろよシア」

「うおぉぉぉぉっ」

「あと暴れるな。床が抜けるかもしれないからな」

「……あぃ」


 ほとんど雑魚寝状態だが、キャラバン隊の女性らにシアを預けて別々の荷馬車で眠る。

 男用寝台は……むさくるしそうだ。


 それでもちゃんと横になれるだけマシだ。マットがある分、床が硬いということもないし。


 寝て、次に起こされた時には交代時刻になり、東の空がうっすらと白み始めた中で見張りに立つ。


「うにゅうぅ」

「シア、しっかり起きろ。お前は目が良いから、あの岩に上って高い所から見張ってくれ」

「あいっ」


 リュックからシアの武器──クロウを取り出して渡すと、彼女はそれに手を通してグーパーと感触を確かめる。

 グレッドがシアのために作ってくれた武器で、手の甲に装備する武器だ。

 鉤爪状の武器だけど、普段は爪になる刃は収納されていて、グリッドを強く握るとシュっとでてくるようになっていた。


 ま、太陽が昇ると、大半のモンスターは暗い場所に隠れてしまうし、盗賊の類もこの人数を襲うことはまずないだろう。

 たぶん。


 暫くするとキャラバンの人たちが起き出して、朝食の支度に取り掛かる。

 いい匂いがし始め、シアが鼻をひくひくさせているのが見えた。


 あいつ、ちゃんと見張ってるのかよ。


 と思ったら、突然シアが身構える。


「ウーク! ゴブイン来うよっ」

「はぁ? ゴブリンだって」


 慌ててシアが睨む方角を見ると、森の中から緑色の小鬼がわらわら出て来ていた。


「え? 群れじゃん」

「おぉぉーんっ」

「ゴ、ゴブリンの大群だと!? いくら雑魚でもあの数は──」


 と、他の見張りに立っていた冒険者が騒ぐ。

 そんで慌てて他の冒険者を起こしに駆け出した。


「……ランダムストーン!」

「あぁぁ、ウーク!」


 取り出した石は真っ白で、シアのアイス・ボルトが付与された石だった。

 これ、単体魔法だよなぁ。


「よし! ランダム終了!! 真面目に投げるぞ」


 で、投げたのはロイス産の究極雷魔法ライトニングトールの付与石──5個。

 

 ズガガーンッ、バリバリバリィーっと物凄い音がして、ゴブリンたちがその場に倒れた。

 直撃した奴らは丸焦げになったが、そうじゃない連中も感電して動かない。

 あと地味に凍り付いてるのがいるのは、ついでに投げたアイス・ボルト石の直撃を喰らった奴だろう。


「シア、あと何匹ぐらい残ってるか?」

「んー、あと十匹ぐらいいぅお」

「十匹ぐらいならまぁ、直接ぶった斬ってもいいか」

「おぉ!」


 たまには剣も使ってやらなきゃな。

 シアが岩から飛び降り、意気揚々とゴブリンに向かって駆け出す。

 俺も腰から剣を引き抜き、雷を纏う刃を振りかざした。


『ゴ、ゴブギャアァァァァッ』

『ゴブギャアァァァッ』

「あ、れ? おいおい、なんで逃げるんだよっ。待てよ!」


 せっかくカッコよく剣を構えたってのに、お前らなんで逃げる!?

 一目散に森へと走って行ったゴブリンたちは、あっという間に見えなくなってしまった。


「ゴブリンの群れはどこだ!?」

「げっ。なんだあの丸焦げになった死体の山は……」

「お、お前……その剣で奴らをやっつけたのか!?」

「こんな短時間にあの数を薙ぎ払ったっていうのか……なんて奴だ」

「い、いや、これは剣じゃなくって」


 石で倒したんですと言おうとしたが、すげーすげー連呼されてどうでもよくなった。

 まぁ勘違いされても仕方ないか。

 この剣にも同じ雷魔法が付与してあるし。


 ただいまいちなんだよなぁ。

 石投げた方が広範囲で魔法が発動するから、やっぱ使い勝手で言えば石一択なんだよ。


 やっぱり俺は石使いだな。うん。


 

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カクコン用に新作を投下いたしました。

こちらは異世界転移ものとなっております。いつものようにコメディ寄り・・・。

お時間があればちょろっと読んでみて頂けるとありがたいです。

https://kakuyomu.jp/works/1177354055235116548

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~


相変わらずタイトルなげーなぁ・・・短くスッキリさせるセンスをくださいorz

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