エピローグ


住宅街から少し離れた所に家がポツリと存在していた。雑草が生い茂り、敷地の中にある木は家と同等の大きさで外壁をからはみ出している。昼間でも暗く、淀んだ雰囲気を纏った家は夜になるとよりいっそう暗く、深く、淀んでいた。


周りのご近所さんは興味が無いのか関わろうとしない。

誰が住んでいたのか、誰が建てたのか、いつから在るのか、それすら誰も知らない。


「ママー。おっきな金魚さん」

まだ幼稚園に通っていそうな見た目の女の子が母親と手を繋ぎながらもう片方の手で指を指す。

女の子目の前には、人間、いや家よりも大きな体をした金魚が空中を泳いでいた。


パクパク....と口を動かしながら女の子を金魚は見つめている。


「バカなこと行ってないで早く買えるよ」

母親は女の子の手を強く握り引っ張る。

「嘘じゃない....」


よ....と言う言葉はかき消された。

女の子のことをジー..と見つめていた金魚の口が大きく開く。


女のコの「よ」と言う言葉を塞いだ。


「全く、明日も早いんだから早く帰らなくちゃ」

母親は女のコの言葉を聞かず、手を繋いで道を歩いていく。


【ヨ…ヨ…ヨ…】

金魚から口をパクパクさせながら女のコの声を復唱する。

空調を泳ぎながら家の方に向かい泳いでいく。


月明かりに照らされた家は妖妖と煌めいていた。


月は、屋根を照らし、木を照らし、壁を照らし、地を照らした。



その夜─家から遠い処で女声の悲鳴が甲高く響きわたった。


次の日

行方不明者四人。そのうち一人は片手だけ見つかっている。

このニュースが新聞の記事とこの街を駆け巡った。



未だ、見つけられず。

この家は変わることなく存在し続けている。

新築のまま。生きているかのように存在している。

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やおき @Nao2

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