第47話

「ダンジョンモンスターが外に出ないのって、何故なんでしょうね」


 ダンジョンモンスターは決して外には出てこない。

 ただ極稀に、スタンピードが発生することがある。特定の条件が揃った時だが、揃っても滅多に発生することはない。

 大陸中合わせても、年に一回起こるかどうかだ。


「それはだなルーク様。ダンジョンモンスターは月と太陽の光を恐れます。だからその二つが雲に覆われた条件でしか、スタンピードは発生しないでしょ?」

「それは本で読んだ。怖いだけで出てこないものなのか?」

「実際やつらを無理やり外に連れ出した冒険者がいます」


 へぇ、どうなったんだろう?


「溶けました」

「こわっ!」

「こあっ!」


 え、じゃあ地上のモンスターがダンジョンに入ると……溶ける?


「しかし地上のモンスターはダンジョン内の匂いが嫌いだって程度で、死にはしないのですよ」


 アベンジャスが穏やかな口調でそう話す。

 あ、そうだよな。

 ハンナはダンジョンの中に落ちて平気だったんだし、あたりまえか。


 薄暗いダンジョンの中、わりと和気あいあいとした雰囲気で進むこと一週間。

 ようやく最下層の15階へと到着した。

 

「ここには玉座がないんですね」

「島のダンジョンにはあったのかい?」

「はい。出てきたボスはデーモンでした」

「なるほど。ここに出現するのはフレイムワームだ」


 ワーム……ミミズかぁ。しかもフレイムがつくってことは、火属性……。

 火属性の弱点は水だけど、ミミズが水に弱い?

 うぅーん。


 最下層の奥へと進んで、最深部へと到着。

 ひとまず休憩をし、決戦の舞台となるここの構造をしっかり頭にたたき入れる。騎士たちが。


 これだけのメンバーがいるんだ。核を修復したら俺の出番はないんだろうなぁ。


 休憩も終わり、体力もしっかり回復させてから全員が配置につく。


「ルークエイン。やってくれっ」


 エリオル王子の声が聞こえ、シアが抱えた核を箱に入れた。

 蓋をして、元の形に戻れ──そう念じれば箱が光る。

 

「じゃあ、取り出しますよっ」

「「了解」」


 一通り視線を向ければ、全員が緊張した面持ちで頷いた。


「シア。今回俺たちの出番はなさそうだ。ここで大人しく見ていような」

「おぉー」


 箱から核を取り出す。すると前回同様に地面が揺れ──揺れ大きくないか!?


「お、おおぉっ」

「ウ、ウーク、あえっ!」


 シアが天井を見上げ、俺も釣られて上を見た。

 く、崩れる!?


「ルークエイン、シア! そこは危険だ、こっちに──」


 エリオル王子の言葉が最後まで終わる前に、天井じゃなく、地面が崩れたぁーっ!?

 しかも落ちてるの、俺とシアだけじゃないかぁー……あぁー……ぁー……。






『ぎゅるうぉおぉぉぉぉっ』

「なんで落ちた先にミミズがいんだよっ!」

「がううぅぅっ」


 巨体を鎌のように持ち上げ、俺たちを見下ろすミミズ。

 10メートル級のミミズとか、気持ち悪いんですけどおぉ!


「くそっ。こうなったらやるぞ、シア!」

「おーっ!」


 ふっふっふ。

 俺にはロイス先生直伝、雷最大魔法がある!


「シア。ストーンポーチをくれっ」

「ん」


 シアから受け取ったポーチの中から、蛍光ブルーとイエローカラーの石を取り出して──投げる!

 巨体で、尚且つミミズだ。

 回避することも出来ず、まともに食らった。


「いよっしゃ────あ、あれ?」

「あえ? かいなりは?」


 雷が……来ません。


 え、まさか……地下では発動しない魔法なのかあぁぁぁ!?

 じゃあ他の石ならどうだ!

『サンダーボルトストーン』は発動した。奴も少し痛がっているようだった。

 だけど二投目はモーション段階で土に潜られてしまった。

 構わず投げたが、土の表面を焦がしただけ。


「あぁ、そうだよ。雷属性は土と相性悪いよそうだよチクショー」

「がうっ」

「うわっ」


 シアが急にタックルしてきて、2人で吹っ飛んだ。

 その瞬間、地面が盛り上がってミミズが飛び出してくる。

 

 土の中にいるミミズと違って、とげとげした皮膚には噴射口があって──そこから火を噴いた!


「シアっ」

「うにゅうっ」


 抱え込んで倒れ込むと、すぐ上を炎が通過!

 くっ。背中を少し火傷したか?


 くそっ。魔導師の魔法が一番破壊力があると思ったのにな。

 あとは属性としての相性は悪くない、シアの氷の結晶頼みだが……。


 白く染まった石を掴んで奴に投げつける。

 が、さっきのでもう回避方法を学ばれてしまっていた。

 辛うじて尻尾(?)の先を凍らせられただけで、地面に逃げられてしまう。


「くっそっ。どこいった?」

「しっ」


 シアの耳がピクピクと、音を拾おうとせわしなく動く。


「うーっ!」

「おわっ」


 さっきと同じく突き飛ばされる俺。

 立っていた場所がぼこっと盛り上がり──


「そこかーっ!」


 投げた石は地面から飛び出してきたミミズの頭にぶち当たった。


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